国民生活センターには、4月上旬で1万件を超える新型コロナウィルスに関する相談が寄せられています。だます側が便乗詐欺を行う場合、どの部分に力を入れて、知恵を働かせてくるのでしょうか。

 新型コロナに便乗したオレオレ詐欺の被害事例を見てみましょう。

 高齢男性のもとに息子をかたって、電話がありました。

 「借金ができたので、お金を貸してほしい」

 まさにコロナ不況の到来により、仕事を失い、お金に困る人も続出しており、さもありなんな状況につけいってきます。そして息子を装った男はこう続けます。

 「銀行でお金を下ろす時には『コロナの関係で資金が必要』と説明してほしい」

 息子からの電話だと信じ切っている高齢男性は、銀行の窓口でその通りの話をしてお金を引き出して、家にやってきた男に800万円を渡してしまいました。

 今、詐欺の対策として、銀行では高齢者が高額な出金する時に「詐欺ではないか」と疑い、お金の使い道を聞くことになっています。そこで詐欺師は知恵を回して「新型コロナ」と高齢男性に言わせることで、銀行の窓口の人をもだましていたのです。

 また60代女性のもとに、市役所の職員を名乗る人物が「保険料が戻ります」と電話をかけてきました。これは還付金の手続きをするといって、ATMで画面をタッチさせて金をだまし取る手口です。詐欺犯は女性に次のように話して、ATMに誘導します。

 「今、市役所はコロナで忙しいので、ATMでの手続きをします」

 結果、女性はお金を受け取るはずが、逆に100万円を相手に振り込んでしまいました。

 二つの事例を見てわかるのは、銀行の窓口やATMでお金を引き出す最終局面で「新型コロナ」というワードを使っています。つまり、詐欺の出口付近で、「新型コロナ」の言葉をまぶしてくるのです。

 しかし、全く逆のパターンもあります。

 息子に成りすました男が「おれだけど、親父、マスクある?在庫あるから、送ろうか?」「コロナ流行っているけど、大丈夫?」と言ってくるケースです。

 今、緊急事態宣言により、首都圏から実家に帰れない人が多いために、偽の息子は親の体調を心配する電話をかけます。心優しい高齢者ほど、思いやりのある言葉をかけられると、相手の声を疑わなくなりがちです。しかしその後に行われる「トラブルが発生してお金の必要になった」のパターンは、これまでのオレオレ詐欺と何ら変わりありません。

 70代女性は、新型コロナへの感染を心配する電話を、偽の息子から掛けられた後に「300万円の小切手をなくした。半分の150万円を貸してもらえないか」と言われて、150万円を渡してしまっています。

 このように、詐欺の入口で「新型コロナ」をまぶしてきて、だまそうとすることもあります。

 つまり、詐欺師はだましの話の入口と出口に「新型コロナ」の罠を仕掛けてくることが多いのです。ぜひとも、こうしただましの手の内を知り、「詐欺かもしれない」という気づきを少しでも早く持っていただければと思います。

 今、新型コロナの感染を防ぐために、「近距離での密な会話を避ける」ことがいわれています。詐欺においても、不審な相手との密な会話はなるべく短くして、避けてください。なぜなら、詐欺師と長く話をすればするほどに、こちらの情報を吸い取られて、だまされてしまうことになるからです。

 多くの人は怪しいと思ったら、真偽を確かめようとして、さらに話を聞いてしまいますが、実は「怪しい」と思ったら、すぐに電話を切るのが一番大切なのです。

◆多田 文明 詐欺・悪質商法ジャーナリスト。怪しいキャッチセールスに誘われたら「ついていく」という手法で潜入取材…だまされた体験の実況中継で話題を集める。ベストセラー『ついていったら、こうなった』は番組化されるなど、テレビ出演や講演、執筆などで幅広く活動中。あらゆる詐欺・悪質商法に精通し、日進月歩の「だましの手口」に引っかからない極意を発信している。