こんにちは。セールスコンサルタントの伊庭正康です。

なかなか効率化を図るのは難しいものです。効率化を図るためにしたことで、かえってやることを増やしてしまった、といった事態になることも少なくありません。

たとえば、「会議は減ったものの、報告書の記入欄が増えた」「フリーアドレスになったものの、メールのやりとりが増えた」といったこともその1つ。こうなると、本末転倒です。

では、なぜこうなってしまうのでしょうか。「なぜ、なぜ、なぜ」を繰り返すと、その真因に行きつくと言いますが、この問いの行き着く先、つまり真因は、「キチンできていないと不安だから」といった完璧でないと不安になる心理に行きつきます。

このことに無自覚だと、周囲の仕事は減らないことになりますし、当然ですが自分自身の業務も減らすことはできません。

今回は、この効率化の弊害となる完璧主義の手放し方を紹介します。

伊庭正康(いば・まさやす) (株)らしさラボ 代表取締役

リクルートグループ入社。残業レスで営業とマネジャーの両部門で累計40回以上の表彰を受賞。その後、部長、社内ベンチャーの代表を歴任。2011年(株)らしさラボ設立。リーダー、営業力、時間管理など、年間200回以上の研修に登壇。リピート率は9割以上。近著に、『面倒なやりとりがシンプルになる、仕事のコツ48(かんき出版)』がある。「無料メールセミナー」も好評。公式サイト

なぜか仕事が増えてしまう「完璧主義」の罠

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私は、ストレスコーピングコーチとして、人それぞれが持つ「考え方の癖」に気づいていただき、それを矯正する研修を行っています。ストレスコーピングとは、認知行動療法をベースとしたストレス対処能力を高めるスキルのことで、オリンピック選手をはじめとしたアスリートから、第一線で活躍するビジネスパーソンが活用するストレス対処のグローバルスキルです。

その「考え方の癖」の1つに「完璧思考」があります。実は、この完璧思考がクセモノで、真面目にがんばるほどに、無駄な仕事を増やしてしまったり、時には同僚を振り回してしまうことすらあるのです。もし、あなたに「完璧でないと不安」「完璧でないと評価が下がる」といった囚われがあるなら要注意。ちょっと振り返ってみてください。

たとえば、会議や商談があったとします。あらかじめ質問を想定し、万が一に備えて必要以上に資料を用意しておき、結局は使わなかったこともあるでしょう。この時「セーフ(使わずに済んでよかった)」と喜んでしまうのは問題です。「準備しすぎたな。もったいないことをした」と考えるのが正解。

もし、念には念を入れて、資料を用意してしまい、そのために残業してしまう、といったことがあるなら、それは「完璧思考」の仕業ですから。

では、あなたが「完璧思考」かどうか、チェックをしてみましょう? 次の質問に、〇か×かで答えてみてください。

【完璧思考度チェック】

Q1. 1つのミスもしたくないと思い、気疲れをすることがある。

Q2. ミスをしないよう、念には念を入れてしまうほうだ。

Q3. 人に対しても、気を遣うほうだ。

Q4. ミスを恐れ、石橋を叩きすぎる傾向がある。

Q5. 自分のことだけではなく、周囲に問題がないか気になる。

Q6. つい、気になってしまい、スグに確認を入れたくなる。

Q7. いちいち確認をしないと気が済まない時がある。

7問中、〇が4つ以上あるなら、完璧思考の傾向があると思っておいた方がいいでしょう。

「完璧主義」の予防

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私のストレスコーピング研修の1つ、「考え方の癖」を矯正するテクニックを紹介します。「セルフトーク法」です。

セルフトークとは、心の中で呟く独り言のこと。人は1日に6万回も心の中で独り言を呟いているそうですが、完璧思考の人は独特なセルフトークを呟いています。

「これ、本当に大丈夫かな?」「念には念を入れて」「断るワケにはいかない」「休むわけにはいかない」「完璧でないとマズイ」などが代表例。完璧思考の人は、「そりゃそうでしょ」と思うかもしれません。でも、普通ではありません。これこそが「考え方の癖」なのです。

さて、セルフトーク法ですが、自分に対して反駁(はんばく)・反論するセルフトークツッコミを呟くことで、「考え方の癖」に陥らないようにする方法です。言ってみれば、セルフツッコミのことです。

たとえば、こんな感じです。

【完璧思考のセルフトーク】 → 【セルフツッコミのセルフトーク】

・「これ、本当に大丈夫かな?」 → 「やりながら修正すればいいか」

・「念には念を入れて」 → 「わからなければ、即答を避ければいいか」

・「休むわけにはいかない」 → 「休むのも仕事だ」

・「完璧でないとマズイ」 → 「7割で十分。あとの3割は修正すればいい」

・「断るワケにはいかない」 → 「うまく断る方法はないかな」

このように、対抗トークを呟く方法をセルフトーク法といいます。

たとえば、「念には念を入れてやっておく」となった場合、「それって本当に必要なの?」といったよう、自分にはない新たな気づきを得られることこそが、セルフトーク法の効果なのです。

まとめましょう。もし、あなたの仕事がなかなか減らない ことがあるなら、この完璧思考がそうさせている可能性も否めません。そうなると、いくら業務を効率化させても、気になってしまい、結局は仕事が増えてしまうのです。

そうならないためにも、ぜひ「セルフトーク法」で、完璧思考の癖を正してみてください。もっと、ラクをしてもいいことに気づけるはずです。

――2019年11月14日の記事を再編集のうえ、再掲しています。

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執筆:伊庭正康

Source: RASISA LAB(1, 2)