チンパンジー研究の世界的権威で文化功労者の京都大の松沢哲郎特別教授らが霊長類研究所(愛知県犬山市)などに関わる研究資金約5億円を不正支出していたとされる問題で、京都大は26日午後、記者会見を開いた。チンパンジーを飼育する「ケージ」と呼ばれる飼育施設の整備をめぐり、過大な支出や架空取引など34件の不正が明らかになり、松沢特別教授を含めて4人の研究者が不正に関与したと認定した。

 不正に関与していたとされるのは、松沢特別教授のほか、霊長研の友永雅己教授や野生動物研究センターの平田聡教授、同センターの森村成樹特定准教授。

 4人は、霊長研と野生動物研究センター熊本サンクチュアリ(熊本県宇城市)の大型ケージ整備をめぐり、ずさんな仕様書に基づいて取引業者と契約を結び、後に業者の損失を補てんするなどして支出を過大に膨らませたほか、納品偽装や二重支払いなどの架空取引が確認されたという。不正支出の原資は国の研究補助金や運営費交付金、寄付金などで総額約5億670万円に上った。

 京大の聴取に対し、研究者の一人は「窮状を訴える業者に対して何とかしてあげたかった」と説明しているという。

 会見には、湊長博理事・副学長と法務・コンプライアンス担当の潮見佳男副学長、霊長研の湯本貴和所長が出席。冒頭に潮見副学長が「不正経理が行われていたことは誠に遺憾。関係者や国民に深くお詫びする」と陳謝した。刑事告発については「事案をさまざまな角度から検討し、関係機関と調整したうえで判断する」と明言を避け、研究資金の国への返還についても文部科学省の決定を待って対応すると述べるにとどめた。 

 京大は2018年12月に霊長研を巡る不正に関する情報提供を受け、調査を開始。背景が複雑なこともあり調査が長期化していた。

 松沢氏は、霊長類研究所長を2006〜12年に務め、世界的に高いレベルにある日本の霊長類学を牽引(けんいん)。チンパンジーのアイとの40年以上にわたる研究などを通し、チンパンジーと人間に共通する心の在り方を見いだしてきた。こうした業績が評価され、定年退職後も京大高等研究院の特別教授として研究に当たってきた。