「雲英」…この名字、読めますか? 姓氏研究家・森岡浩氏が日本人の難読名字を紹介します。

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雲母(うんも)という鉱物がある。アルミニウム、カリウム、ナトリウムなどを含むケイ酸塩鉱物で、平行に薄くはがれやすく、電気絶縁や耐熱材料として用いられている。古くは漢方薬にも使われたようで、比較的なじみのある鉱物だ。この雲母のことを古くは「きらら」や「きら」といった。キラキラと輝くことが語源だろう。

愛知県西尾市の八ツ面山は雲母の生産地として知られていた。そこから、この付近は「きら」と呼ばれるようになり、やがていい意味の漢字をあてて「吉良」という地名となった。ここを本拠としたのが清和源氏で足利将軍家の一族である吉良氏で、その末裔からは江戸時代に「忠臣蔵」の吉良上野介が出ている。

「雲英」という名字は、この吉良氏の一族が建立したお寺の僧侶が、明治になって戸籍に登録する際に、名字を「きら」とし、それに「雲英」という漢字をあてたものである。現在では西尾市一色町にある他、幕末から明治にかけての仏教学者・雲英晃耀や、近世文学の雲英末雄早稲田大学教授など、学者を輩出している。

◆森岡 浩 姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部卒。学生時代から独学で名字を研究、文献だけにとらわれず、地名学、民俗学などを幅広く取り入れながら、実証的な研究を続ける。NHK「日本人のおなまえっ!」にコメンテーターとして出演中。著書は「47都道府県名字百科」「全国名字大事典」「日本名門名家大事典」など多数。