「音揃」…この名字、読めますか? 姓氏研究家・森岡浩が日本人の難読名字を紹介します。

   ◇   ◇

大阪府南部にある名字で、一度読み方を聞いてしまえばとくに難読というわけではないが、初見でこの名字を正しく読むのは難しい。「音」は「おん」、「揃う」は「そろう」と読むことから、「音揃」と書いて「おんぞろ」と読む。

「音揃」という名字は由緒がはっきりしている。音揃家は清和源氏の出で、元は目賀氏を称して水軍を率いていたという。豊臣秀吉が朝鮮半島に出兵した文禄の役(1592年)の際、目賀氏が率いて出陣する船団の櫓の音が見事に揃ったことに感激した秀吉から、「音揃」という名字を賜ったと伝える。

大坂で秀吉から直接賜った名字を名乗るのは極めて名誉なことだったが、関ヶ原合戦後、豊臣家は徳川家に逆らった家となってしまった。そこで、音揃家の嫡流は秀吉に賜った名字である「音揃」を名乗ることを憚り、秀吉の家臣から家康の家臣に転じた片桐且元にちなんで、名字を「片桐」に改めている。

現在は、大阪府の中でも、堺市と岸和田市に集中している。

◆森岡 浩 姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部卒。学生時代から独学で名字を研究、文献だけにとらわれず、地名学、民俗学などを幅広く取り入れながら、実証的な研究を続ける。NHK「日本人のおなまえっ!」にコメンテーターとして出演中。著書は「47都道府県名字百科」「全国名字大事典」「日本名門名家大事典」など多数。