山口県萩市にある臨済宗雲林寺(角田慈成住職)の山門前に、疫病退散のご利益があるとされるアマビエならぬ「猫ビエ」の木彫り像が設置され、猫好きの間で話題になっている。山口市のチェーンソー彫刻家・林隆雄さん(48)が制作し寄贈した。同寺は3月4日から拝観停止中だが、この猫ビエの写真画像をお守り代わりにする人もいるといい、コロナ禍で不安な人々を元気づけている。

 アマビエは江戸時代、肥後国(今の熊本県)の海中に現れた半人半魚の妖怪。疫病が流行すると予言し、「私の姿を描き写した絵を人々に見せよ」と告げて海中に消えたと伝えられている。疫病退散のご利益があるとされ、新型コロナウイルス感染拡大にともない、アマビエにまつわる絵や人形などの作品をつくる動きが全国で広がっている。

 林さんは昨年6月にカナダで開催されたチェーンソーアートの国際大会で優勝するなど、世界が認めるチェーンソーカーバー(彫刻家)。自宅では犬2匹、猫2匹を飼っている動物好きでもある。SNSで多くの人たちがアマビエの絵を描いているのを知り、「自分も何か役に立てれば」と、アマビエと猫を融合させた「猫ビエ」(高さ90センチ、幅50センチ、奥行き25センチ)を彫った。

 4月半ば、杉の丸太から彫り出し、2時間くらいで完成させたという。「仕事の合間に余った材料で彫ってみたんですよ。アマビエでありながら、耳や足を付け加えて、猫というのがわかるようバランスには特に気を配りました」といい、「コロナ禍で大変な中、これを見ていただいた方がちょっとでも心和んでくれたら」と話す。

 林さんは雲林寺の角田住職(50)と昔から懇意な間柄。これまでにも数多くの猫の木彫り像を寺に寄贈してきた。角田さんは、この斬新な猫ビエ像を見てびっくり。すぐに写真を撮って寺のフェイスブックで紹介したところ、「めっちゃご利益ありそう」、「コロナから人や猫を守ってください」などの声が寄せられ、600近い「いいね」がついた。その後、地元の新聞やテレビでも取り上げられ、反響を呼んだ。

 「『写真をパソコンの壁紙や携帯電話の待ち受け画面にしていいですか』、『プロフィール写真に使いたい』といった問い合わせが多かったですね。もちろんいいですよとお返事差し上げました。『写真をプリントして飾り、毎日お参りしています』、『闘病中の友人に写真を送りたい』という方もおられました」(角田さん)

 同寺は、毛利輝元の家臣の愛猫が主を追って命を絶った「萩の猫伝説」が残る天樹院(萩市)の末寺。境内や本堂内には猫の涅槃像や招き猫、オリジナルグッズなど、猫にまつわる様々なものが所狭しと並び、「猫寺」と呼ばれている。

 昨年はゴールデンウイークだけで1800人、年間では1万8600人の参拝客が訪れたという。猫好きの観光客をはじめ、「長年連れ添った愛猫が亡くなったので供養してほしい」という参拝者も少なくない。しかし、今年は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、3月4日から拝観を停止し、現在に至っている。

 「猫がご縁でたくさんの方々が訪れてくださり、亡くなった飼い猫の思い出話を聞かせていただいたときなどは、心の糧が増えるように感じてきました。いまは人と直接会えないからこそ、人との出会いや繋がりのありがたさを痛感する毎日です。コロナ禍が1日も早く終息し、今までどおり、またお参りに来ていただける日がくることを祈るばかりです」と角田住職。猫ビエがその願いを叶えてくれるのを待ちわびている。

(まいどなニュース特約・西松 宏)