「鴨脚」…この名字、読めますか? 姓氏研究家・森岡浩が日本人の難読名字を紹介します。

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漢字本来の読み方からは全く想像できない、まるで判じ物のような名字。

しかし、明治時代に誰かが思い付きでつけたものではなく、代々京都の賀茂御祖神社(下鴨神社)の神官をつとめる家が名乗っていた由緒ある名字である。

上賀茂・下鴨両神社は古代豪族賀茂氏の氏神を祀るもので、京都三大祭の1つ葵祭が行われることで有名。ともに世界遺産にも登録されている。この両神社の神官は代々賀茂(鴨)氏の子孫がつとめており、「方丈記」の著者として知られる鴨長明も下鴨神社の禰宜をつとめた鴨長継の次男として生まれた。

やがて鴨氏の子孫はいくつかの家に分かれ、「梨木」「泉亭」などそれぞれ独自の名字を名乗った。そして、その中に「鴨脚」という名字を名乗る家があった。

ところで、鴨の脚を見たことがあるだろうか。通常は水面下にあるためなかなか見ることができないが、水鳥のため指と指の間に水かきがついており、広げた形がイチョウの葉に似ているといえる。

そこから、「鴨脚」と書いて「いちょう」と読む、超難読名字が生まれた。

◆森岡 浩 姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部卒。学生時代から独学で名字を研究、文献だけにとらわれず、地名学、民俗学などを幅広く取り入れながら、実証的な研究を続ける。NHK「日本人のおなまえっ!」にコメンテーターとして出演中。著書は「47都道府県名字百科」「全国名字大事典」「日本名門名家大事典」など多数。