今年創業300年を迎えた「丹後ちりめん」の美を国内外に発信するため、十文字学園女子大(埼玉県)の教授で着物研究家のシーラ・クリフさんが丹後織物工業組合(京丹後市)のアンバサダーとして活動している。シーラさんは自らコーディネートした着物を着こなし、その個性的なファッション性が着物愛好家の注目を集める。低迷する丹後ちりめんに新たな光をどう当てるか−。着物への思いを聞いた。


■カラフル、ポップに自分らしく
 −着物の魅力は何でしょうか
 着物に出合ったのは35年前、旅行で日本に来た時です。骨董(こっとう)市で華やかな柄の絹の着物が飾られているのを見て心を奪われました。その後、着付けの学校に通い、着物文化、和装独特のルールも学びました。でも作法に縛られると、自分らしい表現ができないのも事実。失礼のないように着こなしを楽しんでいます。
 着物には高い芸術性があります。着物は体形に関係なく、布を直線に裁ち、直線縫いで仕上げる。着る人の体形を隠し、個性を演出することができます。
 −丹後ちりめんの印象は
 昨年6月に初めて京丹後市と与謝野町を訪ね、織物工場や工房を見学しました。白生地の絹の光沢がとても美しく上品で、質感の良さにも引きつけられました。リズミカルに動く、黒く固い織機が、しなやかで柔らかい白い絹を生み出すコントラストがとても興味深かった。丹後の職人は着物のデザインを考案するアーティストであり、織機を扱うエンジニアでもある。丹後ちりめんにかける思いが伝わってきました。
 −国内では着物文化が衰え、丹後ちりめんも生産が低迷しています
 戦後、日本では着物を着る機会が減り、普段着から、正装・礼装などの「ユニホーム」になりました。着物を着るのは茶会などの催しや式典に限られ、自分らしさというよりも、個々の役割を演出するためのものになった気がします。着物を楽しむにはどこかを変えること。例えばカラフルな襟にするとか、ポップな感じの帯や小物を用いるのもいい。自分らしさ、個性を出す、さまざまな組み合わせを考えてほしい。
 −着物離れの要因には高価なことも挙げられます
 確かに丹後ちりめんも高価です。若い人は古着や浴衣から着物に入ってもいいし、自宅や実家で「箪笥(たんす)びらき」をしてほしい。タンスの中にはお母さんやおばあちゃんの古くて新しい着物が眠ってるはず。それを自分なりに着こなせば楽しいし、家族も喜んでくれるのではないでしょうか。
 −丹後ちりめんの魅力をどのように発信しますか
 丹後各地のイベントに参加し、丹後ちりめんを私風に着こなしたい。また、英字新聞やツイッターに投稿し、ロンドンで行う着物展示会や大学の講座では丹後の着物作家や職人さんを紹介しようと思う。どんな形で着物の良さをより深く伝えられるか、考えたい。

【シーラ・クリフ】1961年英国生まれ。英リーズ大大学院修了。85年に来日して着物に興味を持ち、以後、日本在住。大学で英語や着物文化を教える傍ら、英国や日本で着物の展覧会やファッションショーを企画・プロデュースする。著書に「SHEILA KIMONO STYLE」「日本のことを英語で話そう」など。SNSのフォロアーは1万5000人以上とされる。