嵐山、渡月橋、鴨川、祇園…。京都の代名詞とも言えるこれらの地名は、東日本にもある。では、両地にはどんなつながりがあるのか。「京都じゃない方」を、京都市出身のライターである岡部敬史さん(47)が探訪してみると、「千年の都」との意外なつながりが見えてきた。それだけじゃない。幻の「京都タワー」も見つかったのだ。

 嵐山は埼玉県にあった。ただ読み方が違う。こちらは「あらしやま」ではなく「らんざん」。県北西部の「嵐山渓谷」で、岡部さんによると日本初の林学者、本多静六(1866〜1952年)がこの地の紅葉を見た際、「京都の嵐山に似ている」と言ったことが由来という。岡部さんはカメラマンの山出高士さん(49)と紅葉の時季に訪問。似ている風景を探し求めてたどり着いたのが写真の場所とのこと。「川の向こうに見える山並みが似ているような似てないような…」

 渡月橋は静岡県の伊豆修善寺にある。こちらも残念ながら「とげつきょう」ではなく「とげつばし」。山深い修善寺は鎌倉時代に源頼朝の弟範頼が幽閉された。都から流されてきた人が京都をしのび、この地の川を桂川と呼び、橋も名付けたという。「かなり見劣りする橋で、悲哀の歴史を思わずにはいられません」

 千葉県には鴨川市がある。市内を流れる川が京都の鴨川に似ていることが由来と地元の地誌にもあるという。その川の名は「加茂川」。岡部さんが地元の郷土資料館に問い合わせると、「具体的にどこからの眺めが似ているという話はありません」との返答。「ならば」と2人は流域を巡り、河口部の風景が一番似ているという結論に落ち着いた。「遠くに山々があり、橋がいくつかあると鴨川っぽい、かな」

 千葉県木更津市には祇園もあった。京都にはない祇園駅も。平安時代に祇園社(現・八坂神社)を勧請した祇園須賀神社が当地にできたことが由来という。「電車が止まる祇園は駅も素朴な見た目で、にぎやかな京都の祇園とはひと味違う魅力があった」

 京都人も知らない東日本の京都を探す旅は終わらない。ついに、知る人ぞ知る「京都タワー」を探し当てた。

 それは大学キャンパスにひっそりと立っていた。

 神奈川県にある東海大湘南キャンパス。その1号館の上に、京都タワーと同様に円形の台座を備えた赤い鉄塔があった。

 これは京都タワーを設計した建築家の山田守(1894〜1966年)が、京都タワーが完成した前年の63年に手掛けたという。

 それだけじゃない。幻の「京都タワー」もあった。

 現地にある3号館の設計模型には、屋上に京都タワーとうり二つのタワーがあった。「残念ながら3号館の完成前に山田が他界してしまい、タワーは作られなかった」らしい。京都タワーは当初「古都にそぐわない」と批判にさらされたが、岡部さんは「山田はタワーがよっぽど気に入っていたのでしょう」と話す。

 こうした比較を岡部さんは新著「くらべる京都」(東京書籍)で紹介している。「京都にまつわるさまざまな事柄を比べてみることで、新たな魅力に出合うことができた」

 同書は1430円。

(まいどなニュース/京都新聞・樺山 聡)