タピちゃんはペットショップで売れ残り、その後、繁殖用の猫としてブリーダーを転々とした。とうとう保健所に連れて行かれることになったが、そのことを知った猫カフェのオーナーが引き取り、里親を探した。

繁殖猫としてブリーダーをたらい回しにされる

子猫のタピちゃんはペットショップで販売されていたが、買い手がつかず、ブリーダーが繁殖用に買った。しかし、妊娠できず、別のブリーダーに売り渡され、いくつかのブリーダーをたらい回しにされたという。2019年6月中旬、保健所に連れて行かれるところだったが、愛知県で猫カフェを営む人がブリーダーからうわさを聞いて引き受けた。

猫カフェで里親を探すことになったタピちゃんだが、4年間ずっとケージの中にいて、外に出られるのは、繁殖のために交尾を強いられる時だけだった。そのため、猫とうまくコミュニケーションできなかった。人に愛されたこともないので、人間のことも信用していなかった。猫カフェのオーナーに甘えることはなかったが、毎日ごはんをもらっているうちに危害は加えられないと思ったようだった。

悲しい顔をした猫

愛知県に住む鵜飼さんは、7月10日、用事があって出かけたが、ことごとくキャンセルや延期になった。コンビニでコーヒーを買ってスマホを見ていたら、近くに猫カフェがあることが分かり、足を運んでみた。ずっと保護猫を飼っていたが、猫カフェには行ったことがなかったという。

「すごく人懐っこい猫もいっぱいいたのですが、タピは、廊下に1匹でポツンとたたずんでいました。いままでいろんな猫を飼ってきましたが、こんな悲しい表情の猫を見るのは初めてでした」

いろんな猫がタピちゃんに近寄ってきたが、タピちゃんは、そのたびにシャーっと怒っていた。

鵜飼さんは、タピちゃんのことが気になった。再び猫カフェを訪れた時には、タピちゃんを迎えようと思っていた。
「7月3日に前に飼っていた猫を亡くしたのですが、タピは生まれ変わりのようだと思っています。前の猫は穏やかな優しい子だったのですが、どこか似ているんです」

嫌な思い出を消すことはできないけど、幸せにはなれる

タピちゃんはとてもやせていて、体重は1.7キロしかなかった。猫カフェにいる猫は不妊手術をしていたが、小さすぎて手術ができなかったという。触ると背骨の形がはっきり分かった。4歳の成猫なのに子猫用の首輪が大き過ぎてガサガサで、毛づやも悪かった。
「生きていくために必要な最低限の量のフードしか食べさせてもらえなかったのでしょう」

鵜飼さんのところに来て、生まれて初めて猫じゃらしなどのおもちゃで遊び、部屋の中を自由に歩ける喜びを味わった。

獣医には、「ずっとケージの中で座って生活していたので、足腰に負担がかかっていたのだろう。普通に歩くのは難しいと思う」と言われた。鵜飼さんは、フローリングだと滑ってしまうタピちゃんのためにカーペットを敷き、できるだけたくさん歩けるようにした。いまでは走れるようになったが、階段の昇り降りは苦手だ。鵜飼さんは、それも個性だと思っている。

「嫌な思い出は消えないし、私も消すことはできません。でも、その上に楽しいことをどんどん積み重ねて行けば、その思い出は隅っこに行く、幸せになれるんじゃないかなと思うんです。これからは穏やかに過ごしてほしいと思っています」

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)