コロナ禍でマスクの品薄が社会問題となった春先から一転、街中で不織布マスクの流通と値下げが進み、「マスクバブル崩壊」と称されるほどの飽和状態になっている。記者はマスク確保に苦戦した2―3月の日々を振り返った上で、容易に購入できるようになった4―5月の現場をリポートし、専門家にその理由を聞いた。

 今年の年明け早々、記者は都内のドラッグストア店頭で特売していた50枚入りの箱を398円(税別)で購入した。毎年、冬場はマスクを頻繁に使用するため、残り少なくなった2月半ばに新たに買おうとすると、既に品切れ状態。そこで通販サイトをのぞき、50枚入り1490円という商品の購入手続きをしたが、予定日を1週間過ぎても届かない。その間、別口で50枚990円という安価な商品を見つけ、ダメ元で申し込んだが、案の定、音沙汰がない。後日、いずれも同サイトから「(注文先は)出品者として機能しなくなっています」との通知があり、返金手続きをした。

 マスク難民となった4月上旬、商店街の週貸し店舗で中古DVDと共に売られていた10枚1000円(税別)のマスクを見つけて購入。コロナ禍の前に買ったマスクは1枚8円弱で、その13倍近くになるわけだが、砂漠で定価100円の水を1300円で買ってしまう感覚で、背に腹はかえられなかった。

 同下旬には飲食店店頭で弁当と共に50枚入りの箱が3500円(税込)で売られていた。半月で1枚70円と安くなったが、スルーした。4月初め、別サイトにて50枚3700円(送料別)で注文した品が予定日を1週間過ぎて前日に届いたからだ。サイトより店頭の方が安いが、それも結果論。届いたマスクは箱ではなくビニール袋に入った薄手のもので、生産者の表示や商品説明はなかった。

 5月8日、都内のコリアンタウン・新大久保の街を歩いた。JR新大久保駅を背に、休業中のパチンコ店の手前まで徒歩約2分、250歩ほどの通りの両側で、コスメショップを最多として、スーパー、飲食店、タピオカドリンク店まで計15店舗でマスクが販売されていた。他エリアでは3500―4000円弱の50枚入り箱が2500円前後。袋入りでは5枚299円から20枚1091円(いずれも税別)まであり、箱と同様に1枚50―60円が相場だ。記者は20枚入りを買ったが、現地に約1時間滞在する間、他に商品を買っている人を見かけなかった。大量に積まれた商品をチラ見して通り過ぎていく。

 その後、新宿駅方面に15分ほど歩いた靖国通りのドラッグストアにも7枚398円(税別)の袋が店頭にたくさんあった。こちらは数分の間に5人が1袋ずつ手にしてレジに持って行く姿を見た。他の店では「完売」の表示も。新宿だから…ではなく、ドラッグストアだから売れているのだろう。

 政府の布マスク配布によって需要減退を恐れた買い占め業者が在庫を放出したという「アベノマスク効果」を主張する声もネットに流れたが、実際にはほとんど届いていないのが現実。4月17日に東京23区を皮切りに配布されたはずの布マスクだが、5月10日時点で区内在住の記者の元には届いていない。

 マスクが手に入るようになった背景には、中国の輸出解禁がある。流通アナリストの渡辺広明氏は当サイトの取材に対して「世界のマスクの約半分を生産しているとされている中国では、コロナ禍で自国民にマスクが行き渡ることを優先し、3月いっぱいまでは輸出を規制。4月1日から輸出されました。コロナ前は日本への輸出が多かったため、3月の受注残りもあり、日本にマスクが入ってきました」と説明した。

 さらに、その多くがドラッグストア以外の業種で売られている理由も問うた。渡辺氏は「バブル価格での販売が批判される点、マスクの品質が担保できない点が理由です。中国では新規参入の業者が増え、品質が均一でなく不安がある。政府の『アベノマスク』ですら回収騒ぎが起きたように、マスクの品質管理は難しい。そうした製品をドラッグストアでは売りにくいため、行き場を失ったマスクが新大久保やアメ横に流れ、そこでもさばけない余剰マスクが他のエリアやネットでも売られるようになったのが現状です」と解説した。

 届かない布マスクより、確実に購入できる品質均一のマスクが求められている。

(まいどなニュース/デイリースポーツ・北村 泰介)