静岡県在住のみきこさん親子は2020年6月、食事をするために訪れた店の駐車場で、瀕死の状態ながら近づいてくる子猫の姿を見て驚いた。ガリガリにやせ細り、その体は傷だらけ。背中には赤い肉まで見えていた。鼻も詰まっていた。そんな猫が親子の前まで来ると、バタッと倒れこんだ。小学生姉妹(小5と小2)にとってはあまりにもショッキングな光景だった。7歳の次女は泣きじゃくりながら、母親に向かってこう叫んだ。「死んじゃうよ、助けてあげないと」―。

みきこさんは家で、サビ猫のココアちゃん(メス、3歳半)を飼っているが、倒れた子猫も偶然、サビ猫だった。「とにかく見て見ぬふりはできませんでした」とすぐに動物病院へ向かった。しばらく入院が必要という獣医師の指示のもと、子猫を入院させた。

入院は10月に退院するまで4カ月間という長期に及んだ。獣医師から「野良猫だから実費で構わない」と言われていたが、それでも長期入院になったため、高額な治療費がかかることを覚悟していた。子猫を迎えに行くと、獣医師は「あなたもウチもお互いボランティア」と言い、本来60万円の費用を3万円にしてくれたという。

自宅に子猫を連れて帰ったが、退院してもぐったりとした様子だった。皮膚病は入院時よりかなり改善していたが、長期のエリザベスカラー着用のせいで毛づくろいの習慣がなく、毛並みが悪く、鼻水と呼吸もつらい状況のままだった。傷口からは死んだ魚のような悪臭がした。

「どこまで健康になるのか、お世話がきちんとできるのか勇気がいりました」(みきこさん)と不安だったが「拾った責任があるので腹をくくった」と面倒をみることを決意した。治してあげたい一心で、別の動物病院で免疫を高める注射を打ってもらったり、少し高い餌を与えたりで、出費もかさんだ。

自宅では先住猫のココアちゃんと隔離、その間に先住猫にワクチンを打った。入院中、病院ではトイレがしつけられていなかったことと、風邪をひいていて匂いがよくわからないようで、トイレがなかなか覚えられなかった。自分の好きなところに排泄しまう。みきこさんは出勤前と帰宅後、排泄物の掃除、くしゃみであちこちに飛ばした鼻水の始末、そして点鼻薬と餌への投薬を2カ月続けた。

そんな献身的なお世話への感謝なのか、子猫は抱っこをすると嬉しいようで、呼吸が苦しいにもかかわらず、みきこさんを一生懸命舐めた。「拾った時点でひどい容姿でしたが、今ではぬいぐるみのようです。自宅に帰ってからが大変でしたが、サビ猫でしっぽの短い容姿がそっくりな先住猫と今では親子のように仲良くしています」。子猫を「ごま」と名付けた。救助から7カ月が経過、保護当時は推定2カ月だったが、生後9カ月へと成長した。

隔離を解除した当初は神経質のココアちゃんが逃げ回り、「う〜」と遠くから威嚇していたが、おっとりした性格のごまちゃんに安心したのか、今ではいい関係を築いている。

「ものすごくあまえんぼでおとなしく穏やかでまるでぬいぐるみみたいです。はっきりとはわかりませんが手足の動きも猫らしいしなやかさがなく、ジャンプも下手で、よちよちしてぎこちないので脚に障害があるのかもしれません。が、癒やしの塊で、抱っこしたらうるうる見つめて目を細めてきて、ただただ癒やしてくれます」(みきこさん)。

次女の一言が、ごまちゃんを救助するきっかけとなったが、姉妹が入浴中などは、ドアの前で「キューン」と鳴いている。「ほんとは猫じゃなくて子犬とたぬきを混ぜた生き物じゃないか」と疑っているとか。駐車場でショッキングな光景を目にした姉妹だが、「将来はいろんな猫を保護したい」と保護活動に興味を示しているという。

(まいどなニュース・佐藤 利幸)