コロナ禍で閉塞感や不安はぬぐえませんが、一方で時間の余裕ができたという声も聞きます。

その時間を人生や幸福について考えることに費やしてみようとすすめているのは、社会学者のアーサー・C・ブルックさん。ハーバード・ビジネス・スクールで幸せについての講義を担当しています。

幸せをウェルビーイングと呼ぶのは何故?

幸福学がビジネススクールで教えられているというのは不思議な気がします。

しかし、ブルックさんによると、この30年間で幸せの科学的な研究は拡がり、2000年には査読される研究誌『Journal of Happiness Studies』が創刊されるほどに、注目の研究対象なのだそう。

幸福については「happiness」ではなく「subjective well-being(主観的ウェルビーイング)」と表現されることが多いようです。

ブルックさんによると、それは科学者の多くがhapinessという言葉は漠然すぎて人によって捉え方が異なりすぎると考えているからだそうです。

Subjective well-being(主観的ウェルビーイング)とは通常社会学者が使う用語です。

(中略)これは「全体的にみて、自分の現状はどうであるか、自分がかなり幸せであるか、またはあまり幸せではないか」という類の質問に対する答えのことを指します。

The Atlanticより引用翻訳

日本語でいう幸福感、安寧、安心感、健康、充足感、充実、生きがい、尊厳、意欲などがウェルビーイング(良好な状態)に含まれると考えてよいでしょう。

自分の幸福度を決める3要素

ブルックさんはウェルビーイングを考えるための3つの方程式を提示しています。

最初の方程式は「Subjective Well-being = Genes(遺伝子) + Circumstances(状況) + Habits(習慣)」。

主観的なウェルビーイングは遺伝と状況と習慣からなるということですが、中でも遺伝は50%を占めるのだとか。けっこう大きい割合です。

遺伝によりスタート時点での幸福度が低いとしたら、自分がどうがんばってもそれほど変わらないのでは思うかもしれませんが、状況と習慣の影響も半分はあるのです。

ブルックさんは、状況は変化し、それに人は慣れてゆき影響も長くは続かないので、特に重要なのは習慣だと言います。

習慣を作る4要素

習慣についての方程式は「Habits = Faith(信仰) + Family(家族) + Friends(友人) + Work(仕事)」。

信仰、家族、友人、仕事が習慣を作る4要素です。

Habits(習慣)とありますが、ここでは日常生活を構成するものと捉えたほうがわかりやすいでしょう。

信仰といっても、特定の宗教に限らず生き方の指針になるもの、人生哲学なども含まれます。そして、家族や友人との信頼と愛情のある人間関係。仕事については種類ではなく、それが本人にとって意義があるかどうかがポイントになります。

収入のための仕事をしていなくても、他の社会的活動や趣味、学業なども当てはまるでしょう。

ブルックさんは自分の人生にはこの4要素がバランスよく存在しているか、変えるべき点はあるかどうかと自問するようにと提案しています。

暮らしのあらゆる面が変化の波に襲われている今、自分の生活の棚卸しをしなければと感じている人は少なくないでしょう。

在宅勤務についてのアンケートでは「なぜ仕事をするのか」を自問して、仕事について深く考えるきっかけになったという意見がありました。

また、こちらの記事にあるように、自分にとっての「ワクワクの核」や生きがいを見つけるヒントは読書にたくさんありそうです。

そして、一緒に過ごす時間が増えたパートナーとの関係では、こちらの記事の5つのポイントを参考にして、状況に関わらず良好な関係を維持できるように心がけたいです。

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満足度は「持っているもの÷欲しいもの」で決まる

3つ目の方程式は「Satisfaction = What you have(持っているもの) ÷ What you want(欲しいもの)」。

満足感は、自分の持っているものを自分が欲しいもの(自分に欠けているもの、足りないもの)で割ります。

ブルックさんは、多くの人たちがこの式の分子である所有を増やそうとするけれど、分母である欲しいものを小さくすることを考えるべきだと言います。

分母を小さくすると分子が変わらなくても答え、つまり満足感は大きくなります。

この方程式を実感した出来事がありました。

3月末にはスーパーにまったくなかったトイレットペーパーが1カ月後には店頭に並び、しかも自分の好きな製品があったのを見つけた時すごくうれしかったのです。

単純すぎると思われてもしかたないのですが、その時は満足感120%でした。ないだろうと思っていたこと、つまり分母が小さかったので、買えた満足度がぐっとアップした一瞬でした。

これは些細な例ですが、人生は瞬間の積み重ね。そんな一瞬一瞬が全体的なウェルビーイングに影響がないとは言えません。

自分が何を欲しがっているのか、それが本当に必要なのかどうかを見極めていけば、コロナ禍の現状でも満足感を持ちウェルビーイングを維持することは不可能ではないと思います。

ウェルビーイングはオンラインでも学べる

今はMOOCでいろいろな大学の講座が受講できるようになりましたが、残念ながらブルックさんの講座は現時点ではオンライン公開はしていないようです。

でも、ウェルビーイングは学べます。イェール大で人気を誇る「The Science of Well-Being」がMOOCのコーセラで提供されています。

全米トップの大学が提供し世界中から受講されているのは、人生の意義や幸福を誰もが求めているからでしょう。

4週間の講義予定には「Misconceptions About Happiness(幸福についての思い違い)」「Why Our Expectations are so Bad(期待が役立たないのはなぜか)」「How Can We Overcome Our Biases(バイアスを克服する方法)」というトピックが並びます。

こちらの記事では、講座の一部について紹介していますが、オンライン受講はいつからでもOKで、しかも無料なので、思い切って受講してみるのもアリ(講義は英語)!

毎週の学習時間が2時間ほどに設定されているのも気楽です。

先行き不透明で不安が募る現状ですが、時々は心配の代わりに、自分のウェルビーイングについて考えて心を整えるために時間を使いたいです。

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Source: The Atlantic, Coursera

Reference: 日本WHO協会

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