ビジネス環境を長くサバイバルするには「ノア効果」と「ヨセフ効果」の理解が重要

ビジネス環境を長くサバイバルするには「ノア効果」と「ヨセフ効果」の理解が重要

Inc.:1958年、ブノワ・マンデルブロという名の若い数学者が、IBMに研究員として雇用されます。彼は最初の任務で、一見簡単そうに見えるものの、実際はおそろしく複雑な問題に取り組みます。それは、通信回線のノイズがどのように発生するのかを調べ、ノイズを最小限に抑える方法を見つけるというものでした。

マンデルブロ氏が見つけた答えは、シンプルながらも、鋭い洞察にもとづいていました。彼は、1種類ではなく、2種類の効果が働いていることを発見したのです。1つは、彼が「ヨセフ効果」(ヨセフが7年間の豊作の後で7年間の飢饉が訪れると預言した、聖書の物語に由来する)と呼ぶもので、予測可能なものでした。もう1つは「ノア効果」と名付けられた、無秩序で予測不能なものです。

マンデルブロ氏はまもなく、この2つの効果が通信回線だけでなく、ナイル川の氾濫から、金融市場の崩壊にいたるまで、あらゆるところで働いており、私たちから未来を予測する力を奪っていることに気づきます。そして、さらに重要なのは、私たちもこうした効果を理解すれば、非常に不安定で複雑なビジネス環境を漕ぎ分け、長期に生き残れるということです。

Googleはヨセフ効果を理解してGmailを立ち上げた

2004年までに、Googleは検索市場を独占し、巨大な利益を上げていました。インターネット検索の90%をその手に握っていた同社は、200億ドル以上の時価総額で株式を公開します(当時は巨額でした)。ビジネスを開始してわずか5年で、Googleは誰にも止められない勢いを誇っていました。

しかし、同社はある問題に直面します。Googleで検索をした人々は、目当てのものが見つかると、すぐに離脱してしまうのです。ユーザーにとってはそれで何の問題もありませんが、Googleが収益を伸ばすためには、ユーザーに少しでも長くサイトに滞在してもらう必要がありました。さて、ここで問題です。Googleはどうすれば、核となる検索ビジネスを損なうことなく、ユーザーの滞在時間を伸ばせるでしょうか?

Googleはその答えとして、誰もが欲しがる破格の特典、1GBの保存容量をひっさげた新しいメールサービス「Gmail」をローンチします。1GBという容量は競合他社を上回るどころではありません。当時の市場リーダーだったHotmailやYahooが2MB〜4MBの保存容量で競っているところへ、Googleはその何百倍もの容量をいきなり提供して、ゲームを変えてしまったのです。

Googleが競合他社を一気に飛び越せたのは、ヨセフ効果をよく理解していたからです。ユーザーがまだ少数のうちは、1GBの保存容量を提供しても、それほどコストがかかりません。一方、競合他社はすでに莫大な数のユーザーを抱えており、全員に1GBの容量を提供するには、膨大なコストが必要となります。さらに、当時はストレージコストが急速に低下している最中で、Googleの幹部たちはユーザーベースが拡大するまでの間に、全ユーザーに1GBを提供しても問題ないくらいまでストレージコストが下がることを、かなりの確度で見通せたのです。

ヨセフ効果の予測可能な連続性を理解することで、Googleはクーデターを成し遂げました。

なぜMicrosoftとIBMは今日でも繁栄しているのか?

あらゆる企業のビジネスは、本質的に、丸穴に角釘を打ってしまう危険をはらんでいます。どれほど分析し、どれほど計画しても、戦略的意思決定というものは、本質的には「コイン投げ」とかわりません。いくら最善の努力をして選択肢を絞り込んでも、最後は一か八かの運試しなのです。

MicrosoftとIBMがたどってきた道を見れば、このことがよくわかります。どちらの企業も、何十年も(IBMは100年以上)生き残り、何度かの技術革新の大波に見舞われました。かつての競合他社のほとんどは衰退するか、完全に消えてしまいましたが、MicrosoftとIBMは現在でも利益率が高く、収益性の高いビジネスを維持しています。

当然ながら、どちらの企業もノア効果の不連続性の餌食になったことがあります。Microsoftは、モバイルを軽視し、非常に痛い目に遭いました。IBMは、企業内システムからクラウドへの移行に乗り遅れ、収益を落としました。つまり最終的には、いかなるビジネスモデルも機能しなくなる時がやってくるということです。

それでもMicrosoftとIBMは現在、新しいテクノロジー分野において成功を収めています。Microsoftのクラウドビジネスは年間100%成長しており、IBMは人工知能や量子コンピューティングにおいて、リーダー的な位置を占めています。

MicrosoftとIBMが長期にわたって競争力を維持できたのは、ノア効果の予測不能な不連続性を理解していたおかげなのです。

Googleはいかにノア効果に対処しようとしているのか

上で説明したとおり、Googleはヨセフ効果のマスターです。20年近くにわたり、同社は検索ビジネスを独占し、その地位を活かしてYouTubeやAndroidといった巨大なビジネスを構築してきました。またGoogleは、EBITDAが300億ドルを超え、成長率が20%を超える非常に高収益な企業でもあります。

とはいえ、検索事業における成功が同社のアキレス腱にもなっています。Googleは収益の90%以上を、検索関連の広告事業から得ています。いずれは、テクノロジーの巨人としての先達である、IBMやMicrosoftと同じ問題に直面することになるでしょう。検索から収益があげられなくなったとき、Googleはどうなるのでしょうか?

明らかに、Googleはこのことを理解しており、ノア効果に対処しようとしています。同社は定期的に、30余名のトップ研究者を招き、世界最高のテクノロジーとデータセットを提供することで、Googleでサバティカルを過ごしてもらうようにしています。また、X部門やVerilyのような新しい組織体制を構築し、検索事業とは直接関係のないチャンスを探っています。

こうした試みのいずれも、今のところ利益はほとんど出ていません。ヨセフ効果の観点から見れば、不合理なことのように思えます。しかし、ノア効果の視点でみるなら、嵐が来る前に方舟をつくっておくことは理にかなっています。

寄り道をしている人がみな迷子とはかぎらない

1993年、IBMは今ではよく知られている、量子テレポーテーションの実験を成功させます。科学的には、これは大きな勝利であり、アインシュタインが残した最後の理論が間違っていることを実証するものでした。しかし、企業としてのIBMにとっては何の利益ももたらさず、おまけに当時、同社は倒産しかかっていました。多くの人が、IBMは過去の遺物だと考えていて、この科学実験の成功も、そうした認識を変えるものではなかったのです。

しかし、今日になって、科学実験は報われ始めています。ムーアの法則が理論的な限界に近づいている現在、ヨセフ効果の予測可能性が、ノア効果の不連続性に道を譲ろうとしているのです。昨今、新しいコンピューター・アーキテクチャの必要性が、急激に高まっています。IBMが17量子ビットの量子コンピューターを発表したのを見ると、当時の科学実験が実は賢明な賭けだったように思えます。

そして、これはすべてのビジネスが直面するジレンマでもあります。私たちは消費者と投資家の両方から、ヨセフ効果にどのように対処できるかをジャッジされます。私たちは、消費者が何を、どのくらい欲しているかを正確に予測し、それを供給しなければなりません。間違えれば、大きな代償を支払います。

とはいえ、長期的に見れば、いずれはノア効果が支配的になり、予測不能性に対処しなければならない時がやってきます。結局のところ、未来予測よりも、未知への探求のほうが重要性は高いと言えます。次の大洪水が、いつどのようにやって来るのかは予測ができませんが、やってくることは間違いないのです。

This Simple Mathematical Rule Can Help Your Business Survive for the Long Term|Inc.

Image: wawritto/Shutterstock.com

Reference: Wikipedia

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