2021年1月15日発売の新刊『自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て 』の著者、小川大介先生が、悩める親たちにアドバイス。「うちの子のこんなところが心配」「私の接し方、コレでいいの?」など、子育てに関するありとあらゆる悩みにお答えします。

連載第58回目のお悩みは「学校の勉強で苦労している中3の息子さん」に関するお悩み。コロナ禍で勉強につまづいてしまったお子さんが、今とても増えているといわれているので、似たお悩みを抱えておられる親御さんも多いのではないでしょうか?そんなお子さんにどう接してあげればよいのか、今回は前後編2回に分けてお送りします。


【お悩み】

中3の息子に関する相談です。小学校の時はクラスの中でも成績が良く、本人の希望で私立中学を受験し、中高一貫校へ合格しました。ところが入学したものの、周りは勉強ができる子ばかりで、勉強してもなかなか結果が出ない状況が続きました。本人もがんばっていましたが、周りのお子さん達のほうが、ものすごく努力している子が多いようで、「ちょっとがんばるくらいじゃ全然成績が伸びない」という諦めの気持ちも出てきてしまったようです。入学時は中程だった成績も、今は最下位に近い位置にまで落ち、勉強に対する自信ややる気を失くし続けています。

2年生の最後の三者面談で、先生に「3年生になったら巻き返しでがんばっていこうね」と言われ、本人もがんばろうという気になっていたその矢先、コロナで学校が休校になってしまいました。それをきっかけに気持ちが随分落ちてしまい、生活も乱れて昼夜逆転するようになりました。朝までゲームをして、夕方4時頃に起きてくるような状況です。注意しても「うるさいよ」「ほっといて」と、荒い言葉で返すばかり。

学校再開後は、さすがに1時頃には寝るようになり、学校にもかろうじて朝起きて行くのですが、授業中に寝ていることが多々あるようです。その結果ますます成績が下がり、先生にも毎日呼び出されて「また寝てただろ」「宿題もやってない」と叱られてばかりです。

本人も「このままじゃダメだ」とはすごく思っているようで、「今日はやろう!がんばろう」という気持ちはあるのですが、家に帰ってから勉強にとりかかるまでに時間がかかったり、ちょっとやってもまたやる気がなくなってゲームを始めてしまう日々。なかなか計画的にものごとを進めるところまでいたりません。

この状況を打開するための手助けをしたいのですが、反抗期も重なりなかなか気持ちが通じ合えず、辛い思いをしている息子の力になれていません。(Fさん・46歳)

【小川先生の回答】


■目標は具体的に、今日辿り着けるものを設定する
今、お子さんの中で何が起きているのかというと、“がんばりたいけれども、この2年以上うまくいってない積み重ねを、今から取り返せる気がしない”との思いから、“今日一日がんばったところでどうせ無理”という気持ちが先立ってしまっている状況です。だから夜の来るのを待って、ただ時間を潰すだけの日々を繰り返してしまうのでしょう。本当にゲームをしたいわけではなく、単に逃避先がゲームになっているだけなので、ゲーム自体のやり方を云々という方法での改善は、息子さんの場合には当てはまりません。

解決の方向はひとつだけ。“今からでもちゃんと手はあるよ”ということを示してあげることです。勉強というのは今日がんばったからといって、明日急にわかるようになることはありません。だから、いきなり“クラスの真ん中くらいの成績に戻す”など、辿り着き方のわからない目標を掲げても、何をどうがんばればいいかわからず、やる気を失くしてしまうのです。まずは、高1の夏までに“英単語をここまで覚える”、“数学はこの単元まで終わらせる”など、科目毎に具体的な目標ラインを決めてあげましょう。そして、そのためには“1日に10個単語を覚える”、“数学は1日4ページやる”というように、今やったらできることまで、目標をすごく小さく設定してあげることが大切です。

そして親としては、「今日やることはできたよね。おつかれさま」と、夜10時には言ってあげられるようにしましょう。そのためには、10時までに終わらせられそうなことだけを目標に定める必要があります。今日やるべきことだけを着実にやり、本人に「できた」をいかに言わせるかが、自信を失っている子には何よりも重要です。

勉強のメニュー作成に関しては、学校の先生とも連携して、今までのぶんをどのようにして埋めていけばいいのか、指示してもらうといいでしょう。

■後悔できることはいいことだと断言してあげる
ひとつ注意点としては、負い目が強い子というのは、何かひとつできると「これをもっと早くやっていたらよかったのに…」と、またグチグチ後悔してしまう傾向にあります。せっかくやったのに、やってから落ち込むという反応が出てくるのです。そんな時は、「そう思えるってことは、“できそう”って思い始めたってことだからいいじゃない」と言い切ってあげましょう。後悔できるということは、“自分はできるはずだ”と思えている証拠です。本当にムリな人や本当に諦めている人は、後悔なんてしません。そういうことを大人の知恵として教えてあげたうえで、「だから今あなたがクヨクヨしているのも、ママは正直ちょっと嬉しいな」くらい言い切ってあげるといいでしょう。

■不用意に傷つかないためには、周囲の言葉に敏感になり過ぎない
また、お話を伺っている限りでは、学校にはあまり期待し過ぎないほうがいいかもしれません。勉強メニューの作成とその添削という勉強面での協力は、先生たちにお願いして問題ないし、寧ろすべきです。でも、コースをちょっと外れた子の心の在り方を理解して、立て直していくという、心理的ケアについては、残念ながら学校には救済策がなさそうです。なので、そこは割り切ってもらったほうが、先生との関係でお母さんが不用意に傷つかなくて済むでしょう。

当面は、あれやこれやと言われて、本人も傷つくことがあるかもしれません。そんな時は先生を責めるのではなく、「先生が見ているポイントと、あなたの気持ちのしんどさをわかってくれるというところとはズレているので仕方がないね」と捉えるようにしましょう。そして「いつの間にか随分できるようになったな」と先生に言ってもらえるように、家でがんばろうという方向に気持ちを持っていくほうが賢明です。

大切なのは、周囲に惑わされず、毎日やろうと決めたことを終わらせること。それを徹底していけば、息子さんは本来とてもがんばる子だと思うので、半年後くらいには学校でも随分ラクにやっていけるように変わっていくと思いますよ。

回答者Profile


小川大介

教育家。中学受験情報局『かしこい塾の使い方』主任相談員。

京都大学法学部卒業後、コーチング主体の中学受験専門プロ個別塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。個別面談の実施数は6000回を数え、受験学習はもとより、幼児低学年からの能力育成や親子関係の築き方指導に定評がある。各メディアでも活躍。著書多数。

文=酒詰明子