マクドナルドが元気です。1店舗当たりの売上高は過去最高を更新、業界2位のモスバーガーを大きく引き離し、過去最高益を記録しています。その絶好調の秘密はどこにあるのでしょうか?株式アナリストとして個別銘柄・市況の分析を行う馬渕磨理子さんが、日本マクドナルドの決算情報をもとに財務分析を行っていきます。

プロフィール:馬渕 磨理子(まぶち・まりこ)
京都大学公共政策大学院、修士過程を修了。アベノミクスが立ち上がった時期に法人でトレーダーの経験を経て、フィスコ企業リサーチレポーターとして、個別銘柄の分析を行う。認定テクニカルアナリスト(CMTA®)。全国各地で登壇、日経CNBC出演、プレジデント、SPA!など多数メディア掲載の実績を持つ。また、ベンチャー企業でマーケティング・未上場企業のアナリスト業務を担当する、パラレルキャリア。大学時代は、国際政治学を専攻し、ミス同志社を受賞している。
Twitter https://twitter.com/marikomabuchi

絶好調、過去最高益のマクドナルド

今回取り上げるのは、日本マクドナルド<2702>の財務分析です。

マクドナルドといえば、少し前までは不祥事や大規模な店舗閉鎖など、“不調”のイメージが強い企業だったのではないでしょうか。

2014年7月に、中国の工場で期限切れの鶏肉の使用問題が発覚し、信頼を大きく失った日本マクドナルド。事実、2014年、2015年は営業損失赤字に転落し、14年〜15年の損失は567億円となりました。食肉問題と異物混入からどん底に落ちてしまったのです。

そんなマクドナルドですが、ここから劇的な復活劇を遂げます。 その後たった2年で黒字化に成功。2019年12月には営業利益250億円を計上するまでにV字回復しているのです。どのようにして、マクドナルドはこのV字回復を成功させたのでしょうか。

マクドナルドの快進撃が続いている

2019年12月期業績は、売上高2817億円(前期比3.5%増)、営業利益280億円(前期比11.9%増)。2020年12月期通期の営業利益は290億円の見通しです。バーガーやサイドメニューを低価格で提供する「おてごろマック」や秋の定番商品「月見バーガー」シリーズ、などが堅調に伸びています。

現在、業績が好調なマクドナルドですが、5年前は目も当てられない状態でした。下記のデータを見れば、業績が回復していることが一目でわかるはずです。

マクドナルド まぐまぐ様 馬渕磨理子

【マクドナルドの売上高推移】

2012年…2947億円
2015年…1894億円
2019年…2817億円

【マクドナルドの営業利益推移】

2012年…247億円
2015年…−234億円(赤字)
2019年…280億円

【マクドナルドの純利益】

2012年…128億円
2015年…−349億円(赤字)
2019年…168億円

業績回復の第一歩は、既存店舗に目を向けること

業績回復に至った経緯は、新規出店の店舗数を減らし、既存店舗の回復に舵を切ったことが挙げられます。最大で3800店舗以上あった時から、現在は約2900店舗になっています。約1000件もの店舗を減らす決断。外食チェーン業界は新規出店を行いながら規模を拡大していきますので、この店舗削減の決断を行ったのは、苦渋の決断だったと言えるでしょう。

では、なぜ店舗数を大幅に減らしたのでしょうか?その狙いは既存店舗と向き合うことで、顧客の声に耳を傾けることでした。

マクドナルドの社長兼CEOであるカサノバ氏が赤字転落の当時、就任直後から47都道府県の店を一軒一軒回り、顧客である主婦の声を中心に徹底的に聞いた話は有名な話です。そこからたくさんの気づきを得たといいます。

マクドナルドはハンバーガーを販売するお店にもかかわらず、ハンバーガーのおいしさのアピールができていなかった。また、3800店以上あった店舗も小さい店舗が多くてメニューも限定されたものでした。その反省点から以下のことを意識するようにしたと言います。

・食の安全を伝える
・マクドナルドの「おいしさ」を伝える
・店舗数をきれい・モダンに改装
・顧客に楽しんでもらう

この基盤をしっかりと整えることに集中した結果、たった2年で黒字化に成功しました。

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 気づきからの改善

2015年以降、店舗を“モダン化”する計画を打ち出して推し進めてきたマクドナルド。改装は顧客に対してのイメージアップにつながります。消費者に商品の安全性を印象付け、今までとは変わったことをアピールするには、店舗改装は効果的でした。客足と信頼関係も戻り、業績が好転。その後は、顧客から商品名を募集する「名前募集バーガー」の企画を打ち出し、2日で100万件の応募があったほどの大人気となりました。また、ポケモンGOとのコラボにより来店者数を増加させるなど、顧客を巻き込みながら、楽しいマクドナルドの復活となったのです。

過去最高益の営業利益を達成

マクドナルドは2月13日、2020年12月期の営業利益の見通しを290億円と発表しました。11年12月期以来の9年ぶりの営業最高益の予想になります。配当も2019年12月期の期末配を3円増配し、33円にすることも発表しています。また、2011年は店舗数が3298で、1店舗平均の売上高が約1.6億円でしたが、直近は1店舗平均が約1.9億円と1店舗あたりの収益力も高まっているのです。

さらに、最近の施策としては、顧客のニーズに寄り添った快適な店舗体験を提供する「未来型店舗体験」の導入があります。

・「おもてなしリーダー」の配置
 接客に特化した従業員が来店から退店するまでのおもてなしを専門に行うサービス
・「テーブルデリバリー」
 注文カウンターで支払いが終了した後、商品を席まで届けてくれるサービス

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そして、マクドナルドが次に目指すもの

2019年12月期の決算説明会で、代表取締役社長兼CEO日色 保氏は今後の強化ポイントはデリバリーだと述べました。

「デリバリー分野はまだまだ成長可能性のある分野でここを拡大させる」
「現在は自社のデリバリーとウーバーイーツーへの外部委託を行っているが、この部分の拡大を進めていくことで、自宅・オフィスなどの需要も積極的に取り込んでいく」(日色保氏)

などと述べています。また。マクドナルドは、スマホアプリを使って注文・決済ができる「モバイルオーダー」を2020年1月末に全国展開を完了しています。「モバイルオーダー」は来店前にスマートフォンのアプリで商品のご注文を完了することができ、来店時にできたての商品をピックアップできます。注文の際にゆっくりと時間をかけてバーガーを選べる、店舗での注文の列に並ばずスピーディに商品を受け取れるなど利便性に優れた満足度の高いサービスです。

前述の「テーブルデリバリー」と「モバイルオーダー」を合わせて利用すれば、快適な時間を店舗で過ごすことができます。

今期はこれらの“便利機能”を使う顧客の増加から、マクドナルドへの客足がさらに伸びそうです。店舗の改装により空間を充実させつつ、快適に空間を過ごすサービスを続けてきているマクドナルドの1店舗当たりの売上高が高まってきているのは納得です。スマートフォンによる事前注文は顧客の満足度を高めるだけでなく、商品販売の回転率を高めることができ、店舗の収益力のアップに繋がります。

2020年は「お手軽、マクドナルド」

外食店を取り巻く環境は厳しさを増しています。増税による消費者の節約志向の強まりや、コンビニエンスストアなど中食勢との競争激化、人材不足など、成長を阻害する要因は多いです。

しかし、マクドナルドは、「低価格で美味しい」を目指し続けています。スケールメリットを生かして、お得感を演出できるのは、マクドナルドならではでしょう。

「コーヒーだけでも、お気軽に。」

100円コーヒーのみの注文も歓迎するスタンスを打ち出しています。このメッセージはまさに、お得感を演出しています。CMでは俳優の木村拓哉さんを起用しており、インパクトが非常に大きいです。2020年もマクドナルドは、「お手軽感」を印象付け、来店頻度を高めるスタンスを貫くでしょう。

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マクドナルドを待ち受ける試練

業績拡大が続いている一方で、成長のハードルが高くなっている面があります。

純利益では
2018年 219億円(前年比 −21億円)
2019年 168億円(前年比 −123億円)
2020年 182億円(前年比 14億円)※予想

と純利益ベースでは伸びが鈍化している点は懸念点として挙げられますが、売上、営業利益は堅調に推移しているため、ここは見守りたいところです。

また、新型コロナウイルスの影響で、客足が鈍化する懸念がありますが、マクドナルドが3月5日発表した2月の既存店売上高は前年同月比14.7%増となっています。「ごはんバーガー」など期間限定商品が好調でした。3月はある程度、影響を受ける可能はあるものの、デリバリーに力を入れていることから、コロナに負けずに健闘を期待したいところです。

image by: 著者提供

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