習近平の「国賓招待」で、日本が世界に発信する誤ったメッセージ

日本政府の強い抗議で、中国当局に拘束されていた北大教授が無事解放されましたが、この一件を日中関係好転の足がかりになると日本側が期待することは「危険」なようです。情報戦略アナリストの山岡鉄秀さんは今回、無料メルマガ『日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信』にその理由を記すとともに、人権侵害を続ける中国に日本政府が取るべき対応策を提示しています。

北大教授の解放は問題の解決を意味しない。日本政府が犯そうとしている致命的なミス

全世界のアメ通読者の皆様、山岡鉄秀です。

中国で拘束されていた岩谷將(いわたに のぶ)北海道大学教授が解放されてほっとしました。個人的に岩谷先生の講義を聞いて、ご挨拶したことがあるので、とても心配していました。

報道によると、今回は日本政府も「即時解放がなければ、習近平主席の国賓待遇が困難になる」と抗議したとのこと。

産経新聞(11月15日)によれば、10月に今回の拘束が発覚してから、安倍首相は「即位礼正殿の儀」に参列するために来日した王岐山国家副主席や、タイ・バンコク郊外で談した李克強首相に強く開放を求めた。

それが功を奏したのは良かったけれども、まだ少なくとも9人も原因不明のまま拘束されている日本人がいるそうですから、問題解決には程遠いと言わざるを得ません。この点は自民党の議員からも指摘があると報じられています。

しかし、安倍首相と日本政府には絶対に忘れて欲しくないことがあります。

今回、岩谷教授を無事に帰国させることができたから、これで習近平主席を国賓として招くことへの障害が無くなったと考えていたら大間違いです。

このままでは日本政府は世界にどんなメッセージを送ることになるでしょうか?

「日本政府は日本人学者の救出には努力したが、香港やウィグルのことはどうでもいい。弾圧している側の最高責任者を平気で笑顔で国賓待遇する。やはり、日本は人権問題に疎い、自己中心的な国だ」

こういう印象を全世界にばら撒くことになります。

アメリカもかつて習近平を国賓待遇しましたが、当時と今とでは情勢が全然違います。今やアメリカは明確に中国を敵認定しています。

国賓を呼んでから冷遇する、というような芸当が日本政府にできるとも思えません。

まさかとは思いますが、アメリカだけに頼ると危ないから、保険の為に中国とも適当にうまくやっておこう、と考えているのなら、おめでたいにも程があります。

中国は(中国だけではありませんが)弱い相手とは交渉しません。即時属国にすることしか興味ありません。アメリカとの同盟を恐れているだけなので、もしアメリカが覇権戦争に敗れることがあったら、日本は即終了です。すぐに今の香港のような状態になります。もっとも、日本人にはあのように戦うガッツはもう残されていないかもしれませんが。

ちょっと前の話ですが、映画監督の井筒和幸氏が「個別的自衛権だって必要ない。万が一他国が攻めてきたら国民は無抵抗で降伏し、すぐに首相や政治家が和平交渉に出るんです。九条が為政者にそう命じているんです。その方が被害は少ない」と言ったことが話題になりましたね(中日新聞2015年10月29日)。

だから、武力侵攻してくる国は弱者と交渉する気なんてさらさらないんですよ。在日韓国人の苛烈な生き方を描く監督がこの平和ボケですから、日本は最終的に憲法9条に殺されるのでしょうか。

香港ではいつ天安門事件が再現されるかわかりません。ウイグル人弾圧の残酷さも日々明らかになっています。

まだ拘束されている日本人が大勢いるのであれば、

「国民感情に鑑みれば、日本人拘束の問題が短期間に解決されず、また、香港の情勢も不透明であることから、来日はしばらく延期した方がよい」と申し入れた方がいいと思います。

このタイミングで習近平を国賓として招くような外交センスでは、命綱のアメリカにも愛想をつかされ、取り返しのつかない失敗になってしまう可能性があります。

子孫のためにこの国を残したければ、国民の側から危機感をどんどん政府に伝える必要があります。

( 山岡 鉄秀 :Twitter:https://twitter.com/jcn92977110 )

image by: 首相官邸

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