『心のザワザワがなくなる 比べない習慣』(玉置妙憂 著、日本実業出版社)の著者は看護師として、僧侶として、死にゆく方の心に寄り添う活動をしている人物。

最近では元気に生きている方に対し、よりよく生きるための相談を受ける機会も増えてきたそうです。

そんななかで感じるのは、死にゆく人であれ、いまを生きる人であれ、人間の悩みの根本には「くらべる」気持ちがあるということ。

“くらべて悩む”とは、世の中の常識や当たり前なことなど、「与えられた価値観に従う」ということです。

そういう生き方は楽でもありますが、誰かに与えられた価値観だけにしたがって生きていると、自分の頭で考えて判断することができなくなる可能性があります。

自分の行動や評価の基準を他人や世間のほうに置き、常に「人とくらべて自分はどうか」と人目を気にしていたら、なにかあるたびに「どう行動したらいいのか」と悩んでしまうことになるわけです。

誰が決めたかわからない「普通」や「世間」、「人並み」などという幻想の檻にしばられて、自分で自分の人生を窮屈にしています。

そうではなく、他人や世間と比べず自分自身で心を満たせることができれば、人生はもっと生きやすいものになるのではないかと感じさせられます。(「はじめに」より)

もちろん人は他人の視線や評価から完全に逃れることはできませんし、常に誰かと優劣を比較されながら生きているものでもあるでしょう。

しかしネガティブなくらべ方をして生きてきた人は、最後までネガティブなまま生きることになってしまうというのです。

大切なのは、「私はこの生き方を選んだのだから、これでよかったのだ」と自分の軸を持ち、自分なりの生き方をすることであるはず。

そこで本書では、著者自身の体験や仏教の教えに基づき、“私たちが学べること”を綴っているわけです。

そんな本書のなかから、きょうは第2章「比べる自分から逃れる『気づく』習慣」に焦点を当て、子育てに関連した2つの要点を抜き出してみたいと思います。

心のザワザワがなくなる 比べない習慣

1,430円

「自分の本当の心」に気づくことで問題の8割は解決する

生きていくうえでは、さまざまな問題に直面するものです。

しかし実は「自分の本心」に気づいた時点で、すでに問題の8割くらいは解決しているものだと著者は考えているそうです。つまり、残りは2割程度しかないということ。

しかも「どうしたらいいのか」という反省の部分についての答えは、放っておいても自然に出てくるものなので、それほど慌てなくても大丈夫だというのです。

まずは、自分の本心に気づくかどうか。 それがいちばん大きなステップです。

「気づく」ことは、いわば自分のステージを上げる段階の一段目ですが、この一段が、もっとも大きなステップとなるのです。(58〜59ページより)

たとえば著者は子どもが小さかったころ、仕事から帰ったら5分でも早く夕飯を並べてあげなければいけないと思っていたそうです。

なぜなら他の母親と自分を比較し、「いい母親でなければいけない」「自分はいい母親であるべきだ」と思い込んでいたから。

とはいえ、うまくいかないことが多く、結果的にはいつもイライラしていたのだとか。

理由は、他の人とくらべ、世間の常識とくらべた結果、それらに合わせられない自分が許せなかったから。

しかし、そうした思い込みは弱い人に向けられるものでもあります。そのため、イライラを子どもにぶつけてしまっていたということです。

でも、そののち気づいたのは、「それをどうとらえるか」によって、その後の時間の「質」は変わっていくということ。なによりも自分の心が穏やかになり、楽になっていくわけです。

そして、自分の間違った大義名分に気づけば、いちばん嫌な思いをしていたのは自分ではなくて子どもだったことに思い至るのです。

ただ、自分の誤りに気づいたとき、「ほかの人にはできるのか。でも、私にはできない。なんてダメな親だ」とイメージの中の「いい親」と比べては自分を責めてしまうと、結局イライラが増すという悪循環に陥ります。(63ページより)

そうではなく、大切なのは「我が子の前でイライラしてしまうのは、どうしてだろう?」「なぜ私は、いつも焦っているのかな?」と自分の本質を探ってみること。

まず自分の心のあり方を見なおしてみるべきだということです。(58ページより)

自分でも気づきにくい「あなたのため」のワナ

著者は本書のなかで、「内観」ということばを紹介しています。

内観(ないかん)……心の働きを観察することによって、自己そのものを見つめる修行法をいい、「観」「観法」「正観」などともいう。(79ページより)

簡単なことのようで、自分の本心に気づくのは難しいこと。なぜなら「大義名分」と「自分の本心」の区別がつきにくいこともあるから。

親は子どもに対し、「あなたのために言っている」「あなたのためにやっている」と口にすることがあります。しかし、それは本当に子どものためなのだろうかと著者は疑問を投げかけています。

「勉強しなさい。あなたのために言っているのよ」ということばは、我が子の将来を考えてのものであるはず。

しかし実際には、子どもがいい学校に入ることで、周囲の人から羨望の目で見られたいとか、家の体面を保ちたいといった“本心”もあるのではないかと。

ただ、そうだったとしても「あなたのために言っている」という大義名分を掲げているため、自分の本心には気づきにくくなっているというのです。

無意識のうちに相手に押しつけをしているわけで、だからこそ、自分の心の表面だけではなく、意識の奥底まで深掘りすることが大切なのでしょう。

怒りを感じた出来事があったら、なぜ怒りが出てきたのかをじっくり考えてみましょう。

これは子育てだけではなく、ビジネスにおいても重要な意味を持つポイントではないでしょうか?

ただ自分の心の内側をスキャンしてみるーー。内観は、その繰り返しだといいます。

そんな練習を1日5分ずつ繰り返していくうち、自分の真の感情に気づくのがうまくなっていくそう。すると、反射的に怒っていたような状態から、怒る前にひと呼吸置いて、ことばや行動を選べるようになっていくというのです。(80ページより)

心のザワザワがなくなる 比べない習慣

1,430円

今回ご紹介した子育てのことだけではなく、本書は全体的に見ても実践的。ただし、書かれていることのすべてをできるようになる必要はないと著者は記しています。

できることから、少しずつ試していけばいいということ。たしかに、そうやって段階的に進んでいけば、少しずつ穏やかな気持ちで生きていけるようになるかもしれません。

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Source: 日本実業出版社

Photo: 印南敦史