「俺の作った虹を渡れ!」などベタすぎて逆に衝撃的な台詞の数々、眼帯秘書といった奇抜すぎるキャラクター・・・と、どこまでが狙いなのか分からない設定とテンションで、毎回始まると同時にSNSのタイムラインをざわつかせているドラマ『M 愛すべき人がいて』(テレビ朝日系)。

原作となったのは、歌姫・浜崎あゆみの半生をもとにした、小松成美の小説。さえない女の子だったアユが、野心的な音楽プロデューサーのマックス・マサと出会い、二人三脚でトップスターへとのぼりつめていくシンデレラストーリーだ。

そんな同ドラマのアユ役で一躍脚光をあびているのが、令和元日にデビューした歌手の安斉かれん。エイベックスの1990年代ヒット曲のリバイバル・アルバムにも参加するなど、ホットなトピックスが満載の安斉に今回、話題沸騰の同ドラマについてオンライン取材で話を訊いた。

取材・文/田辺ユウキ

「いろんな声が届いてるけど、ヘコむことは全然ない」

──『人生は戦場だ』など、これまでリリースした4曲はすべて安斉さんが作詞を担当されていますが、どれもハードモードな人生模様を綴っていらっしゃいますね。『M』でアユ役を演じているのも、必然であるような歌詞内容です。

16歳くらいのときに書いたものが多いのですが、あの頃って芸能の仕事をやっていることを誰にも言っていなかったし、周囲に対して「私のことを何も知らないのに・・・」と考えてしまってました。みんなが遊んでいるなかで自分はレッスンばかり・・・。この仕事を辞めたいって何度も思っていました。今、思えば、自分が選んだ道なので、私が甘えているだけなんですが・・・。

──今はそういう気持ちは軽くなりましたか。

いろいろ吹っ切れたかも! 当時は将来がまったく見えなかったから。デビューできるなんて全然思っていなくて、「私は何のために、何をしているんだ」って感じだったので。

──1stシングルの『世界の全て敵に感じて孤独さえ愛していた』には、「周りの人が羨ましく見えて」「人の評価に怯えていた」といった詞も書かれていますね 。

周りの顔色をうかがって生きていたんですよね。歌をやっていると言ったらバカにされるんだろうな、とか。今は「もうちょっと、ちゃんと考えた方がいいかな」って。ホント何も考えてなさすぎるくらいだから。逆にどうしようって感じ(笑)。

──それこそ現在は『M』で人の評価をたくさん受けている時期ですよね。賛否両論・・・というか、みんながとにかく好き勝手なことを言える物語内容ですけど!

うん、いろんな反響が届いています。私も、自分へのコメントは全部見ています。SNSで直接コメントをしてくれる人たちは優しいですが、厳しい意見も、きちんと受け止めないとなと思います。

──全部ですか(笑)。

でも、いろんな評価をしていただいているので、それらを自分のなかで吸収して、もっと頑張ろうという気持ちになっています。プラスの意見もあるなら、マイナスの意見もあるのは当たり前。っていうか、それでヘコむことは全然ないんで。

「お芝居は初めてだけど、すごく楽しい!」

──「1980年代の大映ドラマを意識しているのではないか」とか、「『スチュワーデス物語』みたい」との声もあがっていますけど、監督たちとは事前にそんな話はしました?

あ、それはないですね。少なくとも私のもとにはそういうお話はなかったです。実は、大映ドラマという言葉も最近初めて知ったくらい(笑)。でも、かつての時代のリバイバルがひとつのモチーフにもなっているし、いろんな世代の要素がミックスされていて、おもしろいですよね。

──アユはニューヨークでの武者修行、オーディションでのサバイバルマラソンなど、さまざまな難関を経て成長を遂げていきます。芝居するうえでも、回を追うごとにアユの変化をどう表現するかが重要になってきます。

序盤はとにかく、福岡から上京したばかりの初々しさを意識していました。自分のなかでアユの成長過程をイメージして、『このときはこういうお芝居をやってみよう』と試行錯誤しています。お芝居は初めてですけど、すごく楽しい!

──そうなんですね! 音楽とは違う楽しさがありますか。

音楽は自分の内面を自分自身で表現するものだけど、お芝居は何者かになりきって、その人物として気持ちを表現するから。難しいけど毎日が勉強です。これから絶対、お芝居の経験が歌にも生きてくるはずなので。

──マックス・マサと初対面するシーンで、マサから「なんで俺を睨むんだ」と詰められて、アユが「あなた神様ですか」と食ってかかる。業界人の考え方や態度に対する感情がむき出しになるところですけど、あの場面での安斉さんの目つき、口調が印象に残っています。

実際に私も「何だ、この人は」と不信感を持つような大人と出会ったこともあります。でも、自分も物事を知らなさすぎたところもあったし、いろんな経験を重ねて周りが少しずつ見えるようになってからは、どんな態度をとられても、まずは相手を理解しようとすることを心がけています。あと私は、言いたいことがあっても、言葉に出さずにため込むタイプなんです。アユのように食ってかかることはないですね。

──あのシーンで、アユは「いま自分がやっていることに、自分がワクワクしていない」と言い、その満たされなさが、原動力になっていますよね。

逆に人生ですべて満たされるってことってあるのかな? 私は今までも、そしてこれからもないと思う。最高潮という瞬間はなかなか来ない気がします。

ポスギャル・安斉かれんが思う「ギャル」

──話のモデルである浜崎あゆみさんは「平成の歌姫」へのぼりつめ、ギャルたちのあいだで「カリスマ」として存在感を放つように。安斉さんも次世代型ギャル「ポスギャル(ポストミレニアルギャル)」と称されていますが、ギャルとは?

ギャルとは、かぁ・・・マインドかな?

──「ギャルのマインド」というのは、どういうものですか。

うーん、分からない(笑)! だけど、具体的じゃないものがギャルなんです。「うちらギャルっしょ」と言っちゃえばギャルだし、ギャルに根拠はないんじゃないかな。

私は、自分でそこまでギャル感はないと思っていたんです。それでも小学生のときから当時流行っていたギャル系の雑貨が好きだったし、つけまつ毛とかつけていました。好きになるものに理由はないし、やっぱりマインドなんです。ただギャルは、自分が好きなものをとことん貫いているイメージはあります。

──でも、聴いていた音楽はギャルっぽくなかったんですよね。これまでのインタビュー記事を読んだら、初めて行ったライブがローリング・ストーンズだったという。確かにギターのキース・リチャーズは、ファッションがギャルっぽいですけど 。

アハハハ(笑)、ウケる!

──そのお返事、まさにギャルですね! ちなみにストーンズはお父さまの影響だそうですが、日常的にそのあたりの音楽を聴いていたんですか。

そうですね。お父さんが車で曲をよく流していました。ローリング・ストーンズや、ハノイ・ロックスとか。当時は自分もそういう曲ばかり歌っていました。だから今、『avex revival trax』で1990年代のエイベックスの曲を歌っていますが、まわりの大人の人たちは懐かしいと言うけど、私のなかではすごく新しい感覚です。

「今後、強烈なキャラクターもどんどん登場します」

──そのアルバムでは、MAXIMIZORの楽曲をもとにした『CAN’T STOP THIS』、m-flo『come again』の2曲を歌っていらっしゃいますが、どちらも未来について歌われている曲。先ほど、かつての自分について「将来が見えなかった」という話もありましたが。

今も未来のことは何も考えないです。というか、考えないようにしています。だって「何歳になったらこうなりたい」とか、そんな生き方をしていたら焦るじゃないですか。今後のことを考えすぎると病んじゃうし(笑)。目の前にあるものをとにかく頑張りたいから。

──つまり、今は『M』でのアユ役ということですね。

マサ役の三浦翔平さんも、「こうした方が良いんじゃないか」と真剣に演技を教えてくださり、それは今後の活動に必ず生かせるものなんです。あと自分で映像を何度も見直すようにしているのですが、目線の配り方やどう映っているかの意識など、足りていない部分が多い。アユをどう見せるか、とにかく必死なんです。これから回が進むにつれて、さらに強烈なキャラクターもどんどん登場するので。

──えっ、田中みな実さんや水野美紀さんだけでも十分強烈ですけど、まだまだ出てくるんですね! ちなみに安斉さんは、自分の持ち味はどういうものだと感じていらっしゃいますか。

良くも悪くも笑ってごまかせるところですね。「何とかなるでしょ、笑っておけば」という気持ちで乗り越えていくようにしています。今後はそうもいかないことが増えていくはずですが、ドラマのなかのアユと同じように、自分も成長していきたいです。

ドラマ『M 愛すべき人がいて』は毎週土曜・夜11時15分から。第4話は近日放送予定。