「こんな時期こそ、祇園祭に思いをはせたい」。新型コロナウイルスの感染が広がる中、京都市中心部の山と鉾を出す町でそんな声が上がる▼東山区の八坂神社は、祇園祭の行事を締めくくる夏越(なごし)神事に用いる茅(ち)の輪を、季節外の今月9日に設けた。観光客は減っているが、ウイルス退散を祈って輪をくぐる参拝者の列は途切れない▼疫病が広がり天変地異が起きた平安初期、都の中心に近い神泉苑で営まれた御霊会(ごりょうえ)が祇園祭のルーツとされる。関所は閉じられて物資不足など経済活動が停滞し、民衆の生活にも影響は及んだ。不安や恐怖を和らげようと朝廷は国の数を表す66本の鉾を立てて安寧を祈る国家行事だった▼現在の神泉苑(中京区)内にある料亭では、感染防止で臨時休校中の小学生に座敷を自習室として開放し、食事も無料で提供している。外国人団体客の予約はキャンセルされ、歓送会の自粛も影を落とす中での取り組みだという▼感染拡大の影響は飲食や観光業だけでなく、社会全般に広がる。御霊会で鉾が立てられた当時と似ているようにみえる▼祇園祭をテーマにした特別展が、京都文化博物館(同)で24日から始まる。疫病や戦乱、大火…都に起こるさまざまな厄災を乗り越えて先人たちは祭りを発展させてきた。町衆の情熱に触れたい。