これから本格的な台風シーズンがやってきます。大事な“家族”の猫ちゃんと一緒に避難する準備はできていますか? 環境省はガイドラインなどで、飼い主に対して災害時に自宅などから避難する場合は、ペットと同行避難するよう呼び掛けています。でも、どんな準備をすればいいのか分からないという方も多いはず。そこで今回は、「nekozuki(ねこずき)」ブランド名で猫用品を展開している「クロス・クローバー・ジャパン」(岩手県盛岡市)が東日本大震災をきっかけに手掛けたという猫専用防災グッズについて、開発エピソードとともにご紹介します。

社長の太野由佳子さんは、猫好きが高じて自分で「猫グッズを販売してみたい」と思い立ち、勤めていた会社を辞めて2005年に起業。さらに“猫目線”のものづくりにこだわろうと、猫ちゃんのさまざまな困り事をお客さんから吸い上げながら太野さん自らが商品開発に取り組み、2010年10月には「nekozuki」を立ち上げました。

しかし、ブランドを立ち上げてから半年ほど経ったばかりの2011年3月、東日本大震災に遭ったのです。「仕事中でした。かなり揺れたことを今でもよく覚えています。当初は何が起きたのか全く分かりませんでした」と太田さん。実際、震度6弱の揺れだったそうです。幸いにして事務所兼の自宅も飼い猫も無事だったといいますが、「被災した人の中には、自分の命は救われたものの、家族のようにかわいがっていたペットがいなくなってしまった方もいらっしゃいました」と振り返ります。

震災を経験して「もう二度と大事な“家族”との悲しい別れに遭ってほしくないし、自分自身も遭いたくない。突然の災害に遭遇したとき、猫のために何か準備をしておけば後悔しないかも」…そんな思いを抱いたとのこと。そして震災の翌年、東北エリアを中心とした愛猫家の方々から「猫のための防災グッズを作ってほしい」という要望の声をたくさんもらうようになったといいます。そこで、太野さんは猫専用の防災グッズの開発に乗り出したのです。

■5日分の避難用品が入った猫専用防災リュック

考案したのは、猫ちゃんと一緒に避難する際にサッと持ち出せる「nekozuki 防災セット」。猫砂(1L)やシリコン食器 2個、折りたたみネコトイレなど10点が入っている防災リュックです。環境省のガイドラインなどに基づいて、避難所等にペット用の救援物資が届くまでの最低限必要な5日分避難用品を準備したといいます。

防災セットは2019年9月に発売を始めてから今年9月でちょうど1年経つそうで、これまでの販売個数は60点ほど。まだ幸い避難して使用したという声が届いていないとのことですが、「今年前半は全国的に長い梅雨が続いて各地で大雨などの被害が相次ぎましたが、これから台風のシーズンになります。何もないことが一番ではありますが、いざというときのために猫ちゃんと一緒に避難する準備をしておくことをおすすめします」と太田さん。

■防災カードや迷子猫探しチラシ、緊急時救助ステッカーなども用意

防災セットについて「事前に記載してほしいのが、リュックの中に入っている『防災カード』です。ペットの基本情報カードと飼い主の基本情報カードの2枚に分れています。ペットのカードには名前や生年月日のほか、マイクロチップの有無やワクチン接種歴、食べるフードの種類、性格などを記載。裏面は写真を貼るようになっています。また、飼い主のカードには名前や住所をはじめ、かかりつけの動物病院に関する情報を記入する欄があり、裏面は防災チェックリストとなっていて。ペットのために持ち出すものリストなども書いてあります。このような情報カードを持っていると、救助や物資の提供などを受ける際に一目瞭然で相手に伝わりやすいです」と話します。

さらに、防災セットの中には、防災猫ちゃんが迷子になったときのための「迷子猫探しチラシ」や自宅に残されたネコを知らせるために玄関ドアなどに貼れる「緊急時救助ステッカー」なども入っており、太田さんは「いざチラシなど自分で作るとなると手間が掛かります。これも事前に写真を貼った上でコピーをしておくと飼い猫がいなくなってしまったときにすぐに使用できます。ステッカーは猫との同行避難が難しいとき、自宅に猫がいることを救助隊やボランティアの方々に知らせる手段として有効です」と説明してくれました。

■連絡先入りの首輪をしていれば、迷子になっても大丈夫!

このほか、防災グッズとして用意しているのは、名前や電話番号を刺繍した「連絡先入りの首輪」や避難する際の軽量キャリーバッグ「ねこずきなトート」、避難生活のストレス解消に丈夫なけりぐるみのおもちゃ「ねこずきけりけり」など。いずれも天然素材であったり、接着剤を使っていなかったりと猫の身体に負担にならないようなものを選んで作られたグッズだそうです。

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これまでさまざまな猫専用防災グッズの開発に取り組んできた太田さんは「当社の猫専用防災グッズを多くの方の目に触れていただくことで防災について考えるきっかけを作ってもらいたいと思っています。例えば、避難する際に誰が猫を連れて行くのか、避難用のペットフードは賞味期限を定期的に確認しておこうとか。ぜひ、猫だけではなくペットを飼っているご家庭で災害に備えた準備や対策などを話し合う時間を作っていただきたいです」と訴えています。

また、環境省はペットと一緒に避難する「同行避難」を原則としていますが、各自治体によって同行避難のルールが異なる場合があるので事前に自分のエリアについて確認しておくといいそうです。

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)