『ハリー・ポッター』の組分け帽子は学校運営には好ましくない?

『ハリー・ポッター』の組分け帽子は学校運営には好ましくない?

『ハリー・ポッター』シリーズの物語で重要な役割を演じる「ホグワーツ魔法魔術学校の組分け帽子」は、西洋文化でもっとも有名な心理テストのひとつになりました。今では、米国の就職適性検査に使われるマイヤーズ・ブリッグズ・タイプ指標による診断テストや、『セックス・アンド・ザ・シティ』のキャリー・タイプかどうかを判断する性格診断よりも人気を博しています。

BuzzFeed、Pottermore、The Guardianをはじめ、sorting-hat.com、Newcastle Herald、Playbuzzといった多くのサイトで、この組分けシステムが現実世界の性格判断クイズとして使われています。最近では米誌『TIME』が、ビッグファイブ(性格を構成する5つの要素)のような心理学的手法に基づく高度な組分け帽子クイズを、考案しました。

ホグワーツでは、組分け帽子の判断が大きな影響力を持ち、生徒たちの交友関係、スポーツ、学歴、そして卒業後の進路に至るまでを左右します。どのようなものであれ、そうした心理テストを若年の子どもに対して行い、すべての生徒について正確な判断を下すことなどできるのでしょうか?

それとも、科学的信憑性に異議が唱えられているマイヤーズ・ブリッグズ・タイプ指標による診断テストのように、組分け帽子もまた、過度な単純化を信奉する似非心理学による分類にすぎないのでしょうか?

以下では、ハリー・ポッターファンの臨床心理学者で、YouTubeの番組『The Psych Show』のホスト役を務めるAli Mattu博士に話を聞き、組分け帽子の威光が大きすぎるのではないか?という質問をぶつけてみました。Mattu博士は、以下のように分析しています。

ホグワーツ魔法魔術学校の組分け帽子それ自体については、私は何も問題ないと思っています。鋭い感覚を持った帽子が、ハリー・ポッターの世界でレジリメンス(開心)と呼ばれる読心術を使い、ホグワーツの新入生の考え方、価値観、望みを見極めるというアイデアには、全面的に賛成です。ハリー・ポッター世界の魔法心理学のほかの要素、たとえば、服従の呪文による洗脳や忘却術で考え方をどのように操作できるのか、といったストーリーにもなじんでいます。ですが、ホグワーツが生徒を組分けするやり方は、学校運営の観点からすると、とんでもない方法です。

人の脳、価値観、そして性格は、20代まで発達し続けます。また、性格は人生の特定の時期に変化し続ける(PubMedより)という証拠もいくつか見つかっています。ホグワーツの新入生たちと同じ11〜12歳の時点で、いったい誰が、ホグワーツの4人の創設者であるゴドリック・グリフィンドールのように勇敢になるのか、ヘルガ・ハッフルパフのように忠実になるのか、ロウェナ・レイブンクローのように聡明になるのか、それともサラザール・スリザリンのようにずる賢くなるのか、見極めるすべはないのです。

私の場合、その年代のころは物静かで恥ずかしがりだったので、たぶんハッフルパフの寮に分類されると思いますが、自信にあふれた20歳の私であれば、グリフィンドールの寮に入ったでしょう。では、今ならどうでしょうか? 仕事で野心を抱く今の私は、間違いなくスリザリンの寮になるでしょう。

ホグワーツの組分け儀式は、「自分が何者であるかは初めから決まっている」という危険なメッセージを生徒たちに伝えてしまいます。しかし現実には、自分の能力を変えられると確信して、サポートを得られる環境に置かれれば、自分とは変えられるものなのです。これは成長思考と呼ばれています(Harvard Business Reviewより)。

ホグワーツの組分け帽子は「あなたはこんな人だ、あなたはこんな人になる、自分と同じような人たちと一緒にいなさい」というメッセージを伝えています。読書が苦手なためにレイブンクローに入れず、グリフィンドールに振り分けられた生徒は、「自分は優秀な生徒にはなれない、体力勝負のキャリアをひたすら目指すしかない」と思い込むかもしれません。

組分け儀式には、みずから達成する予言的な性質もあります。ミルグラムの服従実験からスタンフォード監獄実験に至る数々の心理学的研究により、周囲の状況から人間が受ける影響は非常に大きく、人は期待された性質を自ら身につけることがわかっています(The New Yorkerより)。

スリザリンの寮生たちは、よりずる賢くなるでしょう。なぜなら、スリザリンの生徒たちはそうするものだからです。グリフィンドールの寮生たちは、より大きなリスクを取るようになるでしょう。それがグリフィンドール寮の歴史の一部であり、寮内でも奨励されているからです。臆病な新入生だったグリフィンドール寮生のネビル・ロングボトムが、7作目では勇敢なダンブルドア軍団のリーダーに成長したのも、きっとそのためでしょう。ビジネススクールの学生が起業家として力を付けるのも、弁護士が細部にまで目が届くのも、医師がすぐれた診断をできるのも、これで説明がつくはずです。

似たような生徒たちを寮ごとに隔離すると、創造性を低下させてしまいます。チームがもっとも創造性を発揮できるのは、それぞれ異なるバックグラウンドを持つ人たちがひとつに集まり、互いの意見の違いを受け入れた時です(The New York Timesより)。個性に基づいて生徒たちを異なる寮にグループ分けし、分かれたままでの生活するように促すと、生徒たち全員が同じように考え、同じような解決策を提案する可能性が高くなります。自分とは違う人のものの見方を理解することも難しくなるでしょう。

私がホグワーツの校長だったら、やはり組分け帽子を使って4つの寮に生徒を分けるでしょうが、それぞれの寮が人生で成功するためのあらゆる個性を持つ生徒で構成されるように、帽子に指示を出すと思います。

TIMEのテストに使われているビッグファイブに関しては、現時点での状態を反映していることを念頭に置いている限りは、個性を評価する優れた基準であるといえます。個性は生涯にわたって変化していくものです。ですから、それがどれほど正確なものであれ、そうしたテストに基づいて組分けしてしまうのは問題でしょう。生徒たちは、自分の入った寮を恒久不変なものと考えてしまいます。

しかも、そうした寮は明確な個性と結びついています。ここで生じるもうひとつの問題は、潜在的な「社会的望ましさのバイアス」です。これは、他者から好まれるであろう形で質問に答えてしまうという現象です。それぞれの寮について、どんな質問がされるのかの見当をつけるのは、わりと簡単です。ですから、どうしてもどこかに入りたいと思うのなら、簡単にそうできるのです。

Why the Hogwarts Sorting Hat Is a Bad Idea | Lifehacker US

Image: Stephen Chernin/Getty Images News/ゲッティ イメージズ

Source: BuzzFeed, Pottermore, The Guardian, sorting-hat.com, Newcastle Herald, Playbuzz, TIME, Washington Post, YouTube, PubMed, Harvard Business Review, The New Yorker, The New York Times

Reference: Wikipedia1, 2, 3, 4, SEX and the CITYオフィシャルサイト, Harry Potter Wiki1, 2

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