あどけなく愛くるしい女の子のイラストで人気のアーティスト水森亜土さんが自伝的エッセー「右向け〜っ、左!!」を刊行した。

 東京・日本橋に生まれ、20代で出演したテレビ番組で、歌いながら両手で絵を描くパフォーマンスで人気者になった水森さん。本書は生い立ちから劇団主宰者との結婚生活、義理の父母を介護した日々など、その半生を明るい筆致でつづった。

 新刊のタイトルは亡き母から教わった「迷ったらあえて人と逆の方を選ぶ」という生き方に由来する。「世間に流されない。テレビに流されない、一般に流されない。人と同じでなくって、いいじゃない。自分らしく行こう!」と水森さん。美術大の受験に失敗、すぐに気持ちを切り替えて米ハワイへ留学したのも、その精神の表れだろう。

 帰国後は劇団に入り、看板女優として活躍。1964年に始まったNHK教育(現Eテレ)の番組「たのしいきょうしつ」のオーディションを受けた。その際、緊張して苦しまぎれに「両手で絵が描けます」と答え、そのまま合格してしまう。

 水森さんは子どもの頃、左利きを矯正したため“両利き”だったものの「両手で同時に絵筆を持つとなると話は別」だったという。この時、古新聞を使って猛特訓したことが、後に彼女を有名にする番組でのパフォーマンスにつながった。

 パワフルさを保つ秘訣は「食べること」。本書は、シャンソン歌手の石井好子さんと共著で料理本を出したことや、豪華な料理が並ぶ石井さんのホームパーティーなど2人の楽しい交流にも触れている。

 河出書房新社刊、1650円。