鍼灸マッサージ治療院「やすらぎ治療室」(千葉県市川市)の看板猫・ミケちゃん。ひまわりのような笑顔がトレードマークです。そんなミケちゃんは8歳ほどの女の子、右足のない3本足の猫ちゃん。外猫時代から懸命に生きるミケちゃんの姿を見守ってきた治療院の院長・冨森猛さんが、ツイッターでミケちゃんの様子を毎日発信し続けてきました。

■ミケちゃん「甲状腺機能亢進症」で闘病中、全国のフォロワーさんたちから励ましの“声”

今では、冨森さんご夫婦の家族となり、治療院に訪れるお客さんやツイッターのフォロワーさんたちの心を“マッサージ”してくれる存在として愛されています。しかし、ミケちゃんは今年夏、甲状腺ホルモンが出過ぎて働きが強く出てしまうという「甲状腺機能亢進症」(こうじょうせんきのうこうしんしょう)を発症。完治の難しい病気で今は甲状腺ホルモンの分泌を抑える薬を飲みながら、病と闘っています。そんなけなげに生きるミケちゃんや、看病をする冨森さんご家族を励ますため、全国のフォロワーさんたちから手紙やお守りなどが治療院にたくさん届きました。

■外猫時代から人懐っこく、他の猫のためにご飯を残す優しい子だった

冨森さんご夫婦とミケちゃんとの出会いは7年ほど前。ミケちゃんは、もともと治療院のお隣にある美容室の女性からご飯をもらっていた外猫ちゃんたちの中の1匹でした。冨森さんによると、警戒心のある他の外猫ちゃんたちとは違って人懐っこく、もらったご飯をいつも残して他の猫ちゃんにあげる優しい猫ちゃんだったそうです。そのうち治療院の中を外からのぞいたり、冨森さんにもご飯をねだったりするようになったといいます。

■日中は治療院で過ごすようになったミケちゃん

猫好きの冨森さんご夫婦も懐いてくれるミケちゃんを可愛がり、いつのまにか日中のお客さんのいない時間帯だけ治療院の中で過ごさせてあげるように。とはいえ、閉店後は1匹にするわけにもいかずと、ミケちゃんを外に出して自宅に帰っていました。

冨森さんは「実は、自宅には先住猫ちゃんがいまして。先住猫ちゃんがおっとりとした性格で、食べるのもゆっくりなんです。かたやミケちゃんは外猫ちゃんでしたから食べるのも速く、ペースの違う猫ちゃん同士を一緒に住まわせるのは心配で、先住猫ちゃんに遠慮がありました。ただ、外に出した後はどうしているのか、帰宅後は気が気ではありませんでした。朝の10時から開店するのですが、私の出勤時間もどんどん早くなって。朝5時までには出勤するようになりました」と当時を振り返ります。

■4年半ほど前の4月1日の夜、初めて治療院にお泊まり

日中だけ治療院で過ごしていたミケちゃんでしたが、とあることがきっかけに冨森さんご夫婦の家族となりました。それは4年半ほど前の4月1日の夜のこと。その日はまだ冷え込んでいたといいます。いつものように閉店後、外に出そうとしても出たがらなかったミケちゃん。冨森さんは「かわいそうだから泊めてあげようかな」と思い、初めて治療院内で一晩過ごさせたといいます。翌朝出勤したところ、ミケちゃんはとてもおとなしくしていたとのこと。以来、治療院に住むようになったそうです。

「4月1日は世間ではエイプリルフールですが、我が家にとってはミケちゃんの『お泊まり記念日』なんです。ミケちゃんは、今も治療院で本当にお利口さんにしています。例えば、うんちの臭いを消すためなのか、うんちをしたら自分でバスタオルを持ってきてトイレの上に被せたり。初めてご来院されたお客さまが施術中の際はミケちゃん専用のベッドでおとなしくしていたり。もちろん院内を荒らしたり、壁や柱などに爪を立てることも全くありません」と冨森さん。「一度は避妊手術をした後、里親を募集したこともあったのですが・・・、私たちがミケちゃんと離れるのがさみしくて手放すことができませんでした」と話します。

■今年7月末、ベッドでぐったりするミケちゃんを発見 動物病院へ

そんな穏やかな日々が一変したのは今年の暑い夏。ミケちゃんの身体に異変が起きたのです。7月末の朝、いつものように出勤した冨森さん。ミケちゃんが専用のベッドから降りてこなかったので、慌ててベッドを見たところ、ぐったりしているミケちゃんを発見したといいます。下痢や嘔吐などもしていたようで、すぐに動物病院へ連れて行きました。そこで、診断された病名が「甲状腺機能亢進症」でした。

甲状腺機能亢進症はバセドウ病とも呼ばれ、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで全身の新陳代謝が早くなる病気。人間の女性に多い病気でもあり、動悸や震えをはじめ、体重が減るなどといったさまざまな症状が現れるといいます。

猫の場合、7歳以上のシニア猫ちゃんが発症しやすく、10匹に1匹の割合でかかるという比較的多くの猫がなる病気だそうです。

■7歳以上のシニア猫ちゃんが発症しやすいバセドウ病・・・気付きにくい病気

「バセドウ病というのは、人間でもものすごく重く症状が出る方はもちろん病院に行ったりするんですが。軽い症状の方は気付かないで一生を終える方もいるようです。代謝が活発になる病気なので、元気なのにどうも疲れやすい。そんな方は要注意です。人間の場合は汗をかきますが、猫は汗をかかないので、熱が体にたまって身体が熱くなってしまいます。人と猫の症状で共通しているのが、脈拍・心拍数が速くなる点です。治療院にも疲れたからとマッサージを受けにいらっしゃるお客さまの中で、触ってみると体が熱かったり、脈が速かったりして。『病院で診てもらってください』というと、バセドウ病だったということも結構ありました。まさか猫でもバセドウ病になるとは思ってもいなくて」と冨森さん。

「ミケちゃんの場合も『少し痩せたかな』『身体が少し熱いかな』と思ってはいたものの・・・食欲もあって元気だったので気付きませんでした。後で考えてみると、代謝が激しくて消耗するから食欲があったのだなと。本当に気付きにくい病気のようで、早く気付いてあげられなかったことに胸が痛みます」。

ミケちゃんは、一時何も食べられなくなって点滴を打つ毎日を送ったといいます。冨森さんご夫婦も必死で看病したそうです。

■医療費の寄付募る、全国各地からたくさんの手紙やお守りが届く

8月初旬には、冨森さんはフォロワーさんたちにツイッターでミケちゃんの病気を報告。最善の治療を尽くすためにと、医療費の寄付を募りました。

ミケちゃんや闘病を支える冨森さんご夫婦を励まそうと、全国各地のフォロワーさんからは寄付とともに、たくさんの手紙やお守りなどが治療院に届いているといいます。何度も手紙を読んで泣いたという冨森さん。「今までミケちゃんに励まされてきたので、今度は私たちが励ましたい」・・・そんなフォロワーさんたちの気持ちが伝わってきたそうです。また、ミケちゃんと同じ病気の女性の方や猫ちゃんを飼っている方からアドバイスをもらうこともあるとか。

もちろんミケちゃんを応援しているのは、フォロワーさんたちだけではありません。治療院の常連客の方々からもたくさんの励ましをもらっているとのこと。8月に長崎に転居した元常連客の方からは、地元長崎の尻曲がり猫神社で購入した健康長寿のお守りをいただいたり。近所のカフェの店主さんからは貯金箱をレジのところに置いてもらって、闘病中のミケちゃんへの寄付を募っていただいたり・・・。

今回の病気をきっかけに、ミケちゃんのことを思う方がたくさんいたことやこんなに愛されていたことを、冨森さんはあらためて感じたといいます。

■ミケちゃんはかけがえのない家族、1日でも長く生きてほしい・・・

発病してから2カ月半過ぎた今は、甲状腺ホルモンの数値も下がり、食欲もあって一時は2.2キロまで減った体重も3.2キロと戻りつつあるとのこと。ただ、薬の副作用なのか・・・ミケちゃんはかゆみが出たり、少し身体が熱くなってだるさが出たりしているそうで、減薬をしながら様子を見ているといいます。

最近、ミケちゃんグッズを作っているフォロワーさんからミケちゃんのひまわりのような笑顔が大きく描かれた「ブランケット」が届いて、ミケちゃんも「元気が出たみたい」と冨森さん。「ミケちゃんは、外猫時代からエネルギッシュで元気いっぱいの猫ちゃんでした。人間と同じで、だんだん年を取ればどんなに健康だったとしても病気になることもあるかと思います。でも・・・私たちにとってミケちゃんはかけがえのない家族。1日でも長く生きてほしいです」。

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)