米中間の緊張がかつてないほど高まる中、21日に中国人民解放軍が発表したミュージックビデオ(MV)が話題となっています。台湾出身の評論家・黄文雄さんはメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で、その意図を「台湾に対する圧力」とし、これまで繰り返されてきた中国による台湾への卑劣な威嚇行為を列挙。さらに今回のMV製作から透けて見える「中国共産党の窮状」を暴露しています。

【中国】人民解放軍「文攻武嚇」PRのお粗末ぶり

● 中国軍がMV「きょう開戦したら」発表 台湾に圧力

9月21日、中国人民解放軍で台湾海峡などを管轄している東部戦区が、戦意高揚のためのミュージックビデオ(MV)を発表しました。「もし今日開戦したら(假如戦争今天爆発)」という歌にあわせて、解放軍兵士の訓練やミサイル発射などの場面が次々と展開されるMVです。

人民日報系の環球網のニュースから、このMVは見ることができます。

● 东部战区:假如战争今天爆发,这就是我们的回答!

「もし今日開戦したら」という歌は、現在つくられたのではなく、以前からありました。今回、東部戦区は新たなビデオを作成したのですが、それは台湾に対する圧力のためだとされています。以前のMVは以下で見ることができます。

中国は、台湾に対して、つねに武力と同時に言葉で脅しをかけてきました。このことを「文攻武嚇」といいます。言葉で攻撃し、武力で威嚇するという意味です。

1996年に台湾で最初の総統選挙が行われた際、李登輝に投票することは戦争を意味するというメッセージを込めて、台湾海峡に向けてミサイルを発射しました。その結果、アメリカは台湾海峡に2つの航空母艦群を投入し、中国の台湾侵攻に対してアメリカが介入する姿勢を明確に示したのでした。

その後も中国の台湾への恫喝は続きましたが、そうした中国の威嚇行為はすべて裏目に出ています。台湾人はますます中国と距離を取りたいと思うようになったからです。

2019年1月には、「台湾同胞に告げる書」40周年記念大会の講演で、習近平主席は台湾に対して「一国二制度」を受け入れるように求め、拒否するなら「武力統一を絶対に放棄しない」と脅迫しました。しかし蔡英文総統は、この演説に即座に反論、これにより、それまで過去最低だった支持率が急速に回復し、2020年1月の総統選挙で史上最高の得票率で再選されるに到ったのです。

今年の9月20日には、中国人民政治協商会議の汪洋主席が、「台湾には両岸の交流や協力を阻む者がいる」と述べたのに対して、台湾の大陸委員会は「北京側の『文攻武嚇』こそが台湾海峡の情勢のリスクを高める原因だ」と反論しました。

● 大陸委「北京の文攻武嚇こそ情勢悪化の原因」 中国高官に反論/台湾

台湾側の反論を証明するかのように、人民解放軍が「もし今日開戦したら」のMVを発表したわけです。

このMVのニュースは、もちろん台湾でも大きく報じられました。

● 不只實戰演習!共軍發表「假如戰爭今天爆發」宣傳片

「文攻」だけではありません。最近、台湾周辺では人民解放軍による演習が相次いでおり、また、中国軍の航空機が台湾の防空識別圏に連日侵入するなど、「武嚇」も活発化させています。そのため、台湾国防部は軍事動向を随時公表するページを公式サイトに設置しました。

● 国防部、軍事動向を随時公表するページを公式サイトに設置/台湾

このように、米中対立の激化、台湾の国際社会での存在感UPなどを受けて、文攻武嚇を激化させている中国ですが、その一方で、中国らしい、間抜けな事態も発覚しています。

中国空軍が制作した「戦神轟-6K,出!?」というPR動画では、中国のH-6K爆撃機がグアムのアメリカ空軍基地に似た目標を爆撃するシーンが挿入されていましたが、中国のネット民によって、そのミサイル爆発シーンには、アメリカのハリウッド映画の映像が使用されていることが発覚してしまったのです。

● 中国空軍、PR動画に米国映画のシーン挿入 SNSで「総攻撃」受ける

とはいえ、どんなに敵対しても、中国がアメリカから離れられないということを象徴している出来事でもあります。中国の技術もすべてアメリカをはじめとする西欧からパクったもので、何ひとつオリジナルがないことを暴露してしまったようなものです。習近平がいくら製造業の国内化「中国製造2025」をぶち上げて、自力更生を目指したところで、それが不可能であることを、中国軍自らが証明したわけです。

中国の2020年の国防費は前年比6.6%増でしたが、伸び率は30年ぶりの低さでした。世界的な新型コロナの蔓延により、中国経済も大きなダメージを受けています。しかも、一党独裁体制の中国では国内の人民を押さえつけるための治安維持費が軍事費以上にかかります。現在では軍事費は潤沢とはいえず、そのためにCG映像を自前でつくる予算をケチらざるをえないのかもしれません。そのために他国の映画からパクってきている可能性もあります。

ここ数年、中国では年金削減などに不満を抱いた退役軍人によるデモが続発しています。新型コロナ後には、これにさらに失業問題も重なってきます。人民の民意を反映させるシステムがない中国において、中国共産党がもっとも恐れるのは民衆の不満が爆発することです。アメリカとの軍事競争、それにともなう軍事費増大は、かつてソ連崩壊を招いただけに、中国としても警戒しているところでしょう。

「絶対無謬」の中国共産党としては、アメリカに対して虚勢を張りながらも、人民の不満を抑えなくてはならないという、ジレンマにあるといえるでしょう。今回の中国のMVやPR製作には、そのような窮状が透けて見えるようにも思います。

 

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