ママ友社会の闇を描いたコミックエッセイ『ママ友がこわい 子どもが同学年という小さな絶望』の著者・野原広子さんが書いた最新作『消えたママ友』がついに発売されました。

保育園のママ友「有紀ちゃん」が突然姿を消してしまい、何も知らされていなかった仲良しグループのママ友関係もギクシャクしはじめるという、ちょっとミステリアスな今回の物語。リアルな人間関係と心理描写が怖い!と子育て世代のママたちからも多くの反響をいただいています。今回は、著者の野原広子さんに『消えたママ友』についてのお話を伺いました。





――『消えたママ友』というタイトルは衝撃的でした。平凡だと思っていた日常がじわじわと崩れていくような、ミステリー仕立ての物語を書こうと思ったのはなぜでしょうか?



じつは昨年、離婚を経験しまして、私自身が「有紀ちゃん」状態だったんです。あ、逃げたり消えたりしたわけではありませんが…(笑)

これまで生活していた場所から引っ越しなければいけないという状況だったのですが、私がいなくなった後に今まで仲良くしていた友人たちの関係に微妙な距離が生まれていたことに気づいたんです。



――絶妙なバランス感覚で成り立っていたコミュニティから1人抜けることで人間関係がどことなく浮き足立ってしまう感じ、まさに『消えたママ友』の「有紀ちゃん」状態ですね。



私にしたらそれぞれが大切な友人なのですが、私がいなくなったことで友人同士の距離感が変わってしまうという出来事が意外でした。さらに私がいなくなってから人づてに聞いた「私のウワサ話」もヒントにして今回の作品を書いてみようと思いました。



――登場人物全員がママ友付き合いにモヤモヤした感情を持っているところにも共感してしまいます。このようなリアルな感情を持つ登場人物たちはどうやって生まれたのでしょうか?



私自身はもう子どもが成人して子育てがひと段落したのですが、今になって長年付き合ってきた友人たちが「じつはあの頃…」と、小さい子どもを育てることに必死になっていた頃の心の葛藤や苦労を話してくれました。彼女たちはとてもそんな闇を抱えている風に見えなかったので驚きました。でも、そういえば私もすべてを話しているわけではなかったな…と。きつかった時を乗り越えてようやく思い出話として話せるようになった今だからこそ書けたのかもしれません。



――子ども同士のトラブルが発端で親同士までギクシャクしてしまう描写にはドキドキさせられました…。



子ども同士の関わり方がそのままママ友関係にも影響してしまうのは残念ながらよくある話ですよね。実際、「あんなに仲よかったのに…」と驚くほど冷ややかな状態になってしまったママ友関係を見たこともあります。また、仲が良かったほど、溝は深くなるようにも思います。



――野原さんご自身がそのような経験をしたことは?



じつは私自身もとても仲の良かったママ友とほんの小さなことで喧嘩別れしてしまった経験があります。子ども達の無邪気なテンションにつられて、親まで無邪気になってしまったことが、距離感を間違えてしまった原因のような気がしています。大人同士の関係として時には立ち止まって冷静に自分を見てみればよかったな、と反省しています。





――ママ友とそうでない友人に違いはあると思いますか? あるとすればどんなところでしょうか?



ママ友と学生時代からの友人などは明らかに違いますよね。ただの友人は肩の力が抜けますけど、ママ友は「肩の力を抜きすぎてはいけない」と、どこかでセーブしているような気がします。それに、ママ友は知り合ってそう時間が経っていないですし、素の自分ではなく”ママとしての顔”をしているというところですよね。



――確かにママ友付き合いの中で家庭環境や悩みを赤裸々に話せる人というのは多くない気がします。



そうですよね。ただ、知り合って間もないうちは、なんでも言い合えることばかりが“いい関係”というわけではないと思うんです。仲がいいからこそ何も言えないということもあるし、聞かないでいてくれるから信頼が生まれるということもあります。その先になんでも言い合える関係が生まれたらそれは大切にしたらいいのではないでしょうか。



――時には面倒もあるママ友関係ですが、野原さんご自身が「ママ友がいてよかった!」と感じたことはありますか?



子どもが小さかった頃は成長する上でいろいろ壁にぶつかったり悩んだりすることも多々あって、その話を聞いてくれるだけで「ママ友がいて良かった!」と何度も思いました。子どもが成人した今でもそれぞれの子どもの成長をお互い喜びあえる関係が続いています。



――最後に、ママ友関係に悩んでいる人、疲れている人にメッセージやアドバイスがあればお願いします。



もしママ友関係に悩んでいる、疲れているとしたら、それは「ママ友」と考えなくていいと思います。「子どものお友達のお母さん」として一歩離れて考えたら、きっと冷静な対応が浮かんでくるはず。無理した関係はほころびが出てくると思うし、ほころびを出してはならぬと必死になればなるほど苦しくなっていくものです。そう簡単にママ友関係に距離をおくことなんてできない!という人は仕事や趣味など距離を置ける何かを見つけて、別の世界を広げてみるのもいいと思います。



毎日顔を合わせていてとてもよく知っているようで実はほとんど知らないママ友、あなたの周りにもいませんか? 突然姿を消してしまった有紀ちゃんはどこへ行ったのか。有紀ちゃんに一体なにがあったのか…。あなたの周りにも第二の「有紀ちゃん」はいるのかもしれません。



文=宇都宮薫(レタスクラブニュース)