古くはエンツォ・フェラーリ、フェルッチオ・ランボルギーニ、最近ではオラチオ・パガーニと、スーパーカーメーカーはひとりの男の情熱からスタートすることが多い。スウェーデンのケーニグセグもまた、幼い頃からスーパーカーに憧れていた男が立ちあげたメーカーだ。その男が作った最新モデル「レゲーラ」とは、どんなクルマなのだろうか。

スーパーカーは、ひとりの男の情熱から生まれる

 フェラーリ、ランボルギーニ、マクラーレン、あるいはポルシェ。これらのブランドと競合するために独自のスーパーカーを作り出すという計画は、現在ではあまりにも壮大すぎて、荒唐無稽にも思えてしまう。

 わずかひとりの人間のビジョンが、すでに確立されたスポーツカーやモータースポーツの歴史を持ち、それらに裏付けされた最新技術とマン・パワーを持つメーカーと、はたして競合することができるのか。常識的に考えれば、その答えはノーということになるだろう。

●2019 ケーニグセグ「レゲーラ」

 だが時に、かつてのランボルギーニがそうであったように、誰かがそのような偉業に挑み、成功させてみせるのもスーパーカーの世界だ。大量生産しなければコストが見合わない大衆車と違い、少量生産で高額なスーパーカーやハイパーカーだからこそ、ひとりの人間の情熱で現実のものになるともいえるだろう。

 今回VAGUEで紹介するスウェーデンのケーニグセグ社を設立した、クリスチャン・フォン・ケーニグセグ氏も、まさにそのひとりだ。

 彼は幼い頃からスーパーカーに興味を抱き、その情熱を保ったまま1994年にスーパーカーメーカーであるケーニグセグ社を設立するに至ったのだ。

 設立から3年間で、ケーニグセグはカーボンファイバータブをベースとするプロトタイプを完成させる。そしてフォード製のV型8気筒エンジンをベースに、ツインターボを組み合わせるなどしたパワーユニットを搭載したプロトタイプの「CC(コンペティション・クーペ)」を完成させる。

 このプロトタイプは、1997年のカンヌ映画祭に展示され、ゲストやメディアから圧倒的に高い支持を得るに至った。その反響を見て成功を確信したケーニグセグは、スウェーデンの本社に戻ると、CCのプロダクションモデルたる「CC8S」の開発と生産にとりかかるのである。

桁違いの性能は、桁違いの落札価格となるか?

 2006年にCC8Sを発売して以降も、ケーニグセグは積極的にニューモデルの開発を続けていく。そのなかでもとくに大きな話題を呼んだのが、今回RMサザビーズのアリゾナ・オークションに姿を現した「レゲーラ」だ。

●2019 ケーニグセグ「レゲーラ」

「アゲーラ」シリーズに前後して2015年に誕生したレゲーラのエクステリア・デザインは、ケーニグセグが創業時から受け継いでいる、水中生物のシルエットをコンセプトとした個性的なものとなる。

 左右のドアは「ディヘドラル・シンクロ・へリックス・アクチュエーション・ドア」と呼ばれ、実際にはドアが前方に回転すると同時に、外側へと移動して開く仕組みになっている。

 リアミッドに搭載されるパワーユニットは、1100psの最高出力を発揮する5リッターV型8気筒ツインターボである。さらに3基のエレクトリック・モーターが搭載され、そのうちひとつはクランクシャフトと同軸に、残りのふたつは左右各々の後輪を駆動するために使用される。

 このエンジンとエレクトリック・モーターを、KDD(ケーニグセグ・ダイレクト・ドライブ・トランスミッション)と呼ばれるシステムで制御し、システム全体では1500psものパワーを発揮させると同時に、スムーズで強力な加速を実現するというのだ。エネルギーの伝達ロスを大幅に低減できるのも、このシステムの利点だ。

 KDDは、多段式もしくは可変式トランスミッションを必要とせず、エンジンのパワーを後輪へとダイレクトに伝えるシステムで、変速の必要がない実質的な1速のみとなる点が特徴だ。

 バッテリーセルの重量は約90kg。これもプロトタイプからさらに軽量化され、回生能力においても当時の世界最高水準であった。1420kgという車重を実現できたのも驚くところだが、0−100km/h加速2.8秒、計算上402km/hの最高速を実現するというパフォーマンス・データにも、世界は驚かされた。

 2019年9月には、0−400−0km/h加速・停止の世界記録31.49秒を打ち立てている。このとき、22.87秒で400km/hに到達し、その後わずか8.62秒で停止している。

 アリゾナ・オークションに出品されたレゲーラは、2016年から2020年までの間に80台が生産されたモデルの内の1台となり、2019年式の個体だ。

 アリゾナ・オークションでの予想落札価格は260万−290万ドル(邦貨換算約2億7000万円−3億円)。走行距離が200マイル(約320km)未満という新車同然の個体であることを考えれば、もっともな予想落札価格といえるだろう。