おいしさは折り紙付きながら、ほぼ岡山県でしか食べられていない地魚「ヒラ」。名物・ばらずしの具材などとして県民に親しまれてきたが、小骨が多く調理に手間が掛かることから、近年は敬遠されがちだ。県内の水産関係者らは “岡山の味”を広めようと、魚へんに「岡山」と書いてヒラと読ませる創作文字を編み出すなど、あの手この手でPRしている。

 ヒラは春から初夏にかけて、産卵のため瀬戸内海に入ってくる。食文化に詳しい畦五月香川大教育学部教授によると、岡山市内の縄文貝塚で骨の出土例があるほか、江戸時代には後楽園の行事に合わせて食べられたとする岡山藩の記録も残る。食べるには面倒な「骨切り」が必要なため、せっかく捕れても捨てることが多い県外では、ヒラではなく「オカヤマ」と呼ぶこともあるという。

 岡山ならではの食文化に着目したのは、練り製品製造の長谷井商店(岡山市)。2018年に開発したヒラのさつま揚げは、土産物などとして大人気。直近では前年比3倍に売り上げを伸ばしており、さらなる新商品開発を狙う。魚へんに「岡山」の創作文字を作ったのも同社。のぼりやTシャツといった宣伝グッズにあしらい、注目を集めている。

 昨年5月には、同社や県水産研究所、県漁連などが「岡山水産物流通促進協議会」を設立。おいしい食べ方などをイラスト付きで紹介するリーフレットを配ったり、地元飲食店などにヒラ料理のメニュー化を呼び掛けたりと、官民連携で活動を広げている。同協議会長の森下倫年・元県漁連理事は「いっそうの認知度向上とブランディング(価値あるブランド構築)のため、あらゆる戦略を練っていく」と鼻息が荒い。

 同協議会は今後、岡山南高(岡山市)の商業クラブと連携し、新たなヒラ料理をつくり出すことにしている。県水産研究所の解析で、春は「こくがある」▽夏は「卵がおいしい」▽秋は「うまみが強い」▽冬は「脂が乗っている」−ことが実証されているヒラが、高校生のみずみずしい感性でどう調理されるのか、注目を集めそうだ。

(まいどなニュース/山陽新聞)