ジャックラッセルテリアのスパーキーちゃんは昨年10月20日、14歳で虹の橋を渡りました。佐々木宏さん、久美子さん夫妻に見守られながら…。一緒に暮らしたのはわずか3年余り。でも、二人にとってはかけがえのない時間でした。

 もともとスパーキーちゃんを飼っていたのはポール・ブロックソンさんというアメリカ人男性でした。一人暮らしのため、出張の際などペットホテルに長期預けることも少なくなかったようですが、それでもきっちりしつけをし、大切に育てていたようです。ところが、2016年に母国に帰ることになり、日本で里親探しをすることに。当時のブロックソンさんの心情を、佐々木夫妻はこう推察します。

「スパーキーはもう11歳だったので、飛行機に長時間乗るのは負担だったと思います。それに、日本と同じように安心して預けられるところが見つかるかどうかも分かりませんし、住み慣れた日本で暮らした方がスパーキーにとってはいいと考えたのではないでしょうか」

 佐々木夫妻が引き取ると決まったとき、ブロックソンさんは自宅に招いて、スパーキーちゃんへの指示の出し方など丁寧に教えてくれたそうです。そして、アメリカに帰ってからも、宏さんがSNSに投稿した動画を見て、「指示が伝わっていないから、どうすればいいか分からなくて吠えていると思う。指示はもっとはっきり」とアドバイスしてくれるなど、スパーキーちゃんのことをずっと気に掛けていました。

 ブロックソンさんと暮らしていた2015年、スパーキーちゃんは重い子宮蓄膿症を患い、獣医師から安楽死を勧められたことがあります。ごはんが食べられず、体重は6.5キロから4.5キロに激減。手術はリスクが高く、このままでは苦しむだけという診断でした。

 でも、ブロックソンさんはその提案を断り、自宅に連れて帰ることを選択します。「家で看取りたい」と。痛み止めのモルヒネを打ち、一緒に帰宅したブロックソンさんとスパーキーちゃん。するとどうでしょう、徐々に回復の兆しが見え始めたではありませんか!少しずつごはんを食べられるようになり、奇跡的に一命を取り留めたのです。そんな経緯もあって、ブロックソンさんはスパーキーちゃんのことを気にしていたのかもしれません。

 ただ、事情はともかく、高齢になってから飼い主が変わるのは犬にとって負担のはず。でも、スパーキーちゃんは肝っ玉が据わっていました。「どうなるか心配したんですけど、うちに来た初日から一緒に布団で寝ていましたね(笑)」と宏さん。二人には子供がいないこともあって、我が子同然に愛情を注ぎました。「二人ともお酒が大好きで、よく飲みに行っていたんです。でも、スパーキーが来てから回数が減りましたし、行ったとしても早く帰るようになりました」(久美子さん)。酒席への誘いが減るようにという意図もあり、大阪の中心部から兵庫・西宮市に引っ越したほどです。

「私は朝晩のスパーキーの散歩を軸に、間で仕事をする感じになっていました。どうしても行けないときは、主人が早く帰って来てくれたり。“スパーキー・ファースト”の生活になっていましたね」(久美子さん)

 そんな生活に“異変”が起きたのは、昨年6月末のこと。久美子さんが仕事部屋から出てくると、いつもは起きてくるスパーキーちゃんの姿が見えません。イスの下で倒れていたのです。意識はあるけど足が立たない。慌てて病院へ駆け込むと、「ヒザの関節が外れたのかも。今は大丈夫だし、心臓も大丈夫」と言われました。そこで、フローリングの床にマットを敷くなど対策したのですが…。

 9月17日に呼吸困難に陥り、再び病院へ。「心臓が弱っている」と診断され、薬をもらいましたが1週間たっても治らないため、別の病院を受診すると、「悪性腫瘍がいろいろな場所に転移していて、肺には真っ白な影がある。余命は1年以内だろう」と告げられました。そして、3つ目の病院では「いま息をしているのもすごい」と…。

 呼吸が苦しそうなスパーキーちゃんのため、すぐに自宅に設置できるBOX型の酸素室をレンタル。久美子さんは仕事をセーブし、宏さんも残業を減らして早く帰るなど、できるだけスパーキーちゃんと一緒にいられるようにしました。もちろん、週末もどこへも行きません。

 それから約1か月後、スパーキーちゃんは旅立ったのですが、亡くなる少し前、ブロックソンさんから連絡があり、酸素室の中のスパーキーちゃんに声を掛けてくれました。もう起き上がることはできませんでしたが、スパーキーちゃんの耳には懐かしい声が届いていたはずです。

 密度の濃い3年間でした。昨年8月には初めて泊りがけの旅行をし、9月にはジャックラッセルのオフ会に参加して琵琶湖を泳いだスパーキーちゃん。それから2か月足らずでお別れが来るとは思いもよらず、それだけに、佐々木夫妻はいまだペットロスが続いているようですが、インタビューの最後にはこんな話を聞かせてくれました。

「いまはまだ無理ですが、いつか高齢のワンちゃんを迎えてお世話してあげるようなことができればと思っています」

 それはスパーキーちゃんから佐々木夫妻に託された、大切な使命かもしれません。

(まいどなニュース特約・岡部 充代)