小回りが利き積載性にも優れた「軽トラック」ですが、クルマ好きからは「走りが楽しい」と評判です。パワフルなエンジンを搭載しているわけではないのに、なぜなのでしょうか。

日本独自の「軽トラ」が海外ユーザーからも人気!?

 引っ越しでレンタカーを借りたり、ホームセンターで大きなものを買ったときに運搬用の車両として「軽トラック(軽トラ)」に乗ったとき、多くの人が「軽トラは楽しい!」と思うのではないでしょうか。

 軽トラといえば働く軽自動車の代表格であり、日本国内はもちろん、現在では海外のユーザーからも熱視線を集める車種です。

 しかしながら、お世辞にも動力性能に優れているわけではない軽トラが、なぜ運転して楽しいと感じるのでしょうか。

 そもそも軽トラは、現在新車で購入できるモデルのなかでも、もっとも安価な部類に入る車種であり、未だにエアコンやパワステが装備されないグレードが用意されています。

 ちなみに同じく働く軽自動車である軽ワンボックスバンは、もっともベーシックなグレードでもエアコン、パワステは標準装備。

 この理由ですが、軽トラは農家のユーザーにも選ばれることが多く、自宅の車庫から目の前の畑までの移動や収穫した農作物を運ぶという限定的な使い方がされることもあり、なるべく車両本体価格を抑えたいと考える人に配慮した設定となっているのです。

 最上級グレードなどには安全装備などが備わっていますが、低価格を追求したグレードでは当然ながらそれ以外の装備も必要最低限のものとなっており、圧倒的に軽量なボディに仕上がっています。

 どのくらい軽量なのかというと、ダイハツ「ハイゼット」の軽ワンボックスバンである「ハイゼットカーゴ」のもっとも軽量なグレードが910kgなのに対し、軽トラである「ハイゼットトラック」の最軽量グレードは740kgと、170kgも軽い計算となります。

 同じエンジンを搭載していながら170kgもの軽量化を果たしているのであれば、軽トラはよりダイレクトに運転を楽しむことができるというわけです。

使いきれるパワーとFRレイアウトが楽しさの秘訣?

 軽トラに搭載される660ccの自然吸気エンジンは、最高出力50馬力程度とお世辞にもパワフルとはいえません。

 さらに、最大350kgという積載量を持つため、ギア比もローギヤ―ドとなっており、ハイゼットトラックの5速MT車では、5速100km/hでおよそ5000回転となっています。

 それだけに、周囲の交通の流れに乗るためにはエンジンを高回転まで回してシフトアップを繰り返す必要があり、法定速度内で走っているにもかかわらず、全開走行をしているかのような感覚が味わえるというワケなのです。

 当然ながら最近の普通車であれば、こんな回転数までエンジンを引っ張って走行すればあっという間にスピード超過になるだけでなく、命の危険が伴う速度になってしまいます。

 しかし軽トラでは、これでなんとか周囲の流れをややリードできるレベルなので、非常に安全に“走らせている感”が楽しめるのです。

 さらに、現在新車で販売されている軽トラはすべて後輪駆動、もしくは後輪駆動をベースとした4WDとなっており、フロントタイヤが舵を担当し、リアタイヤが路面を蹴り出すというクルマの基本レイアウトを踏襲しています。

 パワーも速度も限界域も高くはありませんが、この古典的かつ基本的な後輪駆動レイアウトを採用していることでクルマとの一体感が生まれ、なんともいえない楽しさに繋がっているといえるでしょう。

 また、電子制御の塊となってしまった最近のクルマのなかでは珍しく、トラクションコントロールや横滑り防止機能がオプションとなっているものも存在しており、まるで旧車のようなアナログ感も楽しめます。

 つまり、軽トラとは現行車でありながら古き良き旧車の感覚を楽しめることができる稀有な存在であり、その部分がクルマ好きの琴線に触れることで、多くの人が”楽しい“と感じるのではないでしょうか。

 実際、軽トラに魅了された猛者たちが集うワンメイクレースも開催され、専用パーツも多数リリースされているという状況が、それを裏付けているといえるかもしれません。