『Why We Sleep: Unlocking the Power of Sleep and Dreams』(邦題『睡眠こそ最強の解決策である』)を読んで以来、わたしが睡眠の師と崇める(ちょっと大げさ)マシュー・ウォーカーさん。

カリフォルニア大学バークレー校の睡眠研究者です。この本は2019年のビル・ゲイツのオススメ本リストにも入っていました。

睡眠こそ最強の解決策である

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コロナ時代の睡眠について

これまでもTEDに登壇しているウォーカーさんですが、4月にはTEDの創設者クリス・アンダーソンさんとリモート対談をしました。

テーマは「睡眠がこれまで以上に重要になっている理由」。コロナ禍の不安な現状でなかなか熟睡できないというアンダーソンさんに、ウォーカーさんが睡眠の重要性を改めて説明します。

寝不足だとワクチン効果が減る!

コロナ関連で特に注目したい発言がありました。それは慢性の睡眠不足と免疫系の関係について。

睡眠の健康と免疫の健康には深い関係があることはすでにわかっています。

その例をいくつか挙げましょう。

数年前の研究では、睡眠時間が8時間以上の人に比べて、7時間以下の人は風邪を引きおこす鼻炎ウイルスにかかる可能性が3倍になることが判明しています。

また、5万人を超える女性を対象にした別の研究によると、睡眠が5時間以下の人は、8時間以上の人に比べて、肺の感染症である肺炎になる可能性が70%高まります。

しかし、睡眠と免疫系の関係で特に際立っているのが、インフルエンザのワクチン接種の前の週に睡眠不足だとワクチンによる抗体反応が通常の半分以下になるという研究結果。

つまり、ワクチンの効果が大幅に低くなるのです。

TED動画(02:21〜3:32)より引用翻訳

これを聞いて驚きました!

過去にも、肝炎ワクチンを接種した後の1晩の睡眠量の違いで、免疫系が作った抗体の量に大きな差がでたという日経サイエンスの記事(2015年)もありました。

1晩の睡眠不足だけでも影響があるのですから、慢性の睡眠不足で免疫力がずっと低下している時に接種したワクチンの効果にも影響がおよぶのはないかと想像できます。

もちろん、今はまだないコロナウイルスワクチンと睡眠との関係は現時点では不明。しかし、ワクチンの効果に睡眠が影響することは覚えておいたほうがよさそうです。

睡眠マネジメントへのアドバイス

動画では、睡眠マネジメントについてもいくつもアドバイスがありました。

夜よく眠れなかった次の日や寝つけない時には、24時間の概日リズムを崩さないことが重要だそうです。

寝不足だからといって、普段寝る時間と起きる時間を変えてはいけないのだとか。具体的には次のようなポイントです。

1. 翌日に寝だめしない

2. 特に午後の遅い時間には昼寝をしない

3. ベッドに入っても20〜30分寝つけない時には、起きて読書したりする。無理に寝る努力をしない。

また、寝る前のルーティンを決めることも良い睡眠につながるそう。

これを実感したことが最近ありました。

アメリカでコロナ感染が広まった4月ごろから、ほぼ毎晩『新スタートレック』の1エピソードを観てから寝るようにしていました。

でも、ある日曜日の午後に1エピソードを観たら、その後家族全員がなんだか眠くなってしまったのです。結局、その日は夜にもう1エピソード鑑賞、つまり寝る前の習慣を行なったら違和感なく寝られました。

ウォーカーさんの例えは、眠気はスイッチをオフにするように一瞬で起こるものではなく、飛行機が着陸のために次第に高度を落としていくようなもの。

ですから、就寝1時間ぐらい前から照明を暗くして、体に寝る時間だというシグナルを送ると良いそうです。

体内時計をリセット! 生活リズムを整える7つの習慣 気持ちよく起きたいのに布団から出られない朝、屋内にこもりながらコーヒーと過ごす運動不足の昼間、眠くなっても寝たくない、スマホと過ごす自分だけの夜…思... https://www.lifehacker.jp/2018/06/169303circadian-rhythms.html

デバイスによる「睡眠の先延ばし」はNG

現代人には避けられないデバイスと睡眠の関係についても取り上げられました。

ずばり、ベッドでスマホやタブレット、ノートPCなどは使わないほうが良いそうです。

それらのブルーライトは眠気につながるホルモンのメラトニン分泌を妨げるのもあります。

ウォーカーさんがそれよりも問題視しているのは、デバイスを使うことによる「sleep procrastination(睡眠の先延ばし)」、つまりついついデバイスを使ってしまい、体は疲れているのに寝るのをぐずぐずと遅らせてしまうこと。

たしかにそんな経験は誰にでもあります。また、就寝前だけではなく、朝一にスマホをチェックするのもNGだそう。せめて起きてから5分ぐらいは待ちましょうとのこと。

睡眠は「心身の健康への投資」である

上記のほかにも、学習(記憶)・クリエイティビティ・メンタルヘルス・ストレス・食欲をコントロールするホルモン・運動と睡眠の関係や、睡眠薬やメラトニンサプリメントにも触れられている充実の1時間動画。

まだ日本語字幕はありませんが、もし視聴するなら睡眠時間は削らずに時間に余裕のある日を選ぶのがいいでしょう。

アンダーソンさんの「理想の睡眠時間は?」という問いに、大人の平均睡眠時間は7〜9時間ということも再確認されました。

動画の締めくくりは、ウォーカーさんの「睡眠は煩わしいことではなく、健康への投資である」という名言。

睡眠はいつでも重要ですが、免疫力が特にカギとなるウィズコロナ時代にはもっと意識して質も量も十分な睡眠を心がけたいと思いました。

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Image: Shutterstock

Source: TED, 日本経済新聞/日経サイエンス, YouTube