通学路や横断歩道の手前などの道路に白ペンキで描かれた足形マーク。子どもたちが不意に飛び出さないよう促すこの路面標識に魅せられた人が岡山市にいる。元雑誌編集者で岡山弁協会会長の青山融(とおる)さん(70)=同市中区。全国で探し続け、この30年間ほどで100種類を発見した。その“誰もが知らない世界”の魅力を聞いた。

 ―足形マークにはまったきっかけは?

 街を歩いていると毎日どこかで見かける図形で、日常風景に溶け込んでしまい、普段は意識にのぼることもないでしょう。そんな控えめな存在がなぜか気になって。どんな場所で見つけられるかといえば、近くに学校のある通学路で、狭い路地から車の走る道路へ出るあたりや、信号機のない横断歩道などです。靴跡の上でいったん立ち止まり、矢印のとおり左右をよく確認してから道路を横断しなさい―と注意を促す意図で描かれたものでしょう。立ち止まって左右をよく見よう、だから私は「トマレミーヨ」と命名しました。

 ―全国各地を探し続けているそうですが。

 これまで仕事(取材旅行)などで岡山県外に出かける時はついつい探してしまいました。すると全国各地にさまざまな「トマレミーヨ」が存在することに気づきました。これまでに見つけた約100種類の「トマレミーヨ」には、地方ごとに独特のパターンがあるらしいことも分かってきました。法律で定められた「道路標識」が全国共通の「標準語」だとするならば、PTAや交通安全母の会などの地元団体がそれぞれ勝手に描いた「トマレミーヨ」は、土地ごとに異なる「路上の方言」ということになるでしょうか。

 ―特に印象深いデザインは。

 岡山県内では「円の中に左右矢印と足跡」の組み合わせが基本パターンですが、中には「円・矢印・靴跡」のうちのどれかを欠くものや、3点セット以外の記号や文字を添加したものもあります。独特といえば、倉敷市真備町で発見した「トマレミーヨ」は、3つ並んだ小さな丸が珍しく、全国的に見ても類例がないでしょう。じっと眺めると「天才バカボンのパパ」の顔を連想してしまいました。香川県には讃岐独特の奇妙なマークがあります。丸や矢印の代わりに「ティラノサウルスの足跡」みたいな奇妙な図形が、右靴と左靴の間に橙色で描かれているのです。この奇妙な恐竜の足跡は「3本の指を伸ばした手首から先」を真上から見た形だそうで、道路を横断する前に、握りこぶしの指を1本ずつ伸ばしながら「私は・必ず・止まります」と唱えましょう…という意味なのだとか。

 ―地域文化が反映されている面もあるのでしょうか。

 色づかい、靴跡や足跡の形、横棒や矢印や「とまれ」の文字の有無など、全国各地で発見した「トマレミーヨ」の姿は、それにしても千差万別・百花繚乱だと思います。粗い手描きの稚拙なものから端正な仕上がりのものまで完成度もまちまちですが、交通安全を願って描いた人の優しい気持ちが伝わってきます。歩行者と自動車の交通量の多さ少なさ、信号機や横断歩道のありなしなどが「トマレミーヨ」の出現や消滅に影響を与えるでしょうし、最近では「とまれ」の文字の入った全国統一マークや、「左右きょろきょろパンダ」など全国共通デザインの「トマレミーヨ」も急激に増殖中です。方言が次第に失われてゆくのと同じく、「路上の方言」もやがては消えゆく運命なのかもしれません。

(まいどなニュース/山陽新聞)