元フジテレビの笠井信輔アナウンサーが罹患した悪性リンパ腫。白血病と同じく血液のがんのひとつだが、70種類以上に細かく分類されているというこの病気、どんな病気なのか分からないという人は多いのではないでしょうか。「検査法」「治療法」「再発防止」について、先端医療研究センター研究室主宰の井上大地医師に聞いた。

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 血液内科外来では「私も悪性リンパ腫なのではないか?」というご相談を受けることが頻繁にあります。悪性リンパ腫に罹患される著名人も耳にしますが、一体どのような病気なのでしょうか?

 悪性リンパ腫は血液細胞に由来するがんの1つで、白血球の1種であるリンパ球ががん化した病気です。血液細胞は造血幹細胞から増殖しながらそれぞれの機能を持つ細胞に分化して作られますが、悪性リンパ腫はリンパ球まで分化した細胞に由来するがんであると言えます。

 成熟したリンパ球はリンパ節が主戦場のひとつですから、多くはリンパ節の腫れとして認識されます。患者さんからは「首や鼠径部のリンパ節が腫れているので心配だ」という声をよく聞きます。悪性リンパ腫では通常より硬めのしこりとして触れることができ、触って痛みを伴うことは稀です。

 腫瘍ではなく炎症により「腫れている」だけのケースでは、軟らかく可動性があり,押すと強い痛みを認めることが特徴です。体の奥のリンパ節が腫れていて症状に気づかないことや、発熱、寝汗、体重減少が目立つこともあります。正しく診断するためには、血液検査や画像検査、病理組織検査、染色体・遺伝子検査が必要であり、専門医による診察・評価が不可欠です。

 血液検査では可溶性インターロイキン 2 受容体とよばれるマーカーが著しく上昇している場合には悪性リンパ腫の可能性が高まりますが、初期の悪性リンパ腫をスクリーニングするには適していないので注意が必要です。

 リンパ球の中にもB、T、NKなど様々な細胞があり、さらにそれぞれのがん細胞の形態や性質、成熟段階によって悪性リンパ腫は70種類以上に細かく分類されています。

 大別すると、病気の発見者の名前にちなんで命名されたホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に分けられ、日本では非ホジキンリンパ腫が9割ほどを占めています。中でもB細胞から発生する「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」は月単位で病気が進行し、わが国の悪性リンパ腫の30%程度を占め最も多いとされています。

 同じカテゴリーに入れられるリンパ腫の中でも、病期(病気の進行度)、病変の大きさ、組織型によって、予後が変わってくるために治療の期間や組み合わせが変わってきます。分子標的薬と化学療法(抗がん剤)を繰り返し行う治療が原則であり、巨大な病変に対しては放射線照射を併用することもあります。画像上で病変が消失した状態を寛解と呼びます。寛解後、不幸にして再発した場合には、初回治療と異なる組み合わせの化学療法を行い、比較的若年で治療が奏功した場合には造血幹細胞移植を行うケースもあります。

 また、再発例や難治例ではCAR-T療法(キメラ抗体受容体T細胞療法)という新しい治療法が登場し注目されています。この治療法は、患者自身の血液からT細胞を採取し、B細胞リンパ腫などで発現するCD19というタンパク質を特異的に認識してがん細胞を攻撃するようにした遺伝子を導入して行う、遺伝子改変T細胞療法です。

 では初回治療で寛解に至った後、「治癒」と言えるまでにはどの程度の年月が必要なのでしょうか?一般的には再発の大半は2年以内であり、最初の2年は2-3ヶ月ごとに慎重にフォローし、その後は寛解から5年程度は半年から1年ごとのフォローが求められています。日常生活で再発を防止する方策についても、特別な予防法と呼べる食事療法や生活習慣は確かなものはありません。バランスのよい食事を摂り、健康的な運動を行いながら、毎日を楽しく過ごしていただきたいと思います。

◆井上 大地 血液内科医、医学博士。2005年京都大学卒、神戸市立中央市民病院、東京大学医科学研究所を経て2015年より米国NYのメモリアルスロンケタリング癌センターに勤務。2019年より神戸ポートアイランドの先端医療研究センターで研究室を主宰。阪急六甲の赤坂クリニックで血液内科診療を行っている。