大型のキドニーグリルに賛否両論あるBMWの新型「M3/M4」だが、ついに日本での車両価格が発表された。長年BMW専門誌の編集長を務めていた西山嘉彦が、グレードと車両価格、設定されるトランスミッションやハンドルポジションから、好みに合わせたベストバイを伝授する。

新型M3/M4、どの仕様を選ぶ?

 ビー・エム・ダブリュー株式会社は、サーキットでの運動性能を極限まで高めたMハイ・パフォーマンス・モデルであるBMW新型「M3」および「M4」の販売を、2021年1月26日より開始すると発表した。納車は、2021年3月以降を予定している。

 賛否両論分かれる巨大キドニーグリルとなったM3とM4の、日本での車両価格がついに明らかになった。

 車両価格(消費税込、以下同様)並びにトランスミッション、ステアリングホイール ポジションは次のとおりだ。

・M3セダン コンペティション(8速AT/右):1324万円
・M3セダン コンペティション トラックパッケージ(8速AT/右):1436万円
・M4クーペ(6速MT/右・左):1298万円
・M4クーペ コンペティション(8速AT/右・左):1348万円
・M4クーペ コンペティション トラックパッケージ(8速AT/右・左):1460万円

 今回発表されたプライスリストを見る限り、M3にはスタンダードとなるモデルは用意されていないようだ。

 まずは先代モデルとなるF80型M3セダンとの価格を比べてみよう。

 F80型M3セダンのコンペティションは、1280万円なので44万円のアップとなる。先代も右ハンドルのみで7速ATしか選択できなかったが、4ドアの性格を鑑みると、新型M3セダンでも同様の仕様になったことは、既存のカスタマーとして何ら問題ないだろう。

●「M3/M4」をMTで操りたい人へ

 先代モデルとなるF82型M4クーペ/F82型M4クーペ コンペティションでは、いずれも6速MTと7速ATを選ぶことができた。しかし、新型ではマニュアルトランスミッションはM4クーペでしか選ぶことができなくなった。

 M4をMTで運転したいという人は、残念ながらこの1択しかない。M4クーペ コンペティションでは標準装備となる「ドライビング アシスト プロフェッショナル」が装備されないが、MTで運転する人にはそもそもこのパッケージに含まれる「高速道路渋滞時ハンズオフ アシスト」をはじめとする安全装備は必要ないだろう。むしろその分、車両価格が抑えられていると捉えるべきだ。

 その代わり、新型M4クーペ コンペティション(8速AT)は、左右のステアリングホイール ポジションを選択することが可能になった。先代ではMTは左右どちらも選択できたが、7速ATは右ハンドルしか選択することができなかったという問題があった。

 Mモデル、しかも直列6気筒エンジンを搭載したM4クーペを愛車として選ぼうとするエンスージアストの大半は、左ハンドルを選択する人が多い。その理由は、右ハンドルだとステアリングラックがエキゾーストマニホールド側を通るのを嫌うということと、歴代M3(クーペ)/M4を乗り継いでいるオーナーは、左ハンドルに乗り慣れているということもある。

 今回の新型M4では、コンペティション/コンペティション トラックパッケージのどちらも8速ATしか選択できないが、左右のステアリングホイール ポジションを選べるようになり、もっとも人気が高いだろうと予想されるコンペティションの8速ATが、左右どちらも選べるようになったのは賢いセレクトであったというべきだろう。

●もっともバリューある「M3/M4」は?

 では、プライスはどうか。同じ条件での先代モデルの車両価格は次のとおりとなる。

・F82型M4クーペ(6速MT/右・左):1213万円
・F82型M4クーペ コンペティション(7速AT/右):1338万円

 同条件で比べてみると、M4クーペは85万円、M4クーペ コンペティションは10万円のアップとなる。

 需要の少ないMTに比べ、先代モデルからの乗り換え需要も見込まれる8速AT仕様のM4クーペ コンペティションは、実質的に価格据置ともいえるプライスである。この値付けからも新型M4クーペの最量販となるのは、コンペティションと見ていいだろう。安全機能や運転支援システムも標準装備されているので、もっともバリューある選択である。

どうしていまさらM3/M4に4WDが必要なのか

 今回のモデルチェンジでは、初めてM3/M4に4輪駆動システムが採用されることも決定している。ホームページ上にも「M3 コンペティションxDrive」と「M4 コンペティションxDrive」のモデルが表記されているが、今回の発表では車両価格のアナウンスはなかった。

 M3/M4を古くから愛しているカスタマーは、駆動方式がFRであることにこだわっている人が多い。そうしたカスタマーにとっては、xDriveは選択肢にはないだろう。まずは純粋なるBMWファンへのラインナップが揃ったということである。

 しかし、新規カスタマーの獲得には、4WDモデルをラインナップに加えることはもはや避けては通れない。ライバルとなる「RS 5クーペ」を筆頭とするアウディ勢や、メルセデスAMG「E53 4MATIC」や「E63 S 4MATIC」からの乗り換えも視野に入れることもできるからだ。

●トラックパッケージとは

 今回新たに加わった「トラックパッケージ」は、M3/M4のコンペティションのラインナップに用意されている。

 コンペティションとの大きな違いは、運動性能をより高めるために約25kg軽量化されている点だ。さらに、Mカーボン セラミックブレーキ、Mカーボン バケットシート、Mドライバーパッケージ等が標準装備され、よりサーキット走行を意識したモデルとなっている。

 しかし、このダイエットの方法は、先進安全機能を装備しないことで実現されている。長距離移動などでM3/M4を使用する人にとっては、高速道路渋滞時ハンズオフ アシストなどの装備は必要だろう。あくまでもその名のとおり、トラックユースやワインディングで走りを気軽に楽しみたいカスタマー向けだ。先代の「M4GS」ほどハードコアなモデルは厳しいという人には、オススメのパッケージである。

 販売がスタートした新型M3/M4だが、2021年夏にはM3セダン コンペティション/M4クーペ コンペティションに、xDriveモデルが加わる予定であり、2021年には「M4カブリオレ」、さらに「M3ツーリング」などもラインナップに加わるかもしれないという噂もある。そうなると、最良のM3/M4選びは、今後さらに非常に悩ましい問題になりそうだ。