沢口靖子や長澤まさみ、上白石萌歌らを輩出してきた「東宝シンデレラ」オーディションの第8回(2016年)でグランプリを獲得し、舞台や映画、ドラマなど活躍の幅を広げる福本莉子が、8月14日公開の映画「思い、思われ、ふり、ふられ」で主要キャラクター4人のうちの1人、市原由奈を演じている。「自分に自信がなく、恋に消極的な女の子」という設定だが、本人は大阪出身の至って朗らかな19歳。「演技の奥深さ、面白さがわかるようになってきた」と語る福本に、本作の見どころなどを聞いた。

「思い、思われ、ふり、ふられ」は、咲坂伊緒の同名漫画が原作。4人の高校生が織り成す青春物語で、同じ咲坂の「ストロボ・エッジ」「アオハライド」に続く“青春三部作”の最終章と位置づけられている。主要キャストは福本のほか、浜辺美波、北村匠海、赤楚衛二という顔ぶれ。監督は「ソラニン」(2010年)や「アオハライド」(14年)などを手掛けた青春映画の名手、三木孝浩が務めている。

■「同じ高校生の話とは思えない(笑)」

――作品の印象と演じた役柄について教えてください。

「私は女子校出身なので、同じ高校生の話とは思えない(笑)。当たり前ですけど、自分の高校時代とは全然違いますね」

「私が演じた由奈ちゃんは、俯きがちで内向的、そして人見知りな女の子。はたから見ると弱い女の子なんだけど、実は4人の中では誰よりも芯が強くて、まっすぐで、自分よりも相手のことを考えることができる子です」

「芯が強くて頑固なところは、自分と似ているかも。他の3人を動かす由奈ちゃんの“ピュアな強さ”みたいな部分は、大事に演じました」

■自然体でいられた現場

――三木監督はどんな人でしたか。

「監督は全身から優しいオーラがにじみ出ていて、役で悩んでいるとちゃんと話を聞いてくださるし、とてもやりやすかったです。現場もいい雰囲気で、自然体でいられたと思います」

――共演者の皆さんは。

「浜辺さんは同い年だけど事務所の先輩で、北村さんも少し年上、赤楚さんが一番お兄さんでした。でも撮影に入る前に『お互いに敬語はやめよう』ということにしたので、キャリアや年齢の違いはほとんど意識しませんでした」

「実は本番で4人が揃うシーンはそこまで多くなかったので、取材で集まるようになった最近の方がよく喋りますね。赤楚さん、最年長なのに一番いじられるんですよ(笑)。どこか抜けていて、いい意味で親しみやすい人。それが映画のキャラクターともリンクしていて、すごく素敵だなあと思います」

――告白するシーンは苦労したそうですね。

「難しかった!だって、由奈ちゃんは振られるとわかってて告白するんですよ」

「そもそも告白なんて、生きててそんなに何回もすることがない一大イベントじゃないですか。なのに由奈ちゃんは、成功しないことを知りながら理央くん(北村匠海)に思いを伝える。それがすごいと思うし、心情をどう表現するかで苦労しました。きっと映画を見る人の背中も押してくれるようなシーンになっていると思います」

■演技に“正解”はない

――これだけの大きい役を演じるのは、映画では初めてですね。

「正直、やっぱりまだ慣れません。でも映像を見て気づくことはたくさんありました。あ、自分はこういう顔をしていたのか、とか。もちろん撮影時はベストを尽くしているつもりなんですけど、あらためて映像を見ると、『もう少し上手くできたかな』と反省したり。演技に正解はないんだということを痛感します」

「『東宝シンデレラ』オーディションを受ける前は、本当にテレビが大好きで、毎日毎日ドラマを見ていました。まさか自分がやる側になるなんて…。しかも、いざ演じてみると、普通に喋ることすら難しいんですよ。ロボットになったような感覚で、最初は『ただただ台詞を言う』ところから始まって、少しずつ立つことを覚え、初歩的な動作を覚え…という感じ。普段無意識にやっていること、例えばこうやって『コップを持つ』という動きも、カメラの前でやろうとすると全然違うんです。ダメだなあと落ち込んだこともありますよ」

■初主演舞台「魔女の宅急便」で知った演技の楽しさ

「でも2018年に『魔女の宅急便』で初めて舞台に挑戦したとき、回数を重ねるうちに少しずつ気持ちに余裕が出てきて、公演ごとに演技を工夫したり、舞台ならではの生の掛け合いを楽しんだりもできるようになりました」

「とはいえ『魔女の宅急便』は初舞台、初主演、初ミュージカルでしたから、とにかく毎日必死でした。右も左もわからない状態だったので、本番の半年くらい前から大阪で発声や歌のお稽古を始めました。学校帰りに毎日レッスンです。人生であんなに頑張った時期はありません。あの仕事を経験したことが、大きな自信につながりました。舞台、またやりたいですね。私の原点だと思っています」

■女優にして現役大学生、コロナ禍の現状

――現在は大学生なんですよね。新型コロナウイルスの影響はいかがですか。

「この春から大学2年生です。コロナ禍で授業は全部オンラインになっています」

「仕事面では、地方公演を楽しみにしていた舞台が残念ながら中止になってしまいました。今は京都で時代劇の撮影をしています。フェイスガードを着けて、検温も徹底して。梅雨が明けてから、無茶苦茶暑いですね。炎天下、着物とカツラで演じるのは大変ですけど、頑張っています」

■「成長を見届けて」

――撮影は2019年の3月、4月だったので、公開まで1年以上空きました。

「ようやく、いよいよ、という感じです。ロケ地は神戸で、大阪出身の私にとってはオシャレでありつつ親しみのある街。今回は代表的な観光地ではなく、地元の人しか知らないようなところでたくさん撮っていますが、神戸の良さがすごく伝わってくる作品に仕上がっていると思います」

――では最後にあらためて。

「はい。キラキラした青春だけじゃなくて、将来に対する不安など、10代ならではの悩みを抱えながらも、恋を通して成長する物語。大きなスクリーンで、私たちの成長を見届けていただけたら嬉しいです」

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映画「思い、思われ、ふり、ふられ」は8月14日全国公開。

(まいどなニュース・黒川 裕生)