鉄道事業の赤字が続く近江鉄道(滋賀県彦根市)の在り方を議論してきた法定協議会が25日、鉄道全線の存続に合意した。滋賀県や沿線市町などの決断を後押ししたのは、鉄道の廃止による沿線住民への影響や、代替手段への高額な投資費用だった。一方で、存続に向けた沿線自治体の負担割合には課題が残る。

 協議会は、今年1〜2月に沿線の住民や学校17校の生徒ら約1万3700人に対して利用頻度やニーズをアンケート調査し、計8199人から回答を得た。
 その結果、61%の住民が近江鉄道に求める役割に「高齢者や免許を持たない人が出掛ける移動手段」と答えた。廃線となった場合は、鉄道を利用する学生の32%が「通学が不可能になる」とした。また、沿線住民の59%は「自動車による送迎に切り替える」と回答しており、会合の出席者からは家族への負担や交通渋滞の悪化を懸念する声が上がった。
 鉄道を廃止して代替手段の導入や道路を整備した場合に、国や県、沿線市町の負担額が最低でも年間で計19・1億円に上る試算も示された。一方、現状のままで存続させた場合の負担額は計6・7億円で、調査を担当した民間会社は「鉄道線を維持存続する方が代替施策を実施するよりも効果的」との結論を出した。
 法定協では今後、存続形態や自治体の財政負担割合などを議論する。存続形態として有力視されるのが、線路や車両などの鉄道施設の管理者と運行事業者を分ける「上下分離方式」だ。事業者が鉄道の運行に専念できる上、管理を受け持つ自治体や一般社団法人が国の支援を受けられ、各自治体の負担を減らせるメリットがある。同方式を導入すると、県と沿線市町の2018〜27年度の負担額は年間で計約2・9億〜4・2億円になる見込みだ。
 ただ沿線市町ごとに駅の数や路線の長さ、利用客数などが異なる中、法定協が負担割合で合意に至るには難航が予想される。この日の会合で、負担に関する具体的な議論はなかった。
 会合後、協議会長の三日月大造知事は「費用をどうまかなえばいいのか、どう負担していけばいいのかを議論する極めて重要なステージに入っていく」と述べた。

■利用者から喜びの声

 近江鉄道の存続が決まったことを受け、鉄道の利用者や沿線住民からは喜ぶ声が上がった。一方で、収益向上に向けてサービスの改善を求める指摘もあった。
 八日市駅(滋賀県東近江市)から近江八幡駅(滋賀県近江八幡市)まで通学する近江兄弟社高2年の男子生徒(17)は「鉄道で通えることが学校を選んだ理由でもあった。存続が決まって良かった」とほっとした様子だった。
 日野駅(滋賀県日野町)構内で観光案内所とカフェを併設した施設「なないろ」を運営する一般社団法人「こうけん舎」の西塚和彦代表理事(62)は「今の状態で存続させるだけでは赤字が続くだけだと思う。他の交通機関の乗り継ぎを良くするなどして、住民や観光客がより利用しやすい鉄道にしていく必要がある」と要望した。