温かい時間が流れる。下宿暮らしにはそんなイメージもある。終盤を迎えた連続テレビ小説「スカーレット」の主人公が若き日に住み込みで働いた荒木荘の個性的な住人たち。お笑い芸人矢部太郎さんが漫画「大家さんと僕」で描いたおばあさんとの交流。懐かしさを覚えた人もいるだろう▼お年寄りと学生が交流する場として下宿が再び注目されている。京都府住宅課がNPOと協力し、希望者の仲を取り持つ仕組みをつくり、4年間で28組が同居した▼各地から来た学生に街への愛着を深めてもらい、高齢者には空き家ならぬ「空き室」の活用で実りある生活をと企画した。連帯を意味するフランス語から「京都ソリデール」事業と呼ぶ▼この仕組みで京都市上京区の石田進さん(83)宅に京都府立大4年の山田茉桜さん(22)が暮らした。世代や考え方の違いを「理解できるようになった」と共に振り返る。掃除や片付けを手伝い、交代で夕食を作る食事会もして、少しずつ思いやりや会話を重ねてきた▼町内会で地蔵盆のスタッフを担ったり、高齢者施設でアルバイトを始めたりと多彩な学生がソリデールで育つ▼春。これから暮らし始める学生も、卒業で離れる新社会人も多い。京都での下宿生活が、人生の大切なひとときに加わる潤いであってほしい。