米ジョンズ・ホプキンス大学によると、新型コロナウイルスの感染者数は1日の時点で、世界で1030万人を超え、死者数は50万に達しています。終息が見えない中、この先どうなってしまうのでしょうか。そんな新型コロナウイルスの次のフェースについて、新聞各紙がどう伝えたかをジャーナリストの内田誠さんが、自身のメルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』で解説します。

新聞各紙が取り上げた、新型コロナ問題「次」のフェーズ 【ラインナップ】

◆1面トップの見出しから……。
《朝日》…コロナ 新興・途上国で猛威
《読売》…養育費不払い解消 法整備
《毎日》…生死分けた居住地区
《東京》…マイバッグ 浸透なるか

◆解説面の見出しから……。
《朝日》…流行変遷 4月欧米 6月中南米
《読売》…感染者急増 緩和が招く
《毎日》…WHO三重苦
《東京》…無防備なフロリダ

【プロフィール】

新型コロナウイルス感染拡大は新しいフェーズに入ったということでしょうか。どんどんニュースの幅が広がっていくように感じられます。「次」を予感させるような記事を中心に、拾い上げていきます。

■3人の大統領と新型コロナ■《朝日》
■対外支援の目的■《読売》
■混乱のジンバブエ■《毎日》
■邦楽の危機■《東京》

3人の大統領と新型コロナ

【朝日】は1面トップと2面の解説記事「時時刻刻」に、新型コロナウイルス感染拡大の現状とこれからについての総論的な記事を配している。見出しから。

(1面)
コロナ 新興国・途上国で猛威
世界の死者50万人 感染者1000万人
新規感染の75%

(2面)
流行変遷
4月欧米
6月中南米
脆弱な医療 感染対策に壁

まず【セブンNEWS】の第1項目を再掲する。

感染者の累計が世界で1千万人を超え、死者も50万人を超えて、新型コロナウイルス感染拡大が止まらない。6月に入り、新興国・途上国の感染者累計が欧米先進国を上回り、現在、毎日の感染者新
規確認数の約75%が新興・途上国のものと、局面が転換した模様。

累計の感染者数で「新興国・途上国」が「先進国」(36カ国)を上回り、一日あたり約17万人の感染が確認されているうちの75%が「新興国・途上国」の事例だということ。

WHOのテドロス事務局長が「世界は新たな、危険な局面に入っている」と言う背景には、感染が拡大している国(中南米など)では大都市周辺にスラム街があり、貧困層が密集していること、医療体制も貧弱でマスク着用などの予防法も十分には伝わっていないこと、病院でさえ手洗い場が整備されていないような劣悪な衛生状態(インド)が放置されていること、さらに、6月に入ってからはレストランなどの営業が再開されて感染者増に拍車が掛かっていることがある。

2面には4月と6月の感染状況を示す世界地図が並べられていて、4月の欧米に代わって6月には中南米が感染の主役に躍り出たということがわかる。

●uttiiの眼

2面の世界地図の見方については、《朝日》の分析は不十分。確かに、累計の感染者数が目に見えて増大したのは中南米やインド、中東地域ということになるだろうし、「先進国」と「新興国・途上国」の分け方にも一定の有効性はある。だが、見過ごせないのは米国。感染者数は97万人から247万人と2.5倍以上に増え、最大の感染者と最大の死者を出しているのは他ならぬアメリカ合衆国だ。ロシアも感染者は8万人から62万人に増えていることを併せ考えれば、新しいフェーズの特徴として一番に挙げるべきは、南北アメリカとロシアでの感染拡大ではないのか。トランプのアメリカとボルソナロのブラジル、プーチンのロシアが制御不能に陥っているという面が重要なのであって。感染症に対する無理解を含む、思慮の足りない独裁的権力者が、このフェーズを生み出したとも言えるのではないだろうか。

対外支援の目的

【読売】は3面の社説で、途上国に対する援助を論じている。タイトルを以下に。

保健医療の強化に貢献したい

中南米やアフリカで新型コロナウイルス感染が拡大していることに対して、「国際社会が協力し、保健や医療の基盤が脆弱な国への支援を急ぎたい」というもの。

「途上国では大人数が狭い住居で暮らし、衛生環境が劣悪な地域が少なくない。外出を規制したものの、収束前に経済活動を再開した国もある。その日の生活を優先させざるを得ない状況が、感染拡大に拍車を掛けているのだろう」という。

既に政府は今年度の補正予算に840億円を計上し、約100カ国に対して救急車や画像診断装置などの供与を始めたという。

《読売》は、「米中両国の対立が深まる中で、日本は国際社会の協調を主導する役割が求められる」といい、途上国がワクチンを安価で入手できる仕組みをつくるべきだとして、既に途上国のワクチン接種を支援する国際機関「Gavi」に約3億ドルを拠出することを決めたと紹介。

●uttiiの眼

まあ、言われていることはもっともな話だが、途上国の場合は「大人数が狭い住居で暮らし、衛生環境が劣悪な地域が少なくない。外出を規制したものの、収束前に経済活動を再開した国もある。その日の生活を優先させざるを得ない状況が、感染拡大に拍車を掛けている」などと、「上から目線」で言われてみると、それらは何も途上国に限った話ではなく、むしろ今の日本の状況そのものではないかと、憎まれ口も叩きたくなる。どうも、この手の社説には「思慮深さ」が感じられない。

援助はとりあえず他国のために行うものだろうが、回り回って自国に返ってくるものでもある。感染症は、そのことが最も分かりやすい事例と言える。

混乱のジンバブエ

【毎日】は8面にアフリカのジンバブエについての記事。見出しから。

ジンバブエ インフレ785%
コロナ影響 混乱に拍車

ジンバブエは2008年に年率2億%を超えるハイパーインフレを経験していて、自国通貨も一時廃止したが、昨年6月に復活させていた。

もともと異常気象による農業不振で、19年にはマイナス成長に陥っていた同国。新型コロナウイルス感染者は28日現在567人で死者も7人と少ないが、ウイルス対応でロックダウン(都市封鎖)を行って経済活動を制限したため、年間の物価上昇率が785%となり市民はインフレに苦しみ、国連開発計画(UNDP)によれば、国民の6割が食糧不足で支援が必要な状態になると推計、GDPも10%マイナスになると見られている。この先、世界的な景気後退の波を受けてさらに大きな打撃を受ける可能性があるという。

●uttiiの眼

この国の状況は単純ではなく、リーマンショック時にハイパーインフレを経験していること、17年にムガベ前大統領による長期独裁政権が倒れたばかりであること、そして、自国通貨はやっと復活したが、既にインフレが起こっていて、新型コロナウイルスの対策でさらに危機的な状況に陥っている。また、コロナ対策を巡って閣僚の職権乱用疑惑が浮上、政治不信も高まっている。

邦楽の危機

【東京】は1面下の定番コラム「筆洗」を取り上げる。なんと、筆洗子は三味線を習って6年になるという。

永井愛さんの『鴎外の怪談』に登場する永井荷風は、いつも出掛けていく時に三味線を抱えているという。実際に華風の三味線は玄人はだしだったそうだ。その華風が東京の夏を美しくするものに数えた三味線の音が、この夏さらに、か細いものになりそうだという。

三味線最大手「東京和楽器」が8月で廃業する。

近年の需要低迷にコロナが追い打ちをかけ、4月5月、注文がゼロだったらしい。糸を押さえる勘所が違うと師匠にしょっちゅう叱られているという筆洗子、最後に「長く日本人を慰め、喜ばせてきた音を守れぬ世の中というのも、どこか勘所がずれている気がする」と憤っている。

●uttiiの眼

三味線がなければ邦楽は成立しない。長唄も端唄も、浄瑠璃も。したがって、歌舞伎でさえ、三味線なくしては成り立たない。この事態をなぜ放置できるのだろうか。文化行政などと呼べるようなものがあるならば、三味線職人はどんなことをしても護らなければならないはずだ。

image by: shutterstock

MAG2 NEWS