夜明け前、鮮やかなグラデーションを描く空に、満開のシダレザクラが映える。京都市山科区の岩屋寺。住宅が立ち並ぶ参道を登り切ると視界に飛び込んでくる早咲きの巨木は、まだ冬の気配を残すひんやりとした空気の中で、りんとした風情を漂わせていた。

 寺は大石神社の近くにあり、「忠臣蔵」の大石内蔵助が吉良邸討ち入りを前に一時身を寄せていたとされる。桜のそびえる境内からは、山科盆地を一望することもできる。
 まだ薄暗い午前5時半ごろから、刻一刻と変わる光景をファインダー越しに見つめた。日の出が近づくにつれ、稜線(りょうせん)のオレンジ色は濃くなり、枝いっぱいに咲く淡紅色が存在感を増していく。日が昇り、周囲が暖かな光に包まれると、蜜を求めた小鳥たちが元気よく羽ばたいてきた。古都の春が目覚めようとしている。
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 「麗しく咲く」が語源の一つとも言われる桜。春色に染まった京都の光景を、写真記者の視点で捉える。