新型コロナウイルスの感染再拡大を受け、お盆の帰省も自粛する動きが広がっている。ただ、それでも、コロナ禍で半年以上、離れ離れのまま暮らす家族にせめて一目でも会いたい―と願う人や、どうしても帰らざるを得ない事情がある人も少なくない。そうした人たちが救いを求めているのが、民間診療所が行っている一般向けのPCR検査だ。

 一般向けのPCR検査は、保健所や指定医が行う行政検査と異なり、無症状や感染者との濃厚接触の疑いがない人でも受けられる。抗原検査よりも精度は高いが、保険適用ではないため1回2〜4万円程度の費用がかかる。

「どうしても会いたい」母の願い

 「母がどうしても帰って来てほしい、と。不安なら(PCR検査を)受けてみたら、と言うので来ました。費用も払ってくれると。そうじゃないと、とてもじゃないけど出せませんし、諦めていました」。12日の帰省予定を前に、神戸市中央区の神戸国際医療連携クリニック(KICC)で検査を受けた兵庫県内の女子大学生(21)は、そう話す。

 今は一人暮らしで、宮崎県内の実家には50代の両親と70〜80代の祖父母が暮らす。年末年始や長期休みには帰省し、近くに住む親せきとも会っていたが、今年はお正月以来、7カ月以上帰れていない。春には心配した母が来ようとしたが、感染拡大で断念したという。

 「大学はずっとオンライン授業です。感染が怖いので3月から飲食のバイトも行かず、友達にもほとんど会わず、食料品を少し買いに行く程度で全く家から出ない日も。心当たりもないし、多分大丈夫だとは思うんですが、やっぱり祖父母のことを考えると不安で…」

 KICCでは、鼻咽頭ぬぐい液を採取する方法より、痛みや飛沫が拡散することによる医師らのリスクが少ない「唾液検査」を採用。方法はとても簡単で、受付で熱を測り、問診票などで症状がないことを確認したら、指定のプラスチック容器に3ミリリットルほどの唾液を採取するだけ。後は医療機関側で、容器を粘着テープで密閉した後、保存袋に入れ、その日付の検体を入れた密閉袋に入れて検査機関に発送する。

 福島和人院長によると、感染再拡大で検査業務がひっ迫する恐れもあるが、通常は2〜3日で結果が判明するという。女子大生の結果は、「陰性」。実はこの前日に抗体検査(自費)も陰性だったが、「これで、安心して宮崎に帰れます」と、ほっとした表情を浮かべた。

陽性率は7.1%…不安を解消したくても費用が壁に

 KICCでは5月から過去の感染が分かる抗体検査を、6月中旬から唾液PCR検査を導入。PCR検査は今月7日までに、出張などの業務や、発熱後会社に復帰させる際の「陰性証明」など、会社の指示を受けた人ら42人が受検し、陽性は3人。いずれも既に発熱や体調不良などの症状があったが、医療機関では「扁桃腺炎」などと診断されていたという。一方、無症状で濃厚接触などの疑いがない人は全員陰性で、「症状があった人の中でも陽性は3分の1ぐらいという印象」(福島院長)という。

 帰省や旅行を前に、女子大学生のように検査を希望する人もいるが、やはりネックは高額な費用。KICCでは3万円(唾液PCR検査のみ、陰性証明書は別途)だが、大半を検査機関での費用が占めているという。

 「企業や飲食店でも『本当なら従業員に検査をさせたい』というところは多いのですが、30人スタッフが居れば検査費用は90万円になる。『ただでさえ、コロナ禍で業績が落ち込んでいるときに、とてもじゃないけれど無理…』と断念してしまう」と福島院長。

 「『もしかしたら?』と心配している人が増えているのは事実。本来は、帰省やGoToキャンペーンでも、事前にPCR検査を受け、安心して行く―というのが一番理想の形であり、無用な“差別”や自粛警察的な動きもなくせるはず」とし、「20〜30代の無症状の感染者が増える中、旅行代への補助も大切ですが、PCR検査への補助をもっと拡充し、陽性者を早期に見つけ出すことが、感染拡大防止にも、また経済を回すためにも、最も必要なのではないでしょうか」と指摘している。

(まいどなニュース・広畑 千春)