2020年の年間販売台数では、ホンダの軽自動車「N-BOX」が軽自動車で6年連続、普通車を含めて4年連続で首位に輝く快挙となりました。とくに、2020年はコロナ禍により販売面では苦戦する時期が続いたなかで、売れ筋軽ワゴンとなるN-BOX、スペーシア、タントの販売戦略にはどのような違いがあったのでしょうか。

なぜN-BOXに勝てないのでしょうか。

 日本の新車市場において、4割弱のシェアを占めるほどに成長している軽自動車。
 
 そのなかでも、高い人気を誇っているのが「軽スーパーハイトワゴン」で、販売台数トップ3を占めるのがホンダ「N-BOX」、スズキ「スペーシア」、ダイハツ「タント」です。

 2020年はコロナ禍により販売面では苦戦する時期が続いたなかで、競合3社の販売戦略にはどのような違いがあったのでしょうか。

 軽スーパーハイトワゴンとは、主に全高1700mm以上かつ後席スライドドアという特徴を持つ軽自動車を指しています。

 全国軽自動車協会連合会の軽四輪車販売台数によると、2020年の上半期(1月から6月)では、1位のホンダ「N-BOX」が10万1454台(前年比77.3%、以下同)、2位のスズキ「スペーシア」が6万5323台(72.8%)、3位のダイハツ「タント」が6万2253台(76.1%)となっており、上半期の時点で2位と4万台ほどの差が開いていました。

 その後、2020年の暦年(1月から12月)では、1位のN-BOXが19万5984台(77.3%)、2位のスペーシアが13万9851台(84.1%)、3位のタント」が12万9680台(74.0%)と、スペーシアが下半期で伸びてきたものの、その差を埋めることは出来ていないようです。

 では、こうしたコロナ禍の2020年においてそれぞれの販売動向にはどのような変化があったのでしょうか。

 2020年の年間王者に輝いたN-BOXは、軽自動車で6年連続、普通車を含めると4年連続で日本一売れたクルマです。

 現行モデルが発売されたのは2017年9月1日で、直近の動きとしては2020年12月25日に内外装の変更と「パーキングセンサーシステム」の追加などのマイナーチェンジがおこなわれました。

 このマイナーチェンジでは、N-BOXと「N-BOX Custom」との違いがより明確化されています。

 N-BOXは、よりシンプルで機能性を強調したデザインに、N-BOX Customは、高級感・存在感を高めることを目指したとされ、それぞれの個性がさらにはっきりと打ち出されています。

 また、安全装備では「ソナーセンサー」をこれまでの2個から4個へと増やし、後方の障害物への接近を検知し注意を促すパーキングセンサーシステムが追加されました。

 N-BOXについて、ホンダ販売店のスタッフは次のように話します。

「ホンダのクルマに採用されていることの多いセンタータンクレイアウトなどの技術を駆使して、車内の寸法は普通車のコンパクトカーと同じくらいのサイズに広げています。

 ほかのスーパーハイトワゴンと比べて、N-BOXは室内が広いのが強みです。

 また、モータースポーツに力を入れているホンダだからこそできる、走りへのこだわりも実感していただければ分かるかと思います。

『走る、曲がる、止まる』のバランスについてもスーパーハイトワゴンのなかではもっとも良いと自負しています」

 一方のスペーシアは、2017年12月14日に現行モデルが発売されました。直近の動向では、安全装備の充実を含む仕様変更が2020年8月20日におこなわれています。

 この仕様変更では、夜間の歩行者も検知する「デュアルカメラブレーキサポート」と「SRSカーテンエアバッグ」が標準装備。

 さらに、全車速追従機能付きの「アダプティブクルーズコントロール」が新たに採用されたほか、標識認識機能の向上などによって、「スズキ セーフティサポート」がより充実したものとなりました。

 スペーシアについて、スズキ販売店のスタッフは次のように話します。

「ほかのスーパーハイトワゴンは通常グレードとプレミアム感を打ち出したカスタムグレードがあり、スペーシアについても同様です。

 しかし2018年12月に発売したスペーシアギアは、ほかにはないスーパーハイトワゴンにSUVテイストを加えたということもあって、アウトドア好きの人、ファミリー層から支持されています。

 名前の通りアウトドアギアのひとつとして愛用頂いている人が多いようです。

 また、燃費装備が充実しており、スーパーハイトワゴンのなかではもっとも燃費が良いのも特徴です」

 そしてタントは、2019年7月9日に現行モデルが発売され、この3車種なかではもっとも新しいモデルです。

 2020年12月1日には新グレードの追加と安全装備の充実を図った一部改良が発表されました。

 新たに追加されたグレードは「タントカスタム」の「スタイルセレクション」で、メッキ加飾による迫力のあるフロントフェイスが特徴です。

 また、安全面ではダイハツの予防安全機能「スマートアシスト」に夜間歩行者検知機能や路側逸脱警報機能などが追加されています。

 タントについて、ダイハツ販売店のスタッフは次のように話します。

「子育てママに向けたふたつの機能でほかのスーパーハイトワゴンと差別化をしています。

 ひとつ目はミラクルオープンドアで、助手席側のピラーをドアに内蔵したので広い開口部から子どもの乗り降りを補助することが出来ます。

 ふたつ目は運転席のロングスライドシートで、運転席に座りながらも助手席後部のお子様の世話をすることができるよう、大幅に後ろへスライドさせることができます」

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 各車ともマイナーチェンジによってそれぞれ安全装備をより高性能なものにアップデートしています。

 また、ボディカラーの追加も含めてカスタムモデルがよりアグレッシブなデザインへと進化しているのもトレンドです。

 それぞれがそれぞれ独自の特徴を追求していますが、全体で見れば非常に近いスペック、似たデザインというのは否めません。

 では、ユーザーはどのような部分を見て比較しているのでしょうか。

実際に「どこを見て比較?」 ユーザーがライバルと比べるポイントは?

 軽スーパーハイトワゴンは人気ジャンルということもあり、各メーカーとも装備の充実にしのぎを削っています。それぞれにどのような違いがあるのでしょうか。

 N-BOXは、安全運転支援システムの「Honda SENSING」が搭載されており、障害物の検知方法に特徴があります。

 タントとスペーシアはソナーセンサーのほかに、ステレオカメラを使用していますが、N-BOXはミリ波レーダーと単眼カメラを併用しています。

 この機能が搭載されたことにより、先行者や歩行者を検知し、衝突の恐れがある場合に警告してくれる「衝突軽減ブレーキ」や、標識への注意を促し安全運転をサポートする「標識認識機能」など、11の機能で安全運転がより一層強化されました。

 また、ミラーを組み合わせて幅寄せや駐車の際の視界を補助する「サイドビューサポートミラー(ピタ駐ミラー)」というホンダ独自の人気装備が採用されていることから、N-BOXを指名買いするユーザーもいるようです。

 N-BOXは、低速の力強さと高速の伸びやかさ、燃費をバランスよくまとめたi-VTECエンジンが採用され、WTLCモード燃費は20.2km/Lから21.2km/Lとなっています。

 スーパーハイトワゴンの弱点である、コーナリングの安定性についてN-BOXは、ステアリングの操作に対して、必要に応じたブレーキ制御でスムーズに曲がりきることを支援する機能「アジャイルハンドリングアシスト」を搭載しているため、車高の高さを感じさせない走りを実現しました。

 次にスペーシアは、SUV風デザインのスペーシア ギアをラインナップにそろえているのが特徴です。

 スズキの人気車種である「ジムニー」が備えるタフさを連想させ、アウトドア派のファミリーから人気を集めています。

 装備面では、フロントガラスに各種情報が投影される「ヘッドアップディスプレイ」、車内の快適にする「サーキュレーター」などが特徴です。

 スペーシアは、全グレードにマイルドハイブリッドを搭載しており、加速時のモーターアシストでパワフルに発進することができ、さらに燃費への貢献していることをアピールしています。

 エンジンは、N-BOX同様可変バルブタイミング機構を備え、低中速の動力性能に優れたエンジンです。WLTCモード燃費で20.2km/Lから22.2km/Lです。

 そしてタントは、助手席側ドア間のピラーをドアに内蔵する「ミラクルオープンドア」に利便性を感じて購入するユーザーが多いようです。

 軽スーパーハイトワゴンというと子育て中のファミリーがターゲットという印象もありますが、タント特有の開口部が広いドアと、乗り降りをサポートする手すり「ラクスマグリップ」は、高齢者のいる家族にも好評だといいます。

 さらに、半ドアを自動で全閉する「助手席イージークローザー」や、ハイビームで走行中に対向車を検知すると対向車の部分のみ自動で遮光する「ADB(アダプティブドライビングビーム)」など、最新の技術を装備するのは、モデルの新しさがもたらすメリットです。

 走行性能でタントが強く押し出しているのは、ダイハツが独自で構築した新しいプラットフォームである「DNGA」に基づいたクルマづくりです。

 具体的にはアンダーボディやサスペンションの高剛性化により、車両の安定感をアップし、スプリングを柔らかくすることで、乗り心地も向上させています。

 アッパーボディでは、衝突構造の合理化・超ハイテン材の採用を拡大し、強度を上げながら大幅な軽量化を実現しました。

 WLTCモード燃費については、自然吸気エンジンが20.2km/Lから21.2km/L、ターボエンジンでは18.8km/Lから20km/Lとなっています。

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 走行性能と燃費性能について、走行性能についてはN-BOX、燃費性能についてはスペーシア、タントはダイハツによると「スーパーハイトワゴンのなかでもっとも静粛性が高い」といい、同じような軽スーパーハイトワゴンにおいても、異なる方向性を示しているようです。

 また、室内や快適機能でも、N-BOXは独自のセンタータンクレイアウト、タントはミラクルオープンドアといった工夫によって室内空間の広さや使い勝手を差別化。スペーシアにおいては、SUV風モデルを設定することで、新たなニーズを獲得するなどまさに三者三様だといえます。

 軽スーパーハイトワゴンは、どの車種も商品としての完成度は高く、どれを選んでも間違いはないといえます。

 さまざまな要素が高い水準で拮抗しているなかで、それぞれが狙っているターゲット、差別化ポイントがあります。

 そういった点と自分のライフスタイル、今後のライフステージの変化をよく考えたうえで、検討するのがいいのかもしれません。