産経新聞が一面で黒字に白抜きに「香港は死んだ」と書いたように、去る6月30日、中国の習近平国家主席が「香港国家安全維持法」に署名したことで、香港は事実上「中国の一部」に組み込まれました。それでは今後、自由金融都市だった香港の「後釜」となるのは何処の国なのでしょうか? コンサルタントの今市太郎さんは自身のメルマガ『今市太郎の戦略的FX投資』で、日本の金融関係者が「これは日本にチャンス到来」と口にするのを聞き、大いに疑問を感じたそうです。日本や東京が世界の金融センターになれぬ根本的な理由とは?

国家安全法施行・即日発効で大量に資金が逃げ出す香港市場。日本は取って代われるのか

6月30日、市場の事前予想通り、中国の習近平国家主席は「香港国家安全維持法」に署名し即日発効となったことから、事実上これまで維持されてきた「1国2制度」は完全に廃止となり、香港は返還記念日となる7月1日に中国の一部となることが確定しました。

これで香港の金融市場から大量の資金が逃げ出すであろことは間違いなさそうで、当面は中国政府の力でなんとか維持されるであろう香港市場ですが、大きく様変わりすることは確実な状況になってきています。香港では大規模なデモが行われ始めて居るようですが、猛烈な規制がかかるのは時間の問題で、もはやこれまでの自由金融都市香港は完全に消滅しようとしています。

こうなると、アジア圏ではもっとも大きな市場である本邦のマーケットが、香港にとって代わることが非常に期待されるわけです。しかし、国内の金融関係者が我田引水のように、日本の金融市場がアジアの拠点として機能するであろうことを口にするのとは裏腹に、世界的に見ても凋落ぶりの激しい日本が、そうした役割を本当に果たすことができる可能性は極めて低いという見方も強まっており、非常に微妙な状況です。

日本の国政雇用総力ランキングは30位で韓国より下

折しも興味深い調査結果が発表されたのが、スイスの有力ビジネススクールIMDが開示した2019年の世界競争力ランキングです。

これによりますと、1位はシンガポールで、2位が今回問題となっている香港、そして3位が米国で、日本は昨年よりもその順位をさらに5つ下げ30位と全く振るわない状況です。

これは企業の生産性の低さや経済成長の鈍化などが起因しているもので、アジアの中でもその地盤沈下は著しいものがあります。これを見る限り、日本がアジア圏で香港を肩代わりするような金融市場の中心になるなどということは、ほぼあり得ず、全くの幻想であることがよく見えてきます。

既に終了している国会で、政府は「香港を含め専門的、技術的分野の外国人材を受け入れてきており、引き続き積極的に推進する」としていますが、せいぜい実施するのはビザの短期免除やオフィスの提供、税務アドバイスの提供程度で、より本質的な金融センターを確立するという動きは見られない状況です。

東証は祝日でも取引ができるようにするようですが、そんな小手先の話で香港のリプレイスメント先になるとはまったく思えないのが正直なところです。

東京が金融センターになるのは夢のまた夢

東京お台場を世界有数の金融センターにするという話は、かなり昔からでていたわけですが、実際にはなにも進展していませんし、この国は岩盤規制を取り除いて新たな枠組みでビジネスができる特区のような構想となると、加計学園のケースのように特定の人間に国の資金が提供されるといった実に不可解なものに過ぎません。

新型コロナの対策一つとってみても、一体何をやらかしているのか全く判りませんし、給付金を支給するとなると、役人と民間企業が税金を食い物にする姿だけが鮮明になっており、洗練された生産性の高い国とは全くかけ離れた現状は目を覆うばかりの状況です。

こうした国内の現状は、海外の金融資本やファンドがもっとも正確に認識しているもので、当面は香港マネーは米国とシンガポールに殆ど回帰するであろうことが予想されます。

本来ならば本邦勢にとっては絶好のチャンスになるはずのアジアの金融中心地ですが、それはとんだ幻想として終わることになるのではないでしょうか。

こういう話がでてくると、日本の出番とばかり腕まくりして張り切る日本の金融市場参加者が多いわけですが、国内の現状はまったくそんなものではないことをより正確に認識する必要がありそうです。もちろん夢見るのは勝手ですが、まったくかなわないものだと、もっと冷静に考えなくてはなりません。

また金融資本主義というものが既にかなり終焉段階に入ってきている現状では、アジアの金融エピセンターを目指すこと自体も大きな問題なのかもしれません。

恐らく、気がつくとかなりの部分をシンガポールが引き受けることで決着がつくのだろうと想像するところです。もはや日本は「何をやってもダメ」モードが満開の状況です。

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