大阪市淀川区の河川敷を散歩していた犬が迷子になりました。4月14日深夜1時頃のことです。岡山・倉敷市保健所からやって来た元野犬のマフィンちゃんは、臆病で怖がり。その日は前方から来る自転車に怯え、首輪とハーネスが抜けてしまったのだと言います。恐らく、後ずさりして強く引っ張ったのでしょう。ハーネスは抜けないと思っている人も多いようですが、サイズが合っていなかったり、犬の動きによっては意外と簡単に外れてしまいます。

 里親さんは警察や保健所に届けたほか、SNSや迷子ペットの掲示板サイトで広く情報を求めましたが、最初の3日間は手掛かりすらありませんでした。4日目にようやく入った目撃情報も、発見にはつながらず。心が折れかけていたとき事態を動かしてくれたのが、『ドコノコ』という犬猫写真投稿アプリでした。

 このアプリには『迷子掲示板』という機能があり、「この子が迷子になっています!」と投稿すると、近くにいるユーザーにお知らせが届く仕組みになっています。ユーザーは皆、愛犬家や愛猫家なので我が事のように心配し、アドバイスや励ましの言葉を送ったり、付近を捜索したり、ダウンロードした迷子チラシを配布したり…一丸となって探すのです。その連帯感はものすごく、実際、筆者の家の近くでも、この迷子掲示板のおかげで発見された犬がいました。

 アプリの存在を知った里親さんが早速、登録すると、多くのコメントが寄せられ、一緒に探してくれる人も現れました。その中の一人が兵庫・神戸市に住む福原由美さんです。マフィンちゃんが迷子になった場所からはかなり離れているので、お知らせが届いたわけではありません。アプリ内でフォローしている別のユーザーがマフィンちゃんの迷子チラシを投稿したことで、福原さんの知るところとなったのです。

 4月20日、福原さんは愛犬の黒柴・みるちゃんを連れて捜索に出掛けました。約3時間歩き、すれ違う人ほぼ全員に声を掛けましたが、手掛かりなし。帰宅後は歩いた場所を手書きの地図にして里親さんに送り、これまでの目撃情報を時系列にまとめるなど協力を続けました。

 見ず知らずの人に、なぜそこまで? そう思う人もいるかもしれません。実は福原さんには、迷子になった愛犬を見つけてあげられなかった悲しい記憶があるのです。

「もう13年前になります。嫁いだとき、主人の家には17歳の柴犬がいました。モモは外飼いでしたが、18歳の冬に急に弱ってしまい、獣医さんのアドバイスで家の中で暮らし始めたんです。すると見る見る元気になって、『20歳まで余裕だね』と話していた矢先にいなくなってしまいました。もともと脱走癖があったので、首輪には名前と住所、電話番号を書いていましたし、もちろん警察や保健所にも届けました。絶対に見つかると思っていたのですが…」(福原さん)

 結局、モモちゃんとはそれが永遠の別れになってしまいました。飲食店経営で忙しく、思うように探しに行けなかったことも後悔につながっています。現在もお店は続けていますが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため営業自粛中。「今しかない!」と行動に移したわけです。

 捜索2日目となる21日は、ご主人も加わり2人と1匹で探しに行きました。そして、目撃情報のあった神社周辺を歩いていたときのこと。普通は人が立ち入らないような茂みにご主人と入ったみるちゃんが、急にリードを引っ張ったそうです。すると!隠れていたマフィンちゃんが飛び出してきました。思わず「マフィン!」と叫んだ福原さん。振り向いたマフィンちゃんと目が合ったときには震えたと言います。

 臆病なマフィンちゃんはまた逃げてしまいましたが、合流した里親さんと福原夫妻、さらに近くのマンション住民が懸命の捜索を続け、約1時間後に側溝の中に身を隠したマフィンちゃんを無事に保護することができました。里親さんが用意したシュークリームと、福原さんが持ってきたリードを使って。

 マフィンちゃんに目立った外傷はなく、血液検査の結果も異常なし。家に帰ってお風呂に入り、ごはんを食べるとすぐ眠りについたそうです。迷子になってから8日目。余程疲れていたのでしょう。

 発見の知らせはすぐに拡散され、たくさんの祝福コメントが寄せられました。そして、福原夫妻とみるちゃんにも感謝のメッセージが。「天国のモモちゃんがマフィンちゃんの居場所をみるちゃんに伝えてくれたんじゃないか」。そんなコメントも多数ありました。

「私もそんな気がしています。モモが助けてくれたんだと。でも、見つけられたのは多くの方の祈りが届いたからだと思います。地域の皆さんの協力がなければ捕まえられませんでした。マフィンちゃんはまだ2歳。これからもっともっと幸せになってほしいですね」(福原さん)

 天国のモモちゃんもきっと「よかったね」と言っているはずです。

(まいどなニュース特約・岡部 充代)