流通アナリストの渡辺広明氏が「ビジネスパーソンの視点」から発信する「最新流通論」の今回は「新商品」がテーマ。小売業にとって売り上げにつながる「ついで買い」を促進する新商品の背景を描いた。

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 小売業は、購買意欲を促し、「ついで買い」をしてもらうことにより、売り上げ最大化を目指します。そのためにはまず店頭に来てもらうことが重要となり、様々な施策を実施します。

 安売りでお客さまを誘引し、他の商品も買ってもらう戦略が最も一般的で、コンビニのおにぎりのセールなどもこれに当たります。また、コンビニの700円くじなどのキャンペーンもありますが、接客時間が伸びるようなキャンペーンは、このコロナ禍による緊急事態宣言中はもちろんですが、過度な安売りの誘客同様、しばらく展開することは難しいでょう。

 そんな中、小売業にとって唯一残る「ついで買い」の武器は新商品の展開です。ほとんどのカテゴリーの新商品は、火曜日に店頭に並びます。これはコンビニが火曜日を新商品の発売日に設定したためです。

 今でこそ、コンビニにはビジネス立地にも多数店舗がありますが。コンビニ創成期の40年前、コンビニは住宅立地が中心でした。住宅立地のコンビニは土日の売り上げが高いため、明けた月曜日には商品棚の空きができ、月曜の深夜から火曜早朝に新商品を導入するための売場を作りやすかったからと言われています。

 コンビニの新商品は毎週約100品、年間にすると5000品前後発売になります。食品系の新商品は2週間ほどで売り上げにより、生き残れるかハッキリします。コンビニでは3000―3500品の品揃えが1年で7割程度入れ替わることを考えると、いかに生存率が低いかが分かります。

 各メーカーの新商品での秋ラインナップはそろそろ小売業のバイヤーにプレゼンする時期ですが、新商品発表会や商談が伸び、披露の機会が失われているようです。コロナ禍の影響で経済が停滞していることもあり、来春の新商品に関しては発売にも影響が出始めているようです。新商品を発売する体力のない企業も出てくると言われています。

 世界の国でも、新商品の発売数が最も多いのが日本ということは流通業界では定説となっています。火曜日にたくさんの新商品が発売されることは、日本経済の豊かさの象徴。3密は意識しつつも、新商品に限らずですが、買って経済を回していくのが、いま我々ができることなのかもしれません。

◆渡辺広明 マーケティングアナリスト。1967年生まれ、静岡県浜松市出身。コンビニエンスストアの店長、スーパーバイザー、バイヤーとして22年間、メーカーのマーケッターとして7年間従事。現(株)やらまいかマーケティング代表。商品開発700品の経験を活かし、顧問、講演、バラエティから報道までのメディア出演と幅広く活動。フジテレビ「Live News a」のレギュラーコメンテーター。