黄海上で行方不明となった韓国人公務員が北朝鮮軍により射殺されるという、にわかに信じがたい事件が発生しました。この件をめぐっては日本のメディアでも様々な報道がなされていますが、韓国ではどのように報じられ、国民はどう受け止めているのでしょうか。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では韓国在住歴30年を超える日本人著者が、情報が錯綜している現地の状況を伝えるとともに、事件の処理に関して浮上した、文在寅大統領の「別の問題」についても取り上げています。

黄海上で韓国の公務員A氏が北によって射殺

またまた韓国で想像を絶する事件がおこった。黄海上で、韓国の公務員A氏が漂流しているところを北朝鮮軍によって射殺されて遺体を油で燃やされるという事件が9月21日に起こった。黄海漁業管理団(公的団体)の8級公務員であったA氏は今月14日、499トン級漁業指導船「ムグンファ10号」の一等航海士として人事発令を受けた。その前は他の漁業指導船で3年間働いていた。ムグンファ10号は乗組員15人を乗せ今月16日に木浦(モクポ)の国家漁業指導船専用埠頭から出港し、10日間の日程で延坪島一帯でワタリガニ漁の漁船を相手に指導業務を行っていた。25日に帰港する予定だった同船舶は、2日遅い27日に木浦港に戻った。

いろいろのニュースが飛び交い、何が何だかわからない状況になっているが、筆者が思うに、観点はただの一つだ。このA氏が、越北(北朝鮮に行って北の人になる)したのかどうかというこの1点だ。A氏の家族(特に今前面に出てきているのが兄)は絶対に越北はないと言っている。しかし、A氏を発見した北の警備艇の人間は、A氏の身元を質す質問をしたときに「越北したい」という発言をしたことを確認していると主張しているし、南の軍関係者も、北とA氏とのやりとりを傍受していたと主張している。つまりA氏は越北しようとしていたということ。だから第一の発表のときに、A氏が越北した可能性もあるという発表をやったわけだ。だが、本当の情報が何かはまだまだ不明確な状況だ。北の言い分も南の軍の言い分も何も信じられない状況である。

そこでA氏のことになるが、彼の家族としては、A氏が越北したとなると、公務員年金という重大な恵沢がなくなってしまう。自国を捨てて北に亡命する人に対しては年金など払えるわけはないのは誰が考えても当然のこと。だから、というわけでもないが、A氏の家族としてはA氏の越北説だけは否定したいところだ。ここのところは、調べれば出てくるはずの内容だから、もう少し待てば、はっきりとした情報が出てくるものと筆者は見ている。A氏の越北問題が一番のポイントであり、次いで問題なのはA氏が越北しようとしていたことが事実なら、その越北者をなぜ北が射殺したのかという問題が浮上する。北の警備艇がA氏を発見し、質問してから6時間くらい経ってからもう一度警備艇がA氏に接近し射殺したものとされている。その間、A氏が海の上に浮いたままの状態だった。北に行こうとしていた人を、北がなぜに射殺までしたのか。A氏はただの公務員である。軍人ではなくて民間人である。民間人を軍が射殺するということは、両国の間で戦争に発展してもおかしくない事件だ。戦争は別にしても、民間人を軍が射殺するという行為は、人道的に許されない。北の責任が厳しく追及されていかねばならない。追求してゆけば、最後に行きつくのは金正恩の指示で射殺したということになる(はず)。なぜか。南の人に対して射殺命令を出せるのは、金正恩しかいないからだ。警備艇の艇長が出したと北の「謝罪文」にはあるようだが、これは言い逃れであって、絶対に金正恩が指示を出したのである。金正恩に責任が及ばないように未然に防波堤を作ってあるわけである。

この事件の処理に関して、文在寅(ムン・ジェイン)の「空白の数十時間」がまた別の問題になっている。大統領として素早く指示を出すべき時間帯に、雲隠れしていてその動線が今わかっていない状況だ。この問題はこれから野党らが厳しく追及していくものとみられる。セウォル号のときと180度違う対応をしているため、韓国民としては大いなる混乱を味わう状態となっている。文在寅はいつ「空白の数十時間」の説明をするのだろうか。

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