世界中のあらゆる価値観や常識を覆してしまったと言っても過言ではない、新型コロナウイルスによる感染症の拡大。そんな世の中において今後、私たちが幸福に生きてゆくためには、何を大切にすべきなのでしょうか。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、その答えを提示しています。

新型コロナ禍で日本は〇〇〇〇主義に変化する

緊急事態宣言は解除されましたが、新型コロナウイルス感染者は、毎日毎日増えつづけています。経済のことを考えると、よほどのことがないかぎり、「また緊急事態宣言」とはいかないでしょう。新型コロナウイルスに感染しないよう気をつけながら、長期戦がつづいていきます。

現時点で950万人の感染者、48万6,000人の死者を出し、世界経済に壊滅的打撃を与えているパンデミック。しかし、物事には両面があります。悪いことが99%だとしても、1%ぐらいは「いいこと」もある。今日は、そんなお話をしましょう。

日本人が不幸な理由

日本人は、世界一勤勉で、正直で、優しい。モスクワに28年住み、いろいろな国をまわった私は、そう感じています。しかし、国連の世界幸福度ランキングで日本は2020年度、62位。ずいぶん低い。なぜ、そうなのでしょうか?私は、「会社教が死んだのに、制度が会社教当時のままだから」と分析しました。どういうことでしょうか?

日本は戦前、「神の国」ということでやってきた。しかし、その神話は敗戦によって崩壊。戦後は、「会社教」で発展しました。会社教の本質はなんでしょうか?会社は、社員に二つの「現世利益」を保証します。一つは、終身雇用。一回ある会社に入れば、首になる心配はないのです。二つ目は、年功序列。年と共に、収入も会社内の地位も上がっていく。どうですか、皆さん?今考えると、天国のような仕組みですね。

もちろん、社員にも見返りが期待されます。一つは、会社への忠誠心です。二つ目は、早朝から深夜まで働くことです。このギブ アンド テイク が会社教を支えていました。

ところが1990年代初めにバブルが崩壊。会社は、二つの現世利益を守ることができなくなった。終身雇用が維持できなくなった。つまり、リストラが日常茶飯事になった。年功序列がなくなった。長年会社にいても、給料が上がるか、出世できるか、まったくわからない。会社員は、会社に裏切られたのです。当然、彼らは、愛社精神を無くしました。

「苦しくなったらリストラするけど、会社に忠誠を尽くせ!」

こういわれて

「はい!会社のために命を捨てる覚悟です!」

そんな人がいたら、かなり変でしょう。こうして、会社員はアイデンティティークライシスに陥りました。さらにひどいことに、労働形態は、相変わらず長時間労働なのです。「終身雇用」「年功序列」という見返りがないのに、長時間労働を強制される。これは、不幸です。

日本人が不幸な原因は、「会社教が死んだのに、制度が会社教当時のままだから」と私がいうのは、そういうことです。

日本の新しい「中心的価値」とは?

私は、「日本が復活するためには、価値観の大転換が必要だ」と思いました。どんな価値観?日本の中心的価値観は、

江戸時代 = 幕府 明治時代〜第2次大戦終了まで = 天皇陛下 戦後 = 会社

できました。他に中心的価値になりそうなのは、「個人」と「家族」です。個人を中心的価値に据えると、日本国として困ったことが起こります。個人主義は、個人の権利や自由を一番上に置きます。個人個人は、自分の幸せを(もちろん法律に反しない範囲で)追求していく。すると、結婚したり、子供を産み育てる意欲がなくなる人が多くなる。なぜでしょうか?

個人主義的視点で見ると、子育てはものすごくお金がかかるし、自分の自由も制限される。もちろん、子供がいる人は、大きな喜びがあることを知っています。しかし、冷静に計算して、「一人で暮らした方が、好きなことができるし、お金も貯められる」などと考える人がでてくる。それでも、別にいいのです。個人の自由ですから。

しかし、国策として「個人主義」を推進すると、国が衰退します。それで、会社教に代わる日本の中心的価値は、「家族にするべきだ」と確信したのです。日本の新しい中心的価値。私は、【 家族大切主義 】と名づけました。そして、日本が幸せと繁栄を取り戻すためのトータル政策案を本にして出版しました。『日本の生き筋 家族大切主義が日本を救う』といいます。これは、抽象的な本ではなく、少子化問題、地方衰退、過労死、過労自殺、いじめ、孤独死、未婚、晩婚など、日本の諸問題を【根本的に解決する方法】を記した具体的本です。

新型コロナ禍で変わる日本

パンデミックの前にも、日本には変化の兆しがありました。たとえば、「働き方改革」。「働き方改革法」は、ひどい悪法ですが、いい変化もありました。政府が大騒ぎしたおかげで、「働き方改革」が大流行した。たくさんの会社、役所で、労働時間が減少しました。

そして、新型コロナ禍で、さらに状況が変わりました。強制的に「テレワーク」が普及したのです。テレワークは、すばらしい仕組みです。これで、通勤時間往復2時間が浮く。この時間を家族のために使うことができる。緊急事態宣言の最中でも、食料品の買い出しにはいきます。それで、気がついたことがありました。昼間からお父さんが、子供と公園で遊んでいる。カップル(たぶん夫婦)が、平日の昼間から手をつないで散歩している。

カルビーの英断

TBS NEWS 6月25日に、「カルビーの英断」に関する情報がありました。

コロナをきっかけに変わる働き方。カルビーは、来月からテレワークを無期限で延長し、単身赴任もなくします。

つまり、新型コロナ禍が終わっても労働形態をパンデミック前には戻さないと。もう少し詳しく。

カルビーは来月以降、オフィスで働くおよそ800人の働き方を原則として、「出社勤務」から「テレワーク」に変更します。これに伴い、業務に支障がないと認められた場合は、単身赴任をやめて家族と同居できるようになるということです。また、通勤の定期代の支給をやめて、出社する場合は交通費を実費で支給します。
(同上)

変わるのは、

出社する必要がなくなる。テレワークが常態になる 単身赴任がなくなる。家族と同居できるようになる 定期代の支給をやめる。交通費は実費で支給

これからカルビー社員のうち800人は、ほとんど出社せずに、自宅で働くことになります。夫婦、親子は、顔を合わせる時間が長くなる。夫婦は、家事、子育てを共同でこなし、負担、ストレスが減るでしょう。通勤往復2時間が自由になることで、睡眠時間も伸びるかもしれない(日本人の睡眠時間は、世界一短い)。夫婦、親子の会話が増え、家族円満になっていくかもしれません。

重要なのは、カルビーがなぜこの決断をしたかです。

社員のアンケートで「コロナ感染症の拡大前の働き方を変えたい」と答えた人が回答者の6割に上るなど、社員の意識が変化したということです。
(同上)

つまり、パンデミックで「強制テレワーク」をしてみたら「そっちの方がよかった」ということです。日本は、パンデミックのおかげで、「家族大切主義」の方に向かうことでしょう。

経営者さん、幹部さんへのお願い

RPEの読者さんは、日本と世界を変えようとするスーパーエリートが多い。それで、経営者、起業家、会社幹部の方が、山ほどいます。そんな皆さんは、「新型コロナウイルスが収まってきたら、テレワークはやめて、勤務形態を元に戻そう」と考えておられるかもしれません。しかし、私は皆さんに、「できるかぎりテレワークをつづけてください」とお願いしたいです。なぜなら、それが「時代の流れ」だからです。

昭和、前半は「敗戦に向かった時代」でした。昭和、後半は「会社教で大復活した時代」でした。平成は2年目にバブルが崩壊して、「会社教が死んだ時代」でした。令和は2年目にパンデミックが起こり、「家族大切主義で大復活する時代」になります。それで、そっちの方向に沿っている会社は栄え、相変わらず昭和、平成の経営、働き方をやっている会社は、衰退していきます。

テレビをつけると、「日本は全然ダメだ。崩壊するしかない」と感じるかもしれません。しかし、日本は、着実にいい方向に変化しています。

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