【特集】レスリング伊調、復帰の舞台裏 東京五輪の5連覇挑戦は

【特集】レスリング伊調、復帰の舞台裏 東京五輪の5連覇挑戦は

 レスリングの女子で五輪4連覇を達成した伊調馨(34)=ALSOK=が14日、静岡県三島市で行われた全日本女子オープン選手権で2年2か月ぶりに公式戦に復帰、優勝した。2016年リオデジャネイロ五輪を最後に実戦から遠ざかり、今年は日本レスリング協会の強化本部長だった栄和人氏からのパワハラ被害も発覚。「苦しかった」時期を乗り越えての復帰劇の背景に何があったのか。行く先は20年東京五輪へと続いているのだろうか。

 ▽ギア

 57キロ級の伊調は1回戦はテクニカルフォール勝ち、準決勝、決勝はフォール勝ち。地力を見せた中、「現状」が端的に表れたのが準決勝だった。相手は先月の世界ジュニア選手権優勝の沢葉菜子(至学館大)。開始40秒ほど、棒立ち気味になったところで脚に手をかけられて倒され先制ポイントを許した。グランドの攻防でポイントを取り返したが、第1ピリオドは2―2。

 第2ピリオドは立て続けにポイントを奪い、最後はフォールしたものの「腰が浮いて、引き気味になる自分の弱いところ。修正していかないといけない点」と反省。ただ伊調を指導する田南部力氏は「ジュニアとはいえ世界トップと対峙する感覚を大事にしたかったので第1ピリオドは見ていった。第2ピリオドはギアを上げて取りにいった」と明かした。

 全体の出来について「今は少しずつ戻している段階。まだ点数はつけようがない」と田南部氏。伊調は「6〜7割くらいなか」との自己評価だった。

 ▽原点

 マットに戻るまでの道は平たんではなかった。リオ五輪後、伊調本人は現役続行かどうかについて言葉を濁してきた。しかし、ALSOKの大橋正教監督は「リオ五輪後は『やり切った感』があった。コーチの勉強もしたいという感じだった」と代弁する。

 皮肉にも状況を動かしたのはパワハラ騒動だった。今年1月、関係者が告発状を提出。調査では田南部氏の被害も認定された。大橋監督によると、この時期の伊調はこうだ。「1月ごろから日体大で練習をさせてもらうようになったが、まだ『半分は学生の指導、半分は自分のために汗を流す』という程度。それが4月ごろからは、試合を見据えてしっかりした内容で、回数も朝と夕方の2度になった」。

 伊調が「苦しい時間だった」と言うのもこのあたりだろう。「本当にレスリングがしたいのか」「身勝手じゃないのか」。何度も自問自答を繰り返し「挑戦できるのにしないのは自分に負けること」との考えに至った。

 「明確にいつ決断というのはない」。「本格的に体を動かし、新たな自分との戦いをする中で、徐々に固まってきた」という感覚だ。大橋監督は「精神的につらい時期にレスリングで体を動かしたいと言ってきた。レスリングが伊調の原点」と話した。

 ▽条件

 次の目標は12月の全日本選手権だ。その先は世界選手権、東京五輪へと期待が膨らむ。伊調は「年齢も年齢だし、相当な覚悟がないと五輪を目指すなんて言えない」と慎重。さらに「まずは環境を作ってから」と付け加えた。

 「環境」が指すものは明白だ。伊調は、田南部氏の名前を挙げ「フィジカル面でも、レスリング技術でも必要不可欠な存在」と断言した。現在は警視庁の仕事の合間に指導している田南部氏と毎日練習に取り組める体制を希望している。ただ、2人の勤務先や所属先、練習場所となっている日体大、日本協会のそれぞれに立場や事情があり、望めばそうなるというものでもないだろう。

 日本協会の西口茂樹強化本部長は、11月に行われる全日本チーム合宿への参加を伊調に呼びかけており、伊調も前向きだ。今後は、田南部コーチと二人三脚で金メダルを目指したロンドン五輪やリオ五輪の時と同じ環境がない中でどれだけ自分のレスリングを追求していけるか。それが「五輪5連覇」に挑むための第一条件だ。(共同通信=松村圭)


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