「『ぴえん超えてぱおん』って何でしょうか?」

 突然の質問。あなたなら何と答えますか?ーーとある高齢読者から神戸新聞社に電話で質問が寄せられました。朝刊テレビ欄に載っていた言葉の意味が分からないといいます。応対した隣席の記者は、昔の流行語「涙がちょちょぎれる」などを引き合いに、最近の若者言葉であることを説明。すんなり納得された様子でしたが、もし私だったら何と答えただろう。言葉の意味を調べていくと何と、“やさしさ”まで詰まっていることが判明しました。

人気お笑いコンビ「EXIT」も

 「ぴえん超えてぱおん」は今年6月、10代女子向け総合メディア「マイナビティーンズ」が発表した「2020年上半期ティーンが選ぶトレンドランキング」の「コトバ篇」6位にランクインした、若者を中心にLINEなどで使われる言葉です。

 同社の解説によると「意味は“ぴえん”と同じ、悲しい時やうれしい時など、感極まって泣いてしまいそうな時に使われている言葉。ぴえんよりもさらに感極まっている時に使用」だそう。

 使用例としては「〇〇ちゃんが私のコメントに返信してくれた。ぴえんこえてぱおん」。意味は「〇〇ちゃんがコメントに返信してくれたのがうれしすぎて泣いてしまう」なのだとか。

 ちなみに「ぴえん」は、同ランキング2019年・年間ランキングの言葉部門で堂々の1位に輝きました。「“ぴえん”という響きがかわいいという理由で多くのティーンだけでなく、ユーチューバーやインスタグラマーに使われています」(同社)。

 「ぴえん」「ぱおん」は、若者のカルチャーやアイテムにも旋風を巻き起こしています。人気お笑いコンビEXITは今年3月、初のCDシングル曲「ぴえんは似合わないぜ」を発売。ファッションでは、人気アパレルのTシャツに2つの言葉があしらわれたデザインが登場。言葉自体も進化し、「ぴえん超えてぱおん」の短縮形「ぴえぱお」まで現れました。

「辞書収録の有力候補」

 国語辞典編さん者でツイッターでも人気の日本語学者、飯間浩明さんに電話で話を聞くと、「2020年を彩る言葉の一つと言えます」。

 自然発生的に生まれた「ぴえん」が特に広まったのは2019年から。飯間さんも携わる三省堂「今年の新語2019」の公募にも、昨年秋の時点で複数の応募があったそうです。

 飯間さんによると、「ぴえん」は小さく声を出してちょっと泣く様子。一方、「ぱおん」は大声を出して泣く様子。ゾウのごとく泣く様を、ユーモラスに表現しています。

 「これまでちょっとだけ声を出して泣く擬音はありませんでした。しくしくだと声帯が震えていないので、ほとんど声は出ていませんね。『ぴえんと泣いた』というと、すごく泣いているわけではない、軽い表現として使えます。表現の空白地帯に、使い勝手がいい言葉が誕生したなあ」と言葉のプロも感心します。

 さらに、ぴえんとぱおんには共通する「かわいさ」があることも教えてくれました。

 「(ぴえんーが使われる)LINEは、顔が見えないコミュニケーション。大したことないよという、相手への気遣いも込めて、深刻に表現しない『ぴえん』や『ぱおん』が生まれたのではないでしょうか」(飯間さん)

 流行り言葉の背景には、現代の若者たちの相手への思いやりも込められていたとは驚きです。

 「ぴえん」がこのまま消えることなく、世代を超え使われると、将来的に辞書に登録されるような日もくるのでしょうか。飯間さんに尋ねると「そんなに簡単に消えないだろうと思っています。辞書収録の有力候補だと思います」。

(まいどなニュース・金井 かおる)