「醸し人九平次」といえば、国内に多くのファンを持つ萬乗醸造(名古屋市)が醸す日本酒だ。手づくりにこだわる少量生産の日本酒はフランスのシェフらにも認められ、多くのフランス料理レストランで採用されている。同じ醸造酒であるワインの目線で日本酒の見えていない部分を見つめていこうという考えから、聖地ブルゴーニュでのワイン醸造や、南仏カマルグでの米の栽培など新たな挑戦を重ねてきた。

 その九平次の蔵元が今年2月、兵庫・黒田庄に新しい蔵を建て、日本酒業界関係者を驚かせた。 

 実は、萬乗醸造は10年前から、黒田庄で酒米山田錦を栽培している。黒田庄は山田錦の原産地である北播磨の北部にある。酒米の最高峰である兵庫県産山田錦は全国の500以上の蔵元がこだわりの酒づくりの原料に使用しているが、萬乗醸造はいち早く、原産地での栽培を始めていた。

 農業法人を立ち上げるなど黒田庄での山田錦生産を拡大する中で、次に選んだのが栽培から醸造までを一体化する新蔵の建設だった。

 畑とブドウ、ワインを一体的に見るシェフやソムリエのワイン目線を感じる中で、北播磨産山田錦のクオリティーとテロワールをしっかり世界に示したいという思いから踏み出した選択だった。日本の水田と米、酒づくりを直接つなぐ新しい日本酒の物語がいよいよこの冬から始まる。

 黒田庄の地で萬乗醸造が拓く新しい日本酒づくりの世界に迫るオンラインセミナー「山田錦の未来を支えるウェビナー」が11月11日19時から催される。新型コロナ危機で大幅減産に追い込まれている山田錦を、日本酒を購入して応援するクラウドファンディング「エールファンド」を活用した取り組みで、今回で4回目となる。

(まいどなニュース/神戸新聞・辻本 一好)