「ウルトラマンが地球で戦えるのはなぜ3分間なんですか?」。そんな質問が当サイトに寄せられた。ウルトラマンといえば1966年7月〜67年4月にTBS系で毎週日曜夜7時から放送された、巨大変身ヒーローが登場する特撮ドラマの草分け的存在。クライマックスの戦闘シーンでは「3分間」という制限時間があり、リミットが近づくと胸のカラータイマーが点滅する…という設定は、リアルタイム世代でなくとも幅広く知られている。改めて検証した。

 まず、諸説を列挙してみよう。

(1)ボクシングの1ラウンドが3分だから。
(2)ラーメンにお湯を入れて待つ時間が3分だから(カップ麺のない時代なので、丼に袋麺と熱湯を入れて蓋)。
(3)巨人・長嶋茂雄選手の背番号が「3」だから。
(4)特撮コスト削減のため。

 製作した円谷プロダクションは当サイトの取材に対し、「ウルトラマンの活動時間の理由につきましては、諸説ございますので、弊社としての公式見解という形での明言はしていない状況です」と回答。そこで、専門家の解釈を聞いた。

 ウルトラマンの放送開始50周年となった2016年に「ウルトラマン トレジャーズ」という豪華な永久保存ブックが出版された。門外不出の制作資料、番組企画書、撮影時の台本、原画など貴重な「お宝」を復刻、収蔵した一冊だが、この書籍をプロデュースした娯楽映画研究家の佐藤利明さんに見解をうかがった。

 佐藤さんは「潤沢な予算で撮影していた前番組『ウルトラQ』に比べ、ウルトラマンはカラー番組ゆえに予算管理が徹底されました。そこで特撮シーンの分量(制作費用と制作期間)を抑えるために制限時間が設けられました。ウルトラマンの初期企画『レッドマン』で既に『地球上での活動に時間的制限があり、長時間レッドマンでいることは出来ない』と設定されています」と解説した。

 佐藤さんは「その制限時間をカラーテレビで効果的に見せるために、カラータイマーが設定されたのです。点滅するのはモノクロのテレビでも分かるようにという配慮からです。その枷(かせ)ができることで、ファイトシーンの緊張感も盛り上がる、というわけです」と指摘。さらに「当時のTBSの宣伝資料『ウルトラマンあらすじ集』には『最初は青色で三分間、途中黄色に変わったときが注意信号で、赤色になるとあと三十秒ですべての力を失う危険信号になっている』とありますから、最初は3分間以上に設定されていたようです」と付け加えた。

 では、3分間「以上」から、3分間「ジャスト」になった背景とは?

 佐藤さんは「コストのかかる特撮シーンを抑えつつ、視聴者が対決のダイナミズムを味わえる時間が『ボクシングの1ラウンド』と同じ長さの3分間となったのだと思います。ウルトラマンの地球上での活躍を制限時間3分とする設定も生み出されたのです。その結果、1ラウンドの長さで程よい『ピンチからのKO勝ち』のカタルシスと爽快さが生まれたのです。30分番組の1割という意味では結果的に黄金比率になったのではないでしょうか?」と分析した。

 ちなみに、当時は番組本編で活動時間が「3分」と明言されていなかった。佐藤さんは「放映直前から、TBSの広報資料や少年向けの雑誌『ぼくら』などでは『ウルトラマンが地上で動ける時間は3分間しかない』と書かれていたので、ブラウン管の前の子供たちは『3分』と認識していました。僕もその一人です」と明かし、「初めて『ウルトラマンのエネルギーは3分間しか続かない』と番組内で明言されたのは『帰ってきたウルトラマン』第1話『怪獣総進撃』」が最初でした」と指摘。それは71年4月2日の放送となる。

 佐藤さんは「ウルトラマンのデザイナー、成田亨さんは、後付けのカラータイマーをデザインに加えることに、かなり抵抗を示していました。マニアには周知のことです。そういうことを踏まえて、現在制作中の『シン・ウルトラマン』の発表されたヴィジュアルにはカラータイマーがありません」と補足した。

 以上の解説をまとめると、「ウルトラマンの活動時間が3分間」という設定の理由は上記の「(4)コスト」がベースにあり、「(1)ボクシング」が時間の長さを決める参考になったということになる。

 もちろん、円谷プロの公式見解がないことから、お墨付きのある100%の正解は「ない」わけだが、その上で、多様な分析を踏まえて想像を膨らませる楽しさがある。そして、答がないという「底なし沼」のような奥深さが、ビートルズ来日と同年の誕生から54年を経ても色あせないウルトラマンの魅力でもある。

(まいどなニュース/デイリースポーツ・北村 泰介)